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全線開通70年 好循環を創出 沿線活性の発信拠点へ 岳南電車社長/橘田昭氏【本音インタビュー】

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)は1月に全線開通70周年を迎えた。2004年度以降は利用者の減少などで経営状況が苦しくなり、市からの補助金で赤字を補ってきた。現在は23年度以降の公的支援の最終決定を待っている。地方鉄道の存続に向けた課題を聞いた。

橘田昭氏
橘田昭氏


 -利用者数の推移は。
 「年間70万人を下回っている。ピーク時(1970年前後)の約460万人とは比較にならないほど減少してしまった。創業当時は、吉原駅と商店街を結び、製紙工場の輸送手段として地元の期待を背負って運行していた。モータリゼーションや沿線企業の減少が響き、2012年の貨物輸送休止が社の分岐点と言える。夜景電車を筆頭とした企画に注力し利用者が80万人超まで回復した直後、新型コロナウイルス禍の移動制限が痛かった」
 -客足回復の見込みは。
 「コロナ禍の出口は見えつつあるが、少子化や公共交通離れは以前続く。コロナ前の水準を取り戻すにはまだ何年かかかるだろう。鉄道ファンや県外からの観光客を呼び込む従来の取り組みは継続し、培ってきた企画力で鉄道ファンだけでなく、幅広い層を楽しませたい。恵まれた観光資源を最大限生かす」
 -地元にはどのように貢献していくか。
 「沿線住民が安全で快適に移動できるサービスを提供することが経営の大前提であり、安全輸送のためには観光利用などによる話題づくりや収益獲得が必須。岳鉄は頑張っていると認められることで地元を元気づけ、乗りたいと思わせたい。一方で、沿線から離れた地域には日常的な鉄道サービスの提供は難しい。その分、岳鉄に市外の人が集まって生まれる地域経済の活性化というアプローチで貢献したい。新たに策定した第四次行動計画(23~27年)を確実に履行する」
 -厳しい地方鉄道業界の中での岳鉄の将来像は。
 「地域に支えられてきたからこそ、これからは地域の課題を解決する側に回る。沿線のにぎわい創出やシティプロモーションなどに取り組むと同時に利用者を伸ばし、好循環を生み出すことが最重要課題だ。鉄道は経済効果以外にも記憶の奥底にある原風景とも言え、まちづくりの重要な要素で財産だと信じている」

 きった・あきら 甲府市出身。2000年に富士急行に入社し不動産業、公共交通事業を担った。22年6月に現職就任。東京都町田市在住。45歳。

 

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