テーマ : 南伊豆町

大自在(11月23日)仲子姫伝説

 伊豆半島南端の石廊崎にも近い南伊豆町二条。かつて庄屋だった旧家に京から女官が流されてきたという「仲子姫伝説」が残る。伝説にまつわる資料や遺物があると聞いて訪ねた。
 江戸時代初め、宮廷で公家や女官が密通して処罰された「猪熊事件」が起きた。事件に連座して新島(東京都)に配流されたのが中院[なかのいん]仲子。宮廷では権典侍[ごんてんじ]を務め、配流時は16歳だった。
 伝説では仲子と侍女は新島に向かう途中、船が難破して石廊崎に漂着。そのまま二条の庄屋鈴木家の庇護[ひご]を受けることになった。事件から14年後、仲子は許されて京に戻ることになったが、その際に侍女が亡くなった悲話も伝えられる。
 仲子は京に帰還したといわれ菩提寺には墓も残る。しかし、配流中の様子が分かる記録はない。鈴木家にも記録はなく、代々語り伝えられたという。配流先を変えたために記録を残すことに差し障りがあったのかもしれない。
 そこで埋もれた郷土の歴史を掘り起こそうと、子孫の成島直美さん(旧姓鈴木)や住民有志が今月12日、町内でシンポジウムを開いた。シンポには仲子を研究する大学教授や郷土史研究者も参加。時代背景などを交えて当時に思いをはせた。
 徳川家康も裁定に関与したといわれる猪熊事件は幕府の朝廷干渉を強める契機となり、やがて「禁中並公家諸法度」も制定された。そうした歴史の流れに伊豆の一部地域も関係していたかと思うと感慨深い。仲子が住んだとされる場所は緑に囲まれたのどかな農村だった。どんな思いで赦免の便りを待っていたのだろうか。

いい茶0

南伊豆町の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞