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多忙と長時間 悲痛な声 県教委の採用試験 小中学校受験者数12年度1448人→23年度1043人【静岡県知事選 静岡の現在地④教員不足】

 2年前からスクール・サポート・スタッフ(SSS)として富士宮市立富士根南中に勤務する淵沢由美子さん(51)は朝8時の出勤時から正午の終了時間まで、教材や配布文書の印刷業務に追われる。

教材などの印刷物を確認するスクール・サポート・スタッフの淵沢由美子さん=7日、富士宮市立富士根南中
教材などの印刷物を確認するスクール・サポート・スタッフの淵沢由美子さん=7日、富士宮市立富士根南中

 静岡県教委は2018年度からSSSを全小中学校に1人配置し、教員の負担軽減の切り札として力を入れてきた。印刷やデータ入力、小テストの採点補助、電話対応など、子どもに直接関わらない業務を補助する。
 同校は大規模校のため、淵沢さんの業務はほぼ印刷で終わってしまう。金野教之校長は「SSSの存在で、先生も仕事に優先順位を付けるなど良い影響が出ているが、理想を言えば各学年に1人ほしい」と、学校規模に応じた配置を望む。
 SSSの勤務時間は当初の週10時間から段階的に拡充し、23年度から20時間となった。県教委はほかに、業務改善の好事例を専用サイト上で共有したり、複数校の学校事務職が連携する「共同学校事務室」の研究を進めたりして、教員の負担軽減策を模索する。
 一方、現場では多忙化、長時間労働を訴える悲痛な声が相次ぐ。「SSSは助かっているが、業務の分担はまだ不十分」「本音は先生を増やしてほしい」。ある中学校教員は、病休者の代わりが見つからず約2カ月、複数クラスの授業を同時に行った。「最終的には生徒に不利益が生じてしまう」と危惧する。
 県教委所管の公立小中学校教員は24年度当初で、定員に対して52人不足した。理由は特別支援学級や産休・育休取得者の増加、教員採用試験の受験者減少など。担任数は確保したが、休職者らの人員補充が追いつかず、退職者を含めて常に探しているという。
 県教委が公表した公立学校教員採用試験の受験者数は、小中学校の12年度の1448人に対し23年度は1043人、採用倍率は12年度の4・3倍が23年度は3・3倍。受験者数は年々減り、10年前の7割にとどまる。団塊世代の大量退職に伴う採用増などで倍率が低下し、不合格となって再チャレンジを目指す講師の受験者数が減ったことが背景。長時間勤務による教職の人気低下も一因に挙がる。
 5月11、12の両日、県教委と静岡、浜松市教委は、24年度の試験日程を例年より2カ月前倒しして1次試験を行った。国の方針より1カ月先行する。早期化する民間採用に対抗し、優れた人材を確保したい危機感の表れだ。県教委義務教育課の植松博人事監は「前倒しの効果を見極めたい。教員の働く環境整備も進め、この教員不足のサイクルから脱却したい」と話す。
 (教育文化部・岡本妙)

 <メモ>教員不足の全国調査は、文部科学省が公立学校の実態を把握するため21年度に初めて実施した。県内(政令市を除く)の小中学校の不足数は同年度26人。以後は県独自で調査を行い、22年度56人、23年度76人。24年度の52人は、前年度より減少したものの、教員不足の解消にはほど遠い。

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