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静岡新聞教育文化部

【文月悠光さんの第4詩集「パラレルワールドのようなもの」】「臆病な詩人」の姿を言葉に変換

静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。今回は、第31回萩原朔太郎賞候補になった文月悠光さんの第4詩集「パラレルワールドのようなもの」(思潮社)。文月さんは11月に三島市で開かれる「2023年しずおか連詩の会 in 三島(9~11日創作、12日発表会)に参加する。

6年ぶり詩集は26編収録。過去3作以上に「わたし」をえぐり出している。世間との距離を慎重に図る「臆病な詩人」の姿を、容赦なく言葉に変換していく。天頂に仕掛けたカメラで活写するかのよう。「わたし」の痛み、苦しみ、迷いを伝える言葉は、とても力強い。研ぎ澄まされている。自分や他者に全幅の「信」がなくとも、唯一、圧倒的に「言葉の力」を信じているのだろう。いびつな信頼が、きらめきを産む。これぞ詩人のマジック。

静岡県内の音楽、美術、文学、演劇、パフォーミングアーツなど、さまざまな表現活動を追いかけます。教育分野の動きもフォロー。最新情報は公式X(旧Twitter)で。

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