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テーマ : 静岡市

体験重視「ハンズ・オン」 遊びが「なぜ?」を生む【科学を楽しむ 静岡る・く・る20年㊥】

 「もっと速く回そう」「次は反対回りだ」。静岡市駿河区の静岡科学館る・く・るで3月中旬、市立森下小の児童が、回転する円盤を左右のハンドルで傾けていすの動きを変える「ダブルジャイロ」を体験した。回る円盤に力を加えると、運動を保とうとする力が起きるジャイロ効果を利用した展示。児童らは順番で、何度も動きを試した。

ハンドルを上下に動かし、いすの回転の変化を楽しむ児童(右)=静岡市駿河区の静岡科学館る・く・る
ハンドルを上下に動かし、いすの回転の変化を楽しむ児童(右)=静岡市駿河区の静岡科学館る・く・る

 同館の愛称は「みる」「きく」「さわる」というコンセプトに由来する。来館者が展示物に触れ、楽しみながら科学を体験することを重視する方式で「Hands―on(ハンズ・オン)」と呼ばれる。
 それぞれの展示のそばには、どのような科学法則に基づくのか解説するパネルはない。考える前にまず展示物で遊んで。遊びで生まれた科学の疑問をスタッフとの会話や展示解説機を使った調べ学習で追究し、「なぜ?」「分かった」をたくさん見つけて―。こんな願いが込められている。
 る・く・るは、認知科学の専門家の助言を受け、ハンズ・オン展示で著名な米国の科学館「エクスプロラトリアム」を参考につくられた。開館直後から長く館長を務めた増田俊彦さん(76)=焼津市=は「手元のスイッチのオン、オフで現象を観察する展示が主流だった時代。当時は全身で楽しむ科学館は全国的にも珍しかった」と振り返る。
 来館者数は静岡市の目標値を上回り続け、滑り出しは順調だったが、新型コロナの流行が運営を直撃。客足はいまだコロナ前の水準には戻りきらない。展示物の老朽化も課題だ。約50点の展示のうち、ステージ上の人の動きに連動して映像が変わる「ふしぎなステージ」など半数以上は開館当時のもの。故障しても部品が既に製造中止で、応急処置でしのいでいる展示もある。
 打開の鍵として清水昭博館長(64)は職員の「科学コミュニケーション力」の向上を挙げ、「来館者の科学的な気付きを促すお手伝いをしたい」と力を込める。

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