あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 静岡市

消防士殉職 静岡市長「リスク認識欠く」 市議会で現場証言に反論

 静岡市議会2月定例会は5日、前日に続いて本会議で総括質問を行い、7氏が登壇した。葵区呉服町の雑居ビルで2022年8月に発生した消防隊員殉職火災事故に関して、長沼滋雄氏(創生静岡)が現場で活動した元消防隊員の証言を取り上げる形で当時の現場判断の正当性を主張し、市の検証結果に疑問を投げた。これに対し、難波喬司市長は「隊員が1人取り残されて殉職した事実を顧みることなく、(元隊員が)自分は正しい判断をしたと言っていることにこそ問題の本質がある」と反論した。
 長沼氏は、殉職した市消防局駿河特別高度救助隊の男性=当時(37)=とともにビル内に入って活動した同隊元隊員の男性の証言を、本人から直接聞いたとして取り上げた。
 市の検証結果は、隊員同士を命綱で連結せずに煙が充満するビル内に進入したことが事故につながったとしたが、元隊員は通路が狭いことから「ロープ(命綱)確保はかえって危険」と安全面からも正しい判断だったと主張し、「男性が戻らないことは予見できなかった」と訴えているという。
 難波市長は命綱を付けなかったことは消防の活動基準が守られず、適切でなかったと強調した。加えて元隊員は後ろを振り向かず、男性を取り残すことを予見できないような屋外への退出方法をとっていたことから、安全上のリスクに関する認識が欠如していたと指摘した。その上で「(長沼)議員が証言を肯定的に受け止めていることは誠に残念」とした。
 組織全体として安全管理や規範順守の意識が低いことが消防職員に対するアンケートでも明らかになったとし、市長は「なぜ規範が守られなかったのかという原因分析を出発点とし、実際の現場活動と規範が適合しているのか、機能しているのか再検証し、必要な見直しを行う」と述べた。
 現場で最高指揮官の大隊長を務めた男性(失職)が、過去に有罪判決を受けていたことが火災後に発覚し、欠格状態で活動を行っていたことについて、難波市長は「指揮活動は有効」と従来の説明を述べた。
 総括質問では寺沢潤氏(自民)が4日付で通告を取り下げた。
 (政治部・尾原崇也、池谷遥子)

元隊員男性 悔しさ吐露 安全「軽視していたわけでは…」 市検証巡り6日会見
 発災当時、殉職した男性のすぐ後ろで活動した元消防隊員の男性(31)は、5日の静岡市議会総括質問で殉職事故を巡る難波市長の答弁を議場で傍聴した。取材に「自分たちは安全を軽視していたわけではない」と話し、現場の安全管理や指揮統率に問題があったと指摘した市の検証結果について「悔しい思いが多い」と述べた。6日に静岡市内で記者会見し、詳しく説明するという。
 市の検証結果は隊員同士で命綱を付けずに煙が充満した屋内に進入した判断は消防の活動基準に則さず、不適切だったと指摘した。元隊員は「規定は平成の初めにつくられて一度も見直しされていない」とし、現在の建物の構造や消防資機材を踏まえた内容になっていないと指摘した。ホースラインを使った進入・退出方法を指示した当時の小隊長の判断は「間違っていない」と強調した。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

静岡市の記事一覧

他の追っかけを読む