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コロナ禍、増える子どもの不登校や自殺…大人世代ができることは?

コロナ禍で増えた、子どもの不登校

子どもたちの生活がコロナの影響を受けるようになって1年半が経ちました。できる範囲でなるべく通常の生活が送れるよう、努力・工夫をしていると思うのですが、そんな中でも、不登校の児童や自殺をしてしまう児童が増えているという状況もあります。今回は「コロナ禍の子どもの不登校」について、NPO法人静岡県教育フォーラム理事長 ひげくま先生こと山下泰孝さんに「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティの鉄崎幹人とSBSアナウンサー山﨑加奈がお話をうかがいました。
※11月10日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。

今の子どもたちの様子は?

鉄崎まずは、ひげくま先生が理事長を務められている「静岡県教育フォーラム」について教えてください。

山下:不登校・ひきこもりなどの子どもや若者の相談を受け、その素因を科学的に分析し、カウンセリングや親のトレーニング、体験活動や交流合宿などを活用して、その素因からの解消を行っているNPO法人です。

山﨑:コロナ禍になって1年半が過ぎましたが、子どもたちの様子はどうですか? 

山下:学校が休校で自宅学習になり、勉強する子としない子の二極分化がはっきりしてきました。「自宅で受けられるから」と不登校の子どもがリモート授業に参加しても、日頃から勉強していないから分からなくて、よけいに内にこもってしまうという子もいます。

親の在宅勤務で家族が密になり、特に外国人家庭で虐待も現れてきています。それから大学生では、合格しても楽しみにしていた大学にも行けず、初めてのレポートや課題論文ばかりで悩み、中退や休学する学生も増えています。

鉄崎:そんな中、子どもの不登校者数が静岡県内で8年連続最多の6377人になったという記事や、子どもの自殺者数も昨年を上回っているという記事が出たりしていますよね。

山下:休校で、これまでも学校を行き渋っていた子どもたちが簡単に不登校になったということがあると思います。あと、たびたびの緊急事態宣言による経済の低迷で将来に不安を感じ、ますます希薄になっていく人間関係で孤立し、自殺を念慮する若者が増えてきたんですね……。静岡県教育フォーラムにも中学生や20歳前後の自殺念慮の相談が増えてきました。

今、何をするべき? 今後、どうしていったらいいの?

山下:人間関係が希薄なポケベル・ケータイ世代の親と更に希薄なスマホ世代の子どもたちに対して、相談員は近所の遊び集団で育ち、青年団や町内会などの密な人間関係の中で暮らしてきた世代の人たちです。もう今までの対応は通用しませんし、単にスクールカウンセラーを増やせばよいという訳でもないんです。

ポケベル・ケータイ世代の親に育てられたスマホ世代の子どもたちの心理、今の子どもたちの心理をしっかり掴み対応することが大事です。

鉄崎:今は昔のような、マニュアルはあてはまらないかもしれないですね。

なぜ、不登校や引きこもりに繋がっていくの?

山下:ポケベル・ケータイ世代からスマホ世代と、希薄な親子関係から友達関係もますます希薄になり、思春期後に自分の居場所が感じられず、容易に人を信じられず人の中に入っていけず、社会や家庭の中での「自己、アイデンティティ」が確立できず、「自己、アイデンティティ」が不安定になる。「自己、アイデンティティ」が不安定になっているから、その防衛としてひきこもって自己愛を肥大化させて、その一方で、弱い自己を強いキャラで隠し、いじめが起きたりしています。

「不安定な自己」を「安定した自己」に回復させるためには、まずは子どもたちに「共感」すること。これは今までの対応にもありました。

「そう、学校に行けないほど不安なんだね。自殺したいほど辛いんだね」とオウム返しに応え、子どもに共感することが大事です。子どもにとって親や相談した人が自分に共感してくれる、自分の存在をそのまま受け入れてくれることは、子どもの強い承認欲求が満たされ、その子の心の安定、安定した自己を回復させます。

そしてちっぽけなこと、例えばごみを拾ってくれたことででも、その場で褒めてやってください。ただ褒めるだけでは不十分で、「あなたのその行動がお父さん、お母さんは嬉しいよ」という気持ちを伝えることが大事。それを1日に3回以上はやってほしいです。

鉄崎:人間誰しも承認欲求はありますよね。それがひとりでいると満たされない。そうすると鬱屈が溜まってくることに繋がりますね。

同世代の仲間たちと群れ集う体験を

山下:不登校やひきこもりは「育っていない非認知能力」が素因です。社会を生き抜く力を育てる、そのために自然や社会の中で同世代の仲間たちと群れ集う体験をさせることが大事です。
※非認知能力とは主に意欲、自信、忍耐、自立、自制、協調、共感など心の部分である能力のこと。

鉄崎:それがまさにコロナ禍では難しいですよね……。僕は最近、心地よい空間だけでも人は生きていけるんじゃないかと思っているんです。今、心地よい空間、部屋で過ごしているのであれば、そういう道を選んで、今後社会へ出ても自分が心地よい空間にいながら生きていく。これは不可能ですか?

山下:もちろん社会に出ていくことができれば、「自分が心地よい空間にいながら生きていく」ことは可能です。しかし、彼ら(彼女ら)は人との関わりづらさから社会に出ていくことができず、「自分が心地よい空間」である自分の部屋にこもるんですね。

ヒトは本能として社会性をもった生き物ですから、同世代の仲間たちと群れ集うことを通して、仲のよい子や初対面の子、年上や年下の子どもとも関わることで、自然にいろんな目線や距離感で人と関わる術を身に着けると思うんですね。そうした体験の場がないときは、親が子どもと一緒に身体を使った遊び体験をするんです。子どもは自分をコントロールしながら他者からの攻撃的な行動に対処するなど、子どもの情緒的及び社会的発達によい影響を与えます。

無気力な子には、親の姿勢を見せることが大事。成果主義の親は、子どもが頑張ってもだめだったときに、子どもが味わう挫折感が無気力にすると思い、子ども達を挫折体験から守る過保護な姿勢になり、結果、挑戦しない心、無気力を強化させる。

それに対して、プロセス、過程を重視する親は、たとえ結果がうまくいかなかったとしても、一生懸命に頑張ったことで子どもが抱いた清々しさや充実感に目を向け、それをたたえることになり、その姿勢が子どもの諦めない心を強化させる。逆境に負けないものの見方を身につけさせることになるんです。

鉄崎:なるほど。結果よりも過程が大事ということですね! 僕は子どもたちが幼い頃から自然に触れさせ、自然から多くを学んでほしい、楽しんでほしいと思ってきました。なにか身になっていることがあると思うんだけど……。

難しいですね。本当は友だち同士で遊んでほしいんだけど、それができない子どももいますよね。それなら例えばですが、犬や猫が好きなら将来はペット関係の仕事に就こうとか、そういう道を現実的に探っていくのがいいのかなぁ。大人が子どもに理想を押しつけすぎてはだめですよね。

山﨑:今はいろんな働き方があるから、道を狭めないことですよね。

山下:そうですね、いろいろな体験をすることが大事ですね。

鉄崎:ひとりでも仕事ができる時代ですしね。

山崎:こうあるべき、と押しつけてはいけませんね。

鉄崎:そうですね。気持ちはわかるんです。僕も厳しい親だったけど、このままではいけないと反省したときがありました。

不登校に悩む子どもたち、親御さんたちへ

山下:学校に行くことだけが不登校解消ではありません。自分の将来を見定め、学校の出席認定を受けて勉強してみましょう。さまざまな体験活動を通じて不登校になる素因を解消し、学校に復帰する子もいれば、通信制高校への転入や高卒認定で、大学や専門学校に進学し、自立していく若者もいます。まずはご相談下さい。

DATA

■静岡県教育フォーラム

TEL:054-644-1304
 

今回お話をうかがったのは……山下泰孝さん
1955年生まれ66歳。旧金谷町出身。‘76年10月静大人文学部在学時に、学習塾併設のサバイバル的な活動を行う有限会社を設立、青少年たちの様々な相談・対応を始める。’95年には登校拒否の相談が入り、交流分析を中心にアドラー心理学や認知行動療法等を学び、野外活動や交流合宿等を活用してこれまでに230余名の不登校・ひきこもり等の解消を行う。
 
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パーソナリティ鉄崎幹人、大槻有沙(月・火曜)、山﨑加奈(水・木曜)
 

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