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テーマ : 静岡市

コラム窓辺 今川氏研究とピンク・レディー(中村羊一郎/静岡市歴史博物館長)

 さくらももこさんの、「静岡市はいいねぇ」は至言です。ところが、戦国時代末期に国ごとの気風を述べた「人国記」という本では、遠州人は決断力にすぐれ、伊豆の人は激情家だというのですが、駿河の人はどうもはっきりしない、リーダーがいないなど、かなりのマイナス評価です。静岡市の方言で、いつまでもぐずぐずしている人を「ねえたらくわず」と言います。煮えたら食べようと言って、物事を決められないのです。「人国記」は、うまく言い当てていますね。

中村羊一郎氏
中村羊一郎氏

 そんな気風は、静岡市の恵まれた自然環境のもとで形成されたのでしょう。三方が山で外敵は侵入しにくいけれど、海に面しているから閉鎖的ではない。しかも山林、金や塩など、豊かな資源に恵まれています。まさに自主自立が可能な理想郷です。
 ところが、時代がたつにつれ、他地域との関係抜きでは平穏な暮らしが続けられなくなりました。そこに新時代のリーダーとして登場した今川氏は、商業・文化の発展に努め、市民の信仰の中核となる浅間神社を保護しました。静岡市歴史博物館は、この視点から今川氏の研究をさらに深めることで、郷土の魅力を再発見し、観光にも大きく貢献できるでしょう。
 でも、古い物だけじゃない、現代静岡の姿を後世に伝えるための資料収集も重要な役割です。たとえば、静岡市出身で日本中をとりこにした、あのピンク・レディー関連のグッズなどは、今すぐ収集を始めたい。市民みんなで魅力あふれる博物館に育ててくださるよう、あらためてお願いいたします。
(中村羊一郎=なかむらよういちろう/静岡市歴史博物館長)

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