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テーマ : 静岡市

不登校の子に居場所を 福祉施設活用し世代間交流 清水区で静岡市社協 コミュニケーション経験して

 不登校の子が社会的に孤立している問題を改善しようと、静岡市社会福祉協議会が清水区で福祉施設などを活用し、不登校の子の居場所づくりを進めている。高齢者との世代間交流を通じて、不登校で不足しがちな他者とのコミュニケーションを経験する場になっている。市社協は福祉分野から不登校の子にアプローチし、生活圏単位で居場所づくりを進めていく。
介護事業者が開放したサロンで高齢者と話をする不登校の子どもたち(手前)=2月、静岡市清水区
 平日の昼、テーブルを囲んだ70~80代の高齢者の傍らに、思い思いにゲームなどを楽しむ小中学生の姿があった。不登校の「無気力」なイメージと異なり、屋内外で活発に動き回る子どもをお年寄りがほほ笑ましく、時に厳しく見守る。
 介護事業を展開する同市清水区のNPO法人「泉の会」が地域住民に施設を開放するサロンの光景だ。同じ空間に子どもの居場所「こどもっ家(こどもっち)」を開設して7年。今では不登校の子の受け皿にもなっている。藤下品子理事長(81)が「家族のような雰囲気でしょ。孫のような感じで接している」とにこやかに語る。
 通ってくるのは小学2年から中学2年までの数人で、週の半分ほど居場所に通う中学2年の女子生徒は「いろいろな人と話をすることができて楽しい」と言う。元小学校教諭のスタッフ渡部恵美子さんは、学区内にないフリースクールや行政の教育支援センター(旧適応指導教室)の代わりになるとし「人とのコミュニケーションを経験できることが大事」と解説した。
 市社協は「こどもっ家」などをモデルに今後、自治会単位の地区社協や児童館などを活用し、子どもの居場所を充実させる方針。川島徹也地域福祉部長は受け皿の整備に向けて「子どもたちへの福祉からのアプローチなので、行政の教育部門との間で垣根を越えた連携が必要になる」と説明した。
 (社会部・大橋弘典)
「人と関わりたい」  静岡市社会福祉協議会が2023年に同市清水区で実施した不登校の子の実態調査では、7割の子どもが不登校でも人と関わりたいと回答するなど、他者との関係を求めていることがうかがえた。
 不登校の子23人、その保護者15人にインタビューやアンケートした。対象人数は少ないが、支援スタッフらが対面で深掘りして聞いた。船越、岡、浜田、入江の4小学校区を中心に住民662人にもアンケートした。
 希望する場所について不登校の子に聞くと、16人が「誰かと一緒に過ごす所」と答え、「一人で読書したり絵を描いたり」(2人)などを大きく上回った。インタビューには「友だちがほしい」「運動が楽しい」と人間関係の構築や外部での活動に意欲的な回答が目立った。保護者への調査では、離職で生活への影響が避けられなくなるなど苦悩する姿が浮き彫りになった。住民アンケートは、子どもへの支援に協力的な回答が6割を占めた。
 不登校の実態に詳しい常葉大の太田正義准教授(教育心理学)は「不登校の子は無気力だと思われがちだが、子どもが他者と関わる居場所を求めていることが分かる。地域住民は関心があるので、課題を積極的に周知していくことが必要だ」と指摘した。
不登校当事者のインタビュー調査の主な回答

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