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社説(3月8日)再審法改正議連 世論喚起へ先頭に立て

 刑事事件のえん罪被害者の速やかな救済につながる法整備を目指す超党派の国会議員連盟(議連)が近く発足する。立法府の国会を構成する議員が動き出した意義は大きい。しかも議連の呼びかけ人には党首や大物議員が名を連ねる。日本弁護士連合会(日弁連)が求めている刑事訴訟法の裁判のやり直し(再審)に関する規定(再審法)改正に向けた一歩になる。
 再審法は戦後一度も改正されていない。日本の再審制度は、再審を開始するかどうかを判断する再審請求審と、有罪か無罪かを決める再審の2段階構造で、再審請求審に何十年もかかるケースが目立つ。日弁連は再審法に通常の裁判のような具体的な規定が乏しいのが原因として、証拠開示のルール化や、検察官の不服申し立て(抗告)の禁止などの法改正を訴えている。
 法務省は司法関係者や法律の研究者による協議会を設けて再審手続きにおける証拠開示も検討の課題にしているが、法改正には慎重な姿勢を崩していない。法改正は国会議員が主導権を握らなければ実現しない状況にある。議連は国民の理解を広げるよう世論喚起の先頭にも立たなければならない。
 再審請求審の長期化は以前から指摘されていた。戦後、死刑確定後に再審で無罪になったのは、今年2月に94歳で死去した島田事件の赤堀政夫さんら4人で、いずれも再審の請求から再審開始まで20年以上の歳月を要した。1966年に現在の静岡市清水区で起きた一家4人殺人事件で死刑が確定した袴田巌さんは、昨年3月の再審開始決定まで42年かかった。
 袴田さんは2014年に静岡地裁で再審開始が決まり、収監されていた東京拘置所から釈放されたものの、検察が抗告したため、再審開始の確定までさらに9年を費やすことになった。
 再審に関する超党派議連の発足は今回が初めてではない。10年には静岡県内の国会議員が核となって袴田巌死刑囚救援議員連盟を結成し、袴田さんの早期再審開始などを訴えてきた。袴田さんの救援が主眼とはいえ、再審法の不備も研究してきた。活動の蓄積は新たな議連の活動に生かすことができる。
 昨年、静岡新聞社が国会議員711人を対象に実施したアンケート調査では、回答した187人のうち185人が法改正が必要との認識を示した。だが、ほぼ4人に1人という低回答率は再審法への関心の低さを物語っている。
 特に自民党、公明党の議員の回答率が低かった。まずは与党議員の賛同者、理解者を増やしていくことが法改正に向けた議連の重要な役割となるだろう。

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