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静岡市歴史博物館 楊斎延一「桶狭間今川義元血戦」明治時代 精強な大名 壮絶な最期(宮崎泰宏/学芸員)【コレクションから㉗完】

 駿河の戦国大名、今川義元(1519~60年)の運命を決定づけた桶狭間合戦。義元の壮絶な死を力強く描いた錦絵である。公家の真似[まね]事をする小人物の義元を戦乱の風雲児の織田信長が討ち取った合戦であると、今でも多くの人が印象に持っている。

静岡市歴史博物館 楊斎延一「桶狭間今川義元血戦」明治時代
静岡市歴史博物館 楊斎延一「桶狭間今川義元血戦」明治時代

 しかし、この義元は、中央に赤色の甲冑[かっちゅう]を身に纏い刀を振るう武将として勇ましく描かれている。公家風のイメージとは裏腹に、今川義元は戦国屈指の大名として勢力を伸ばし、名門今川氏の全盛期を築き上げたという歴史的事実がある。
 この錦絵は、奢侈[しゃし]な公家文化に現[うつつ]を抜かす脆弱[ぜいじゃく]な大名ではなく、むしろ歴史が語る戦国大名今川義元の精強さを、その容姿に表し、戦国時代における重要人物が壮絶な死を遂げるその刹那[せつな]を、躊躇[ためら]いなく表現している。
 いつしか植え付けられてしまった現在の義元に対するイメージとのギャップを感じることもでき、一方で義元の業績を踏まえた上で観[み]ると、「今川義元」を絶妙に表現していると感じることができる。義元に詳しい人もそうでない人も楽しめる逸品ではないだろうか。(宮崎泰宏・学芸員)

 メモ 静岡市葵区追手町4の16<電054(204)1005>
 企画展「今川義元-偉大なる駿河の太守」開催期間中(4月27日~6月9日)、館内基本展示室「家康を育んだ地 駿府」コーナーで公開している。

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