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「問題ない」という認識が既に古い!? 無自覚で行われている危険も!就活ハラスメントとは

100種類以上!? さまざまなハラスメント

最近、「ハラスメント」って耳にする機会が多いですよね。先日、「厚生労働省は、就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメント防止対策の強化に乗り出す」というニュースもありました。今回は「就活ハラスメント」について、日本ハラスメントリスク管理協会・参事で、社会保険労務士の榎本あつしさんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※4月13日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:そもそも「ハラスメント」にはどういう定義があるのでしょうか?

榎本:ひとことで言うと、嫌がらせのことで、いじめも含まれます。見た目や性別もそうですが、それ以外にも考え方や上下関係などの関係性を含めたものを根拠にして、相手の尊厳を傷つけるようなことをハラスメントといいます。

牧野:立場が強い人から弱い人へというものですか?

榎本:今もそれが多いのですが、最近は部下から上司だったり、同僚だとか仲間内でのハラスメントも増えています。例えばみんなで無視をするとか、IT機器が使いこなせない上司への嫌がらせなども増えてきています。

牧野:今、ドキドキしている40代、50代が多いと思います(笑)。いろんなハラスメントがありますが、どれくらいの種類があるのですか?

榎本:それこそ、日々増えているので、100種類以上はあるかなと思います。たとえば最近よく言われるのが、「リモハラ」「ワクハラ」「キメハラ」です。

「リモハラ」は、リモートワークハラスメント。テレワークなどのときに「きれいな部屋にいるね」など、個の侵害。また、ずっとカメラの前に居ろ!などの過剰な干渉もハラスメントになります。

「ワクハラ」は、ワクチンハラスメント。「ワクチンは打ったの?打ってないの?」というところで差別すること。接種に関しては個人の意思ですので、接客業などの業務上必要なものでない限りは、その有無で差別的取り扱いは本来NGです。

「キメハラ」は、鬼滅の刃ハラスメント。昨年ヒットしたときに、「鬼滅の刃を見ていないの?」と押し付けたりするような嫌がらせのこと。これは話題性先行のハラスメントではありますが、同様な感じで流行や話題性に対しての知識や感覚の違いを、職場に持ち込んでの差別などは結構あります。分かりやすい例として覚えておきましょう。

牧野:テレワークのとき、「部屋きれいだね」などとつい言ってしまいそうです......。

榎本:コミュニケーションは、時代の価値観のなかで形成されるものではありますが、プライバシーに踏み込まれたと気にされることが増えています。褒めたつもりでも、ハラスメントになるのはよくあることです。

牧野:4月1日からすべての企業を対象に「パワハラ防止法」が義務化されましたよね。

榎本:実は大企業といわれるところは2年前からなんですが、小さい会社も含めた全企業に今年の4月1日から「パワハラ防止法」が適用になりました。法律があるので気にしている企業も増えています。

さまざまな就活ハラスメント

牧野:今回は、主に就活ハラスメントを取り上げていただきますが、まずは「就活セクハラ」はどういったものでしょうか?

榎本:就職活動をしている人と企業側では立場の優位性が違います。内定を出すことや次に進めることを条件に、例えば男女の関係を迫ってきたり、選考すると言いつつ関係のない情報や写真などを求められることが問題視されてきています。

牧野:実際に事例としてあるんですよね?

榎本:厚生労働省の調査によると、「4人に1人」がそのような被害にあったことがあるとのことでした。2019年に住友商事の24歳の社員が酒で酔わせて乱暴をした事件、2020年にリクルートの30歳の社員が睡眠薬を飲ませてわいせつな行為をした事件などの犯罪にもなっています。これらの例はかなり重いのですが、ちょっと誘われたとかプライバシーのことを聞かれたなど軽いものも含めてということです。そしてここで問題なのが、加害者の多くが若手社員という傾向があることなんです。

牧野:加害者も、若ければOB訪問などされる機会もありますしね。

榎本:立場的に年代が近いことと、ちょっと前までは逆の立場だったのに、自分が偉いと勘違いをしてしまう……社会的責任の自覚がないことが問題のひとつといわれています。

牧野:あとは「オワハラ」というのもありますよね。

榎本:「オワハラ」は「就活終われハラスメント」の略で、内定を出した企業が、学生に就活を終わらせるように強制することです。本当は自由なものを制してしまうんです。

牧野:いろいろな企業を受けるのは学生の権利ですが、私たちの時代も内定が出たあと海外旅行へ連れ出されたなどの話がありましたよね。

榎本:内定者確保のためにいろいろ企業も考えています。昔はそれが問題とは思っていなかったんでしょうけど、よくよく考えてみるとこれはマズイよねと、世の中に出てくるようになってきたのが今の状況です。

牧野:厚生労働省は、今後強化していく方針なんですよね?

榎本:そうです。明確に大きく4つの方針を決めています。

1. 厚生労働省から学校に職員を派遣して出前講座をひらく
2. 学生へのヒアリングの強化
3. 企業側への指導。問題という自覚がない場合も多い
4. 文部科学省と連携してさまざまな周知啓発

牧野:そのように国も進めていますが、学生も被害に遭わないためには今後どのような対策をしていけばいいでしょうか?

榎本:まず学生には、「自分がそのような被害に遭う可能性がある」ことを知っておいて欲しいです。具体的には、「個別に面談がしたい」「食事の場でどうですか?」と誘われたり、個人の携帯やSNSで連絡がきた場合は、怪しい可能性があるので用心してほしいです。

牧野:会社からの公式メールではなく、個人のメールから来たときですね。まず、そういうときに相談する場所はありますか?

榎本:各都道府県単位の相談窓口があります。ネットで「ハラスメント対応相談窓口 静岡労働局」などと検索していただくと、労働局の相談窓口の電話番号が入ったページや、リーフレットのPDFのダウンロードなどが表示されます。また、学校にはより相談しやすいかと思いますので、就職関連の担当の方に、悩む前に相談しましょう。

牧野:個別に話したいなどといわれ、怪しいなと感じたときは相談してみて下さい。企業側はこれからどうしていけばいいのでしょうか?

榎本:まずこれも、「知らない」という可能性があります。今までは大丈夫だと思っていたことが、本当はマズイんだということを認識するためにも社内で研修を行う。厚生労働省からパンフレットなどがでているので、社員、特に就職関係の方に周知していくことをまずやって欲しいです。個人ではなく、会社の責任になりますので。

牧野:今、本当に時代の変わり目ですから、感覚もアップデートしていかないといけないなと改めて思いました!
今回お話をうかがったのは……榎本あつしさん
一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会 参事、法律アドバイザー。社会保険労務士法人HABITAT 代表社員。帝国ホテルグループ、人材派遣会社を経て、社会保険労務士として独立。応用行動分析学を用いた組織行動マネジメントを得意とし、主に人事評価制度コンサルタントとして活動。『A4一枚評価制度』など著書多数。

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