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【浜岡原発全炉停止13年】再稼働容認に性別、世代差なく 御前崎市民アンケート

 浜岡原発(御前崎市佐倉)の全炉停止から13年を迎えるのを前に、静岡新聞社が4月中旬に御前崎市民に対して実施したアンケート。7年前の調査結果に比べて再稼働について性別や世代間で考え方の差がなくなり、性別年代を問わず、再稼働容認へと意識が変化している状況が明確に表れた。発電で発生する使用済み核燃料の問題については「知っている」の回答が6割弱だった。
全炉停止から13年を迎える浜岡原発(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、上)と、浜岡原発4号機内で燃料プール脇のクレーン装置の落下防止対策を点検する県と御前崎市職員のコラージュ=同市佐倉
使用済み核燃料 認知6割

 再稼働についての認識を男女別に見ると、男性の57・4%、女性の40・6%が「再稼働すべき」を選んだ。7年前の調査で女性は41・9%が再稼働に反対の立場を示していて、女性全体に占める容認と反対の比率が逆転した。年代別でも前回は、60代以上で「再稼働すべきでない」が上回っていたが、今年は全年代で容認が上回った。
 経済的な理由に次いで賛成の理由に多かったのは「エネルギーの安定供給に必要」で49・7%。7年前と比べると、7ポイントほど増えた。「当初は反対していたが、防潮堤を高くして安全対策が進んだ」(70代女性)と容認に転じた理由を挙げた人もいた。
 再稼働反対派は安全面への懸念が根強い。かつて浜岡原発で働いていた70代女性は「当時は安全性について一生懸命アピールしてきたが、福島の事故を受けて安全は100%ではないと思った」と語った。
 「現時点では判断できない」は7年前との比較で男女ともに20~30%で大きな変化がなかった。「安全性の担保と電力不足のバランスを考えると簡単には判断できない」(60代の会社経営の男性)や、「再稼働すべきと言い切るのは抵抗があり、動かさなくても燃料は置かれたままでリスクがある状態」(40代男性)と慎重な意見があった。

 浜岡原発の燃料プールで使用済み核燃料が容量の87%と満杯に近づいている状況について、詳しく「知っている」との回答は58・5%。「聞いたことがある」を含めると8割超が認識していた。「使用済み核燃料の問題は100年たっても解決しないのではないか。最終処分の候補地は調査をしても決まらない」(70代女性)と懸念する声がある一方、6割弱の人は「資源が乏しい」「使用済み核燃料の処理が必要」などを理由に「核燃料サイクル」が必要だと回答した。

使用済み核燃料 中電に課税すべき37.4%

 全国の原発や中間貯蔵施設立地自治体で、使用済み核燃料に対して課税する自治体が5市町ある中、御前崎市が中部電力に対して課税すべきか聞いた。37・4%が課税すべきだと回答した。
 「使用済み核燃料税」は自治体の課税自主権を根拠に、条例を定めて課税できる仕組み。使用済み核燃料の重量に対して課税するのが一般的。直近では2022年度、使用済み核燃料の中間貯蔵施設が立地する青森県むつ市が条例を改正し、制度を新設した。防災安全対策や雇用産出施策などに充てるという。似たような税金に「核燃料税」があり、県が中部電力に対して課税している。放射線監視体制や避難路整備などに活用している。
 「課税すべき」と回答した人の中には財政悪化を理由に挙げている人がいた。「課税すべきではない」の理由としては「電力会社に課税した分が電気代に転嫁されるのでは」と懸念する声もあった。ただ、「分からない」との回答が47・0%と最多で、市民に対する課税だと誤解する人も多かった。課税の仕組みそのものの認知度が低く、制度導入へは、議論の深化が不可欠となる。

新知事への要望 「安全性と事故防止」が半数以上

 浜岡原発の再稼働は主要な県政課題の一つで、9日に告示された知事選でも、候補者の基本姿勢が注目されている。新規制基準適合性審査では、基準地震動が決まった。基準津波の議論が大詰めを迎え、敷地内断層の評価作業が続く。静岡新聞社が御前崎市民を対象にしたアンケートでは、半数以上が「安全性と事故防止の徹底」を重視してほしいと答えた。再稼働可否の最終判断を下す知事に、安全性の担保を強く求めている実情が分かった。
 原発の課題に関して、新しい知事に重視してほしい点を複数回答可で聞いたところ、「安全性と事故防止の徹底」が50・7%で最多。次いで「再稼働の同意プロセス明確化」が25・4%、「使用済み核燃料の最終処分」19・0%と続いた。「再稼働の同意プロセス明確化」を選んだ60代男性は、「(再稼働するには)隣接市町のコンセンサス、納得が必要。どういうプロセスで判断するのか示してほしい」と結論に至るまでの透明性を求めた。
 同意に関して、各候補者は「県内全市町の考えを聞く」(森大介氏)、「11市町の意見集約が大事」(鈴木康友氏)、「立地市が非常に重要。周辺市町とも対話する」(大村慎一氏)などの考えを示している。
 原発問題について新しい知事に求める姿勢を問う質問では、「国と地元との調整役」が最も多く21・7%。次いで「リーダーシップ」が19・2%。「県民の意見の尊重」18・5%、「立地市と周辺市町の意見の尊重」17・0%、「再稼働の賛否を明確に示す」14・5%と続いた。

アンケート結果(数字は%、小数点第2位を四捨五入)
問1-1 浜岡原発3、4号機の再稼働についてどう考えますか。 
 再稼働すべき 49.0
 再稼働すべきではない 23.9
 現時点では判断できない 27.1

問1-2①(問1-1で「再稼働すべき」と答えた人に聞く)そう思う理由はなんですか。(複数回答、回答者199人)
 安全対策が進んだから 33.7
 避難計画ができたから 9.0
 地元経済への影響が大きいから 52.3
 エネルギーの安定供給のために必要だから 49.7
 脱炭素社会の実現のために必要だから 14.6
 新規制基準に適合していれば良い 10.6
 身内や知り合いが原発関係で働いているから 6.5
 その他 11.1

問1-2②(問1-1で「再稼働すべきではない」と答えた人に聞く)そう思う理由はなんですか。(複数回答、回答者97人)
 安全対策が不十分だから 57.7
 避難計画の実効性が不十分だから 21.6
 地元経済への影響が少ないから 3.1
 南海トラフ地震の想定震源域の真上にあるから 48.5
 放射性廃棄物の処分が見通せないから 38.1
 東京電力福島第1原発の廃炉が見通せないため 19.6
 その他 10.3

問2-1 浜岡原発が全炉停止して13年となります。生活や仕事に悪影響はありますか。
 悪影響がある 26.8
 当初はあったが、今はない 4.7
 当初も今も悪影響はない 55.9
 今後長引くと悪影響が出る可能性がある 12.6

問2-2(問2-1で「当初も今も悪影響はない」以外を選んだ人に聞く)どのような悪影響がありましたか。(複数回答、回答者177人)
 電気代が高騰した 48.6
 地元経済が衰退した 48.6
 市の財政が厳しくなった 36.2
 雇用が減った 19.2
 その他 11.3

問3-1 原子力災害が発生した場合の広域避難計画が作成されています。原子力単独災害と、南海トラフ地震などとの複合災害の避難先がどこか知っていますか。
 両方とも知っている 38.2
 どちらか一方は知っている 17.5
 両方とも知らない 34.0
 避難先が決まっていることを知らなかった 10.3

問3-2 実際に避難する事態となった場合、不安に思うことはありますか。(複数回答)
 地震や土砂災害による道路寸断 31.5
 避難手段の確保 31.5
 渋滞の発生 28.5
 事故や避難指示などについての情報伝達の不備 21.3
 避難生活の長期化 42.8
 その他 17.8

問4-1 発電で生じる使用済み核燃料が、浜岡原発をはじめ全国の原発の燃料プールで満杯に近づいています。こうした状況について知っていますか。
 知っている 58.5
 聞いたことはある 22.7
 知らない 18.8

問4-2 使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルは必要だと思いますか。
 必要だ 57.1
 必要ではない 9.1
 分からない 33.7

問4-3①(問4-2で「必要だ」と答えた人に聞く)そう思う理由はなんですか。(回答者232人)
 資源が乏しい日本にとっては重要 55.6
 使用済み核燃料が各原発で満杯に近づいている 39.2
 科学技術の発展につながるから 6.5
 その他 6.5

問4-3②(問4-2で「必要ではない」と答えた人に聞く)そう思う理由はなんですか。(回答者37人)
 再処理は採算性が取れない 8.1
 余剰プルトニウムをこれ以上持つべきではない 16.2
 使用済みMOX燃料の再処理技術が確立されていない 16.2
 再処理しても核のごみの問題は解決しない 54.1
 その他 13.5

問5 静岡県は中部電力に対し、原子炉に挿入された核燃料や原子炉の熱出力に応じた「核燃料税」を課しています。同様に、全国では原発の立地市などが使用済み核燃料に対して「使用済み核燃料税」を課している所があります(新潟県柏崎市、愛媛県伊方町、佐賀県玄海町、鹿児島県薩摩川内市、青森県むつ市)。御前崎市も中部電力に対して使用済み核燃料税を課すべきだと考えますか。
 課税すべき 37.4
 課税すべきではない 15.6
 分からない 47.0

問6-1 浜岡原発の再稼働に関して、最終的には県知事が可否を判断することになります。国の原発政策を含めて新しい知事に最も求める姿勢はなんですか。
 リーダーシップ 19.2
 国と地元との調整役 21.7
 国の政策動向を注意深く見守る 5.2
 立地市の意見の尊重 13.1
 立地市と周辺市町の意見の尊重 17.0
 県民の意見の尊重 18.5
 再稼働の賛否を明確に示す 14.5
 その他 7.4

問6-2 原発の課題に関して知事に重視してほしいことはなんですか。(二つまで回答)
 再稼働の同意プロセス明確化 25.4
 広域避難計画の実効性 14.3
 廃止措置で発生する放射性廃棄物の最終処分 10.8
 使用済み核燃料の最終処分 19.0
 脱原発、原発依存度の低減 8.6
 運転延長の慎重判断 7.9
 安全性と事故防止の徹底 50.7
 立地市への経済支援拡充 10.8
 特になし 8.1
 その他 4.2

▽調査の方法=御前崎市在住・在勤者を対象に、18歳以上の男女406人に対面式で実施した。実施場所は、同市内の大型店や市役所など計4カ所。回答者の内訳は男性49.8%、女性50.2%だった。

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