緑茶成分に新型コロナウイルスの「不活化効果がある」?

カテキンに「インフルエンザ不活化効果」があるのは知られているけれど

いまだ収束の兆しが見えないコロナ禍、9月6日には静岡県内で緑茶と新型コロナウイルスに関するシンポジウムが開かれました。そこで話し合われたのが「緑茶成分にコロナの不活化効果があるのではないか」という非常に興味深いテーマ。静岡県立大学・茶学総合研究センターのセンター長、中村順行先生に詳しいお話をうかがいました。
※9月1日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
日本茶
中村先生:緑茶成分のなかには、渋み成分の「カテキン」というポリフェノールがあります。このカテキンが「インフルエンザに感染しにくくする作用がある」のは、すでに知られているところです。今回の新型コロナウイルスに対しても感染阻害が期待され、多くの研究が行われてきました。その結果、まだ試験管内の試験ではありますが、カテキン類の中のエピガロカテキンガレート(EGCG)には新型コロナウイルスの不活化効果が高いことが明らかになってきています。

牧野アナ:ヒトでの試験ではなく、現段階では試験管内での試験ということですね。 

中村先生:そうですね、残念ながらヒトでの試験までには至っておりません。

緑茶カテキンにも種類があるのですか?

中村先生:カテキンには数種類あるのですが、お茶のなかには主に4種類のカテキンがあります。エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)。その4種類の中でも、ガレート型カテキンと遊離型カテキンに分かれ、ガレート型であるエピガロカテキンガレート(EGCG)が約半分を占めています。その機能性としては、抗酸化作用をはじめ抗がん作用、抗肥満作用、抗糖尿病作用などの生活習慣病予防に関わる効果や、抗アレルギー抑制作用、そして抗菌・抗ウイルス作用など多くの健康効果を示すことが報告されています。

牧野アナ:それが新型コロナウイルスにも、効くのではないかということですね。

中村先生:はい、期待しています。ガレート型カテキンは苦み渋みが強く、口の中を非常に爽やかにする効果があるんですね。まさに、良薬は口に苦し、というところなんでしょうね。

冷茶と熱いお茶、どちらが新型コロナウイルスを不活化しやすいと考えられる?

中村先生:新型コロナウイルスに対してはEGCGが不活化作用を示します。最近冷茶がブームになっていますが、このEGCG(渋みの成分)は熱湯にはよく溶けるのですが、低温では溶けにくい特徴があります。ですので、熱いお茶で淹れた方がEGCGがたくさん溶け、新型コロナウイルスの不活化に対して効果が期待されます。

牧野アナ:そのままごくごく飲むのがいいのか、一日にどのくらい飲むのがいいとか飲み方について、中村さんはどう思われますか?
 
中村先生:ヒトでの試験はまだ全く行われていないので、どのくらい飲んだ方がいいのかなどはまだわかりません。ただ少なくともEGCGには強い不活化効果があること。また、興味深い研究として「新型コロナウイルスと唾液を混ぜた中にEGCGを入れると10秒ほどで不活化できる」というデータもありますので、どの程度の頻度でお茶を飲んだらいいのか、今後のヒトでの試験結果が大いに期待されているところです。

牧野アナ:現在の試験管での研究段階からヒトでの試験を行い、結果が発表されるまでには、まだしばらく時間がかかりそうですか?

中村先生:新型コロナウイルスは、まだ指定されたごくわずかな研究機関でしか扱えないんです。そのためなかなか被験者となってくれる方が少ないという事情もあり、まだそうすぐにはできないかもしれません……。

ストレスの多いコロナ禍、もっと多くの人に緑茶を飲んでほしい

中村先生:緑茶には他の植物には含まれないような、抗ストレス効果の高いテアニンという成分が多く含まれています。「お茶を飲むとホッとする」というのも、これはテアニンの効果です。ぜひともお美味しいお茶をたくさん飲んで、ストレスを解消しながらホッとしていただきたいなと思っています。

牧野アナ:それだけでも免疫力という意味では高めることもできますね!

中村先生:先ほど新型コロナウイルスに対しては熱いお茶がいいとお伝えしましたが、免疫力を高める場合には、むしろ低温で淹れた方が免疫力を高めてくれるんです。カテキンの種類の中のエピガロカテキン(EGC)は免疫系の働きを高めてくれますので、ぜひお茶の飲み分けをしながら楽しんでいただければと思います。

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今回お話をうかがったのは……中村 順行(なかむら よりゆき)さん
これまで、静岡県茶業研究センターでチャの育種分野を中心に研究を行い、「おくひかり、さわみずか、山の息吹、香駿、つゆひかり、ゆめするが、しずかおり」などの品種育成に携ってきた。現在は、静岡県立大学食品栄養環境科学研究院の附置センターとしての茶学総合研究センター長として茶の生産・加工、機能性、マーケティングなど幅広く活動している。
 

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