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テーマ : 静岡市

静岡県内で新たに重要文化財1件、登録有形文化財5件 文化審議会答申

 文化審議会は15日、平安時代中期に政治の実権を握った藤原道長の直筆写経「金峯山経塚出土紺紙金字経(きんぷせんきょうづかしゅつどこんしきんじきょう)」など美術工芸品6件を国宝に、河津町の南禅寺(なぜんじ)堂に伝来し、多くが10、11世紀の作とみられる木彫の神仏像「南禅寺伝来諸像」を含む36件を重要文化財に指定するよう文部科学相に答申した。今夏にも答申通り指定される。
 紺紙金字経は、藤原道長とひ孫の師通が金峯山(現在の奈良県)に埋めたお経。一部が金峯神社などに分散して保管されているが、これらとは別に10年ほど前、金峯山寺で大量に発見された。今回は金峯山寺の200枚と金峯神社の79枚を「文化史研究上、極めて価値が高い」としてそれぞれ国宝指定する。
 他に国宝指定されるのは大型の船の埴輪(はにわ)を含む「三重県宝塚一号墳出土埴輪」、宮城県の多賀城跡に立つ奈良時代の石碑「多賀城碑」など。重要文化財はほかに、江戸時代後期の漢学者・頼山陽を生み出した家の「広島頼家関係資料」など。
 また審議会は、静岡市葵区の古橋家住宅門及び塀、同市清水区の旧石川家清水別邸(三樹庵)主屋、伊豆の国市の旧新津家(にいつけ)別邸主屋と土蔵、表門の県内5件を含む121件の建造物などを登録有形文化財にするよう求めた。
 指定後、美術工芸品の重要文化財は1万910件(うち国宝912件)、登録有形文化財は美術工芸品18件、建造物1万4151件となる。県内は重要文化財が175件、建造物の登録有形文化財が312件。

南禅寺伝来諸像26体(河津町) 重要文化財
左から僧形座像、二天立像、地蔵菩薩立像。他の像も含め一木造りで、基本的に仏像はかや材、神像はクスノキ材が使われている=河津町の河津平安の仏像展示館
 南禅寺(なぜんじ)の本尊・薬師如来像をはじめとした仏像と神像26体は、河津町教委によると、作風や製作技法に共通点があり、同系統の工房が手がけたと推定される。
 東海最古の地蔵像の地蔵菩薩(ぼさつ)立像や、かつてドイツで「ギリシャ彫刻に比肩し得る」と称賛された二体一対の二天立像などは、河津平安の仏像展示館で保管されている。
 同寺は行基が開創したとも。室町時代ごろの山津波で仏像が谷底に埋没、その後掘り出され安置したと伝えられる。

古橋家の住宅、門及び塀(静岡市葵区) 登録有形文化財
地域の歴史的景観を形成する古橋家住宅門及び塀(静岡市提供)
 静岡市の市街地の一角にあり、すでに登録された古橋家住宅主屋に加え、同住宅の門と塀が登録されることになった。通りに面した門柱には石張りが施され、切り妻屋根は釉薬(ゆうやく)瓦ぶき。両脇の塀と一体で、昭和初期の静岡の茶文化を物語る歴史的な景観を形成している。
 門と塀は、和洋折衷住宅の主屋と同時期の1928年頃に建てられ、35年頃にはエジプト生まれで静岡茶の輸出業を営んでいたクレメント・M・ハキム氏が居住していた。その後、製茶業を営む古橋家の所有となった。

旧石川家清水別邸(三樹庵)主屋(静岡市清水区) 登録有形文化財
民家風の意匠が重厚な旧石川家清水別邸(三樹庵)主屋の接客部分=静岡市清水区
 出版社「主婦の友社」を創業した石川武美(たけよし)が1940年頃、日本平東麓の農園内に建てた木造平屋の別邸。富士山や駿河湾を望み、そばにシイなどの大木3本があったことから「三樹庵」と名付けた。
 3棟からなり、中央の接客部分は民家風の重厚なデザイン。玄関と広間は柱や床、天井、板戸などに良質なケヤキ材が使われている。居住部分は、舟底天井など端正な数寄屋風の造り。独創的な意匠だが、全体的にすっきりとした印象。昭和初期の上質な別邸建築のありようを伝えている。

旧新津家別邸(伊豆の国市) 登録有形文化財
外観にガラス戸が多用されている旧新津家別邸の主屋=伊豆の国市奈古谷
 伊豆の国市奈古谷に残る「旧新津家別邸」は、石油王と呼ばれた実業家新津恒吉が、1937年に病気療養のために建てた別荘。書院造りで、昭和初期の技術の粋を集めた。
 化粧の棟木、桁を丸太とした表門をくぐると正面に大きな主屋が現れる。一部2階建ての外観にはガラス戸が多用され、玄関棟のサンルームは天井にアールデコのデザインを用いたステンドグラスを飾る。
 土蔵は主屋の西に建つ家財蔵で、両側の妻に庇(ひさし)付きの窓があり、北妻に家紋をあしらっている。

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