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小笠地区の県立高再編 計画見直し不可避 地域の将来描く議論を【解説・主張しずおか】

 横須賀高(掛川市)と池新田高(御前崎市)を統合する小笠地区の再編計画が岐路に立っている。掛川市では官民を挙げた反対意見が強く、県教委は地元同意なしに候補地選定を進めない考えを示した。見直しは不可避の情勢で、8月以降に設置される地域協議会が新たな枠組みづくりの鍵を握る。課題の洗い出しに終始せず、高校の特色や役割を整理した上でどのような将来像を導けるか、建設的な議論が必要だ。

再編対象校になっている横須賀高。生徒が地区の伝統文化を支えている=7月上旬、掛川市横須賀
再編対象校になっている横須賀高。生徒が地区の伝統文化を支えている=7月上旬、掛川市横須賀

 県立高の再編案を盛り込んだ第3次長期計画案は、県教委が2017年11月に公表した。横須賀、池新田を含む県立高7校を「新構想校」として3校に統合する内容。掛川市では強い反発があり、地域住民が「横須賀高校を守る会」を設立した。同会は「南遠地域教育環境整備推進協議会」と名称を変え、会員は当初の33人から173人に拡大している。
 計画が地元への相談なしに決まったことが県教委への不信感に輪を掛けた。掛川市の久保田崇市長は「内容的に無理があり、地域に提示するプロセスも不適切」と断じた上で、白紙撤回を「当面のゴール」と位置付ける。
 地区内での横須賀高の役割は大きい。祭礼や防災訓練への参画、地元企業への人材輩出などで貢献度が高く、存廃は地域活力に直結する。一方で、少子化の進行は避けられず施設の老朽化も進む。現状の運営を維持するだけでは立ち行かなくなる時が来るだろう。
 生徒を確保して校舎を残すためには、地域ぐるみの改革が不可欠だ。掛川市は中学校区を一つの学園と見立てて小中一貫教育を推進する学園化構想を掲げている。こども園と小中学校が近接する横須賀高の立地を生かして構想に組み込み、文教エリアを形成する展望は検討の価値がある。
 通学者へのサポートも重要な観点だ。横須賀高には、袋井市から片道5キロ以上を自転車や保護者の送迎で通学している生徒が多い。交通弱者支援を主眼に掛川市が策定中の地域公共交通計画では、通院が難しい高齢者らと同様に、生徒の視点も大切にしたい。
 地元企業と連携して技能検定や国家資格の取得を推奨し、実学を強化することでさらに存在感を高めようとする検討は既に始まっている。再編計画公表から4年8カ月、地区住民は強い危機感を抱きながら横須賀高の強みと弱みを見つめ直してきた。地域協議会は、校舎が残った場合に地域がどのように関わり、高校の魅力を高めていけるかを議論する場になることを望む。

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