3月13日からマスクは個人の判断に、5月8日から「5類」
現在は「2類相当」の新型コロナウイルスですが、5月8日からは季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられます。また3月13日から、マスク着用が個人の判断に委ねられます。今回は、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生に、SBSアナウンサー原口大輝がお話をうかがいました。
「5類」は自宅待機や外出自粛なし
原口:「2類感染症」と「5類感染症」はどんなもので、違いは何でしょうか。矢野:2類感染症は総合的に危険性が高いと判断される感染症で、ポリオ、結核、ジフテリア、SARS、鳥インフルエンザなどが指定されています。ポリオ以外は飛沫感染や空気感染する感染症です。一方、5類感染症は感染力や重篤性などの観点から、危険性が最も低いとされている感染症です。麻疹、風疹、RSウイルス、インフルエンザなどが5類に含まれます。
原口:新型コロナは5月8日に2類相当から5類へと引き下げられます。なぜ5類へ見直されるのでしょうか。また見直しのタイミングは世界的にみていかがですか。
矢野:新型コロナウイルス感染症が発生した頃は、ワクチンも抗ウイルス薬もありませんでした。ウイルスの病原性が高いことから致死率が高かったんですけれども、現在はワクチンや抗ウイルス薬もあります。また、オミクロン株になってから重症化率が低下したので、5類に引き下げられるのは適切かと思います。世界的にも同様の状況となっています。
原口:5類に引き下げられると、対応はどう変わりますか。
矢野:5類になると、新型コロナウイルスに感染しても自宅待機や入院の必要がなくなり、外出自粛もありません。また、入院する必要があった場合には、どの医療機関にも入院可能となります。ただし、医療費が全額公費負担ではなくなります。
原口:今は全額公費負担されている入院・検査の費用が自己負担になるんですか?
矢野:一定の自己負担を求める方向で検討しています。重症化率が低下しているので、これはやむを得ないなあと思います。
マスク着用は個人の判断へ、高齢者などには配慮を
原口:3月13日からはマスク着用が個人の判断に委ねられるということも決まりましたね。矢野:病院や高齢者施設のように重症化しやすい人々がいるところではマスクは必要ですけれども、それ以外はマスクをやめてもいいと思います。しかしですね、感染症法で5類となるまでの2か月弱の間は、新型コロナウイルスの感染者になると就業制限があって学校や職場に行けないという状況から、マスクを全面的にやめることができない可能性があります。結局、5月8日の5類引き下げまで完全撤廃は難しいかもしれません。
マスクをやめることによって、無症状の人が周囲の人々に新型コロナウイルスを拡散させる機会が増えます。そのため感染者の数が多くなって、今の「第8波」を大きく超える波が来ると思います。重症化率が低いといっても、感染者数が増えれば重症者数も増えるため、70歳以上のコロナ患者が多数入院してくると推測されます。
原口:さらに今月(2月)、文部科学省は卒業式に関して方針を示し、児童・生徒と教職員は式全体を通してマスクなしとしました。この方針に関してはどうですか?
矢野:児童・生徒も教職員も高齢者ではないので、感染者が増えたとしても実害はないと思います。卒業式のマスク撤廃は賛成です。しかしですね、高齢者や免疫不全の方と同居しているならば、その方々への感染対策を充実させておく必要があるのかなと思います。
市民生活も「ウィズコロナ」へ
原口:私たちは今後、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。矢野:市民生活も「ウィズコロナ」になり、マスク着用は不要になると思います。しかし、高齢者や免疫不全の人々を守るため、病院や高齢者施設では引き続きマスクの着用をお願いしたいと思います。そして、高齢者や免疫不全の方々は、必ずオミクロン株対応ワクチンのブースター接種をしてほしいと思います。もし新型コロナの症状があったならば、咳エチケットをお願いします。
原口:5月8日から完全にコロナ前の生活に戻るというわけではなく、ウィズコロナ、そして思いやりの心で他人を気遣うことが大事だと思いました。矢野先生、ありがとうございました。
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免責事項
今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数