要注意!良かれと思ったことが「職場ハラスメント」に?
コロナ禍で新卒の離職率が増加?
山﨑:鉄崎さんは、若い人と接するときに気をつけていることはありますか。鉄崎:価値観の違いを理解することは気をつけています。
山﨑:部下を抱えるサラリーマンの方は、新入社員とうまくコミュニケーションをとれていますか。ハラスメントという言葉があるように、どのように若い世代の人と接したらいいのかわからない人もいると思います。ぜひ一緒に職場ハラスメントについて学んでいきましょう。今回は、人材の採用から定着支援までをサポートしている、株式会社ナナクレマの代表取締役である武友久美さんにお話をうかがいます。
この時期の新入社員は、どんな思いで過ごしているものですか。
武友:今年は超早期離職が出そうだなと思っています。新卒で入社した会社を6ヶ月以内で離職する人は、大卒も高卒も10%を超えているというデータがあります。コロナ禍で学校生活などの集団のコミュニケーションにブランクを持っている若者も多く、会社を息苦しく感じる人もいるようです。仕事に慣れることももちろんですが、まずは多様な世代が同じ職場にいることに慣れたいと思っている人も多いと思います。
鉄崎:10人に1人以上?そんな早く辞めてしまうのか。今回は、新入社員や部下との良い関係を築けるように、職場ハラスメントについてクイズ形式で学んでいきます。
武友:新入社員や就活生と関わる場面を想像しながら聴いてください。
”職場ハラスメント”クイズ
第1問
武友:あなたは新入社員Aさんの直属の上司です。少し年は離れていますが雑談はできる関係で、接する上でAさんに緊張している様子はありません。あるとき、結構大きな仕事のミスをしてしまったAさん。とても落ち込んでいたので「落ち込んでいても仕方ないから、次に気持ちを切り替えていこう!」とアドバイスしました。その時は「そうですね!」と返事があったのですが、しばらくしてまだ落ち込んでいたので、もう一言「気にしなくていいんだよ!前向きに考えた方が仕事も楽しいよ」と念押ししました。こちらの対応はハラスメントに該当するでしょうか。また該当する場合、何ハラスメントでしょうか。鉄崎:せえへん、何言ってるんですか。良い上司じゃないですか〜。
山﨑:該当しないでしょう〜。あれ、でもポジティブなことが重荷になる人もいるのかな?具体的な改善策を教えてくれない上司ということで、「ポジティブハラスメント」、略して「ポジハラ」だと思います。
武友:正解です。前向きさを押し付け、「早く元気になりなさい」と相手の思考を無理やり変えさせようとするのが良くないらしいです。私もこれは気をつけないといけないなと思います。
鉄崎:じゃあ何て言えばいいの?
武友:落ち込んでいることに対して原因を聞いてあげる。「どうしたら前向きになれるのか」などは時間が解決するものもあります。「すぐに立ち直りなさい」など、すぐに変わらなきゃいけないと強要するのが良くないです。
第2問
武友:新入社員のAさんを歓迎するため、20代の社員と交流できる食事会をセッティングしたところ、とても楽しんでくれた様子。食事会での写真を見せてもらうと、普段の制服からは想像できない個性的な服装だったので、「おしゃれだね!会社でももっと個性を発揮して」と伝えました。こちらのコメントはハラスメントに該当するでしょうか。また該当する場合、何ハラスメントでしょうか。鉄崎:これは何となく該当する気がするね!パーソナルハラスメント?もしくは、オシャハラ?
武友:鉄崎さん正解です!パーソナルハラスメント(パーハラ)です。個性的なことや、人と違うことにあまりコメントをしてはいけなくて、おそらく「おしゃれだね」がちょっとセクハラにも近いのかなと。
鉄崎:なるほど。褒めてるんですけどね〜。
山﨑:変に褒めると、何かしらのハラスメントに当てはまってしまいそうですね。
第3問
武友:Aさんが連休中に帰省したとのことで、会社にお土産を買ってきてくれました。「普段、お世話になっているお礼です」とコメントを添えて休憩室に置かれていたので、「とても気が利くな!」と思った矢先、Aさんが「地元に戻りたいので退職をしたい」と申し出てきました。まだ入社してたった2カ月。何とか引き止めたいと思い、「社会人としてまだまだこれからなのにもったいない」「うちの会社にいた方がいい」と1時間説得しましたが、次の日、Aさんは職場にあらわれませんでした。こちらの対応はハラスメントに該当しますか。また該当する場合、何ハラスメントでしょうか。
鉄崎:これは今までの流れだとハラスメントに該当します!
鉄崎:何ハラスメントかな〜?
山﨑:「”うちの会社が一番”ハラスメント」(笑)
鉄崎:「トメハラ」
武友:結構シンプルです。1時間拘束して説得しているところがポイントです。
山﨑:タイム?時間?「タイハラ」?
武友:これは「パワハラ」です。ひっかけ問題でした!最近は「ロジカルハラスメント」というのがあって、ロジックで理詰めするのもハラスメントに該当します。
山﨑:辞めたいと言ったら引き留めも長いことせず、理由を聞いてからこちらの意見を言い、そして尊重することが大事なことでしょうか。
武友:いろいろあると思いますが、上司が拘束するとハラスメントになってしまうため、直属の先輩や年齢の近い人を引き合わせてコミュニケーションをとってもらうなど、役割分担することがいいですね。
鉄崎:大変勉強になりました。最後に部下を抱えるサラリーマンの方にメッセージをお願いします!
一度立ち止まって考えてみる
武友:関わりすぎ、関わらなさすぎ、の度合いが難しい時代ですが、自分が良かれと思ったことでも、相手は「同じ感覚ではない」ということを疑うことが大切だと思います。とある会社の新入社員から聞いた話なのですが、先輩社員と食事を含む交流の機会があり、食事は「黙食」という常識を守ってご飯を食べていたら、「おとなしいね」と言われてショックだった、と言っていました。私たちからすると「黙食」は一時的なコロナ禍の対策だという認識でも、友達との楽しい時間を奪われた若者の中には、常識になってしまった人もいるんだなと思いました。
全部を理解して正しい対応をするのは難しいと思いますが、地雷を踏む可能性のある、個人の感覚の差が生まれそうな話題のときは「どう伝えるか」と、一度立ち止まって考えてみるのが良いと思います。
鉄崎:武友さん、ありがとうございます。またぜひ教えてください。
今回お話をうかがったのは……武友久美さん
株式会社ナナクレマ 代表取締役
1988年静岡市生まれ。前職はタリーズコーヒー店長。7年勤めた同社を退職後、25歳で(株)ナナクレマを設立。静岡県内を中心に新卒採用活動を行なう企業に対するコンサルティングや研修、イベント等を提供。また静岡初の常設型就活カフェNANA-SHOKUを運営。専門学校や高校のキャリア講師も勤める。
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