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大川原化工機元顧問 遺族 拘置所医療 問題認めて 21日に判決

 外為法違反の罪に問われた社長らの起訴が取り消された「大川原化工機」の元顧問で、勾留中に判明したがんで死亡した相嶋静夫さん=当時(72)、富士宮市=の遺族が、拘置所の対応が不適切だったとして国に損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁で言い渡される。原告の長男は「拘置所医療の現状を社会に問題提起したい」と話す。

大川原化工機元顧問の死亡を巡る訴訟の主な争点
大川原化工機元顧問の死亡を巡る訴訟の主な争点

 相嶋さんは2020年3月、生物兵器製造に転用可能な装置を不正輸出したとして、大川原正明社長らと警視庁公安部に逮捕された。長男によると、潔白を主張した相嶋さんは、勾留中の9月末に重度の貧血で輸血を受け、拘置所の検査で10月7日までに悪性腫瘍と判明した。その9日後に8時間の勾留停止を得て向かった大学病院で進行胃がんと診断されるも、保釈請求は却下された。
 相嶋さんは拘置所で「このまま殺されちゃうな」と漏らしたという。妻は「命が大事。罪を認め保釈してもらい病院で治療しよう」と望んだが、長男は「信念を曲げて亡くなるのはよくない。拘置所で死なせてたまるか」と病院探しに奔走した。
 再び勾留停止を得て20年11月、横浜市内の病院に入院、その後は緩和ケアを受け、21年2月7日に息を引き取った。東京地検は21年7月、犯罪に当たるか疑義が生じたとして社長らの起訴を取り消したが、相嶋さんが結果を見届けることはなかった。
 国側は貧血時の輸血対応や、がん確定後の外部病院での診療手配は適切で、治療などの義務違反はないと主張している。遺族側は早期に採血結果の精査や内視鏡検査をするべきだったと指摘。長男は、これらの対応が取られれば「元気な状態が続き、人生を締めくくる準備ができた」と訴え、こう投げかける。「多くの人が適切な対応がなされずに拘置所内で亡くなっているのではないか」
 一連の逮捕、起訴を巡っては、大川原社長らが違法捜査を訴えて国と都に賠償を求め、昨年12月に東京地裁が計約1億6千万円の賠償を命令(原告、被告とも控訴)した。

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