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ウィズコロナの時代にマスクは不要? マスク生活はいつまで続くのか

ウィズコロナの時代に?

政府は2022年5月23日、新型コロナウイルス対策の基本的対処方針を改定し、「屋内で他者と身体的距離がとれて会話をほとんど行わない場合」「屋外で他者と身体的距離が確保できる場合」などはマスクの着用は必要ないとする見解を発表。マスク着用の“努力義務”緩和が進んでいます。今回は、「マスク生活はいつまで続くのか」医学的な観点から教えていただきます。浜松医療センター 感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生に、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※5月26日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:
アメリカやイギリスなど世界各国でも「脱マスク」の動きが進んでいます。他国を見ていくと、マスクをしていなくても感染者は増加していないのでしょうか。

矢野:マスクを着用しないからといって、すぐに感染者が増えるわけではありません。感染者の増減は、人の流れだとか、集団の免疫状態や変異株の性質などによって変わるので、マスクをやめたからすぐに感染者が増えているということではないんです。

牧野:静岡県でも知事が、未就学児は原則マスク不要などとかなり踏み込んだ内容を発表しています。日本でも、マスクなしで生活できる日は近いのでしょうか? 

熱中症のリスクも考えていく

矢野:時期的にもこれからどんどん暑くなってくるので、これまで通りのマスク着用を続けるわけにはいかないと思います。日本も、夏が来る前にマスクのない生活に戻れる可能性はあると思っています。というのも、これからウィズコロナの世界に入っていくわけで、「コロナは重症化しなければよい」になっていきます。すでに65歳以上は90%程度がブースターを終えており、非常に優秀な内服薬も出てきたので、必ずしもマスクが必要ではなくなってくるはず。できることなら7月くらいから昔の生活に戻れたらと思います。

牧野:熱中症のリスクも考えると、ある程度マスクしないで生活できた方がいいとお考えですか?

矢野:はい、7月から急に熱中症が増えてきますので、それまでに何とか対応した方がいいと思います。また、5歳以下の子どもは、もともとWHOとユニセフはマスク着用を推奨していないんです。それに準じてきたような感じがします。

5歳以下の子どもたちへの心配ごと

牧野:5歳以下の子どもがずっとマスクをしてきたことによって、心配なこともあるそうですね?

矢野:子どもの頃に、かかった方がいい感染症に感染するチャンスを奪われてしまったんです。マスクの着用によって、手足口病、ヘルパンギーナといった感染症がぜんぜん出てきていません。これらはワクチンがないので、免疫をつけるには感染するしかないんです。大きくなってから感染すると重症化のリスクもあるので、コロナは広がるかもしれませんが、マスクを止めて幼少期のうちに感染する機会を与えた方がいいと思います。

今後の新型コロナの扱いは?

牧野:一方で、政府が4回目のワクチン接種を60歳以上の方に行うとしていますが、この先、全世代対象となる日は来るのでしょうか?

矢野:たぶん、こないと思います。ワクチンの目的は、重症化予防なんです。重症化するのは、高齢者や基礎疾患のある方。3回打ってもそういった方々は細胞性免疫が落ちてくるので、4回目が必要なんですが、若くて合併症のない方の場合はやる必要はないと思います。

牧野:そうなると、今後は、新型コロナウイルスがインフルエンザと同じような扱いになる日もやってくると見ていますか?

矢野:現在2類相当なんですが、近いうちに5類になると思います。先ほど申し上げたような重症化予防のためのテクノロジー「ブースター接種を完了する」「コロナの新しい内服薬が普及する」の2条件が揃えば、もう5類でいいのではと思います。

牧野:ただ、5類に変えるための措置は必要なんですね。

矢野:そうですね。必要だと思います。

マスク着用の緩和で気をつけること

牧野:今後、マスク着用の緩和が進むなかで、気をつけるべきことを教えてください。

矢野:マスク着用をやめることによって、この2年間で感染できなかった病原体が流行すると思います。例えばインフルエンザも2年間流行していなかったので、今年、過去2年間と3年目の分も感染者が増えれば、重症者も増えると思います。

感染症の嵐が来ることは覚悟していただき、ワクチンが存在する感染症にはワクチン接種をお願いします。インフルエンザワクチンを必ず接種しましょう。

牧野:私たちが戦う相手は、新型コロナウイルスだけではないということですね。

矢野:そうなんです。他の感染症もありますね。

牧野:改めて、マスク着用の緩和について、矢野先生は進めていったほうがいいとお考えですか?

矢野:そうですね。どんどん進めていただいて、近い将来、昔のような生活に戻るべきだと思っています。


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免責事項
 
今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数

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