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テーマ : 静岡市

時論(3月24日)後継ゾウ問題は皆で考えたい

 江戸中期の享保14(1729)年、8代将軍徳川吉宗に献上されるオスのゾウが長崎から江戸まで歩いた。梅雨時で大井川は増水し、大勢の川越え人足が上流で肩を組んで流れを和らげたという。
 ゾウは10年ほど浜御殿で飼育されたが餌代がかさみ、成長して気性も荒くなったため幕府にとってお荷物になった。ゾウのふんを薬として売っていた男に金を付けて引き取らせたが、ゾウは2年もせずに息絶えた。象牙は近くの宝仙寺(東京都中野区)に納められた。
 異国に連れて来られ、長い距離を歩かされ、好奇の目にさらされ続けたゾウを思うと胸が痛む。
 静岡市立日本平動物園は、高齢ゾウの後継を海外から迎えることを断念すると市議会2月定例会で明らかにした。同園のシャンティは一昨年53歳で死に、現在いるダンボは推定57歳で国内最高齢だ。
 ゾウはメスと子どもたちで群れをつくる。オスは性成熟すると群れを離れ、繁殖時にメスの群れに合流する。日本は、繁殖を想定した飼い方をしてこなかった。
 日本平動物園の後継ゾウ問題は19年、当時の市長が「ゾウの家族を招く」と選挙マニフェストの筆頭に掲げた。退任会見の記録を読むと、前市長はさまざまな不可抗力に無念さをにじませたようだ。
 市は方針転換に伴い、ゾウ舎新設計画も白紙にし「長期スパン」で取り組むという。宙ぶらりんになった後継ゾウ問題が再始動するまでにいったい何度、園長が代わり市長選が行われることだろう。
 時間は十分にあるのだから、市民、特に子供たちに情報開示し、ゾウが必要か皆で考えてはどうか。東海道を歩いた「享保のゾウ」の話は、中野区の生涯学習講座の成果として紙芝居になっている。
(論説副委員長・佐藤学)

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