【静岡市の人口減少問題】衝撃的だった2050年の推計値。30年間で14万7000人減少! 好評の婚活支援は是か非か
(市川)今日は人口減少に関する話題です。
(山田)先週の静岡新聞に出ていましたね。
(市川)1月30日付の「ニュースを追う」という特集コーナーに記事を載せました。
(山田)静岡市の人口が減少しているという話で、「政令市最小」「減少率も高く」といった見出しが付いてましたね。改めて解説してください。
(市川)政令指定都市は全国に20都市あります。その中で今、静岡市が最も人口が少ないんです。
(山田)「そうなの?」という感じがしますが。
(市川)さらに今回、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2050年の将来推計人口をまとめました。それによると、静岡市の人口は、2020年の69万3000人から、2050年には54万6000人にまで減少すると試算されました。政令市で最少です。さらに30年間の人口減少率は政令市の中で3番目に高いという結果が出ました。
(山田)これは静岡から人がどんどん出ていってしまっているという話ですか?
(市川)それだけではないです。人口の自然増・自然減、社会増・社会減という言葉を聞いたことはありませんか?
(山田)あります。
(市川)自然増・自然減というのは、亡くなられた方と生まれた方の差し引きの数です。それがプラスであれば自然増、マイナスであれば自然減と言われます。静岡市の場合は自然減の数がとても大きいんです。
社会増・社会減というのは、移り住んでくる方と他の地域に出ていってしまう方の差し引きになります。静岡市は自然減ほどではありませんが、社会減も比較的大きい。これらが合わさって人口が減っていくよという話なんです。
(山田)僕は静岡生まれ静岡育ちということもあるんですけど、熊本や岡山よりは多いのかなと思っていました。
(市川)政令指定都市になったのは岡山のほうが後でしたが、人口の数はその後に抜かれた格好ですね。先日、岡山に旅行に行きましたが、街の勢いを感じました。駅前などはすごく栄えているイメージでした。
人口減少は実は全国的な問題なんです。全国では、2020年からの30年間で2146万人減ると推計されています。日本の人口が1億人を切るのも時間の問題です。しかも、日本だけでなく、人口減少は世界の先進国共通の課題でもあります。日本よりも人口減少が深刻なのはお隣の韓国なんです。
(山田)そうなんですね。
(市川)韓国統計庁の調査によると、日本より人口減少のペースが速く、2022年現在約5167万人の人口が50年後には約3622万人まで減ると推計されています。
(山田)人口減少の対策は何かあるんですか?
全国平均より高い静岡市の未婚率
(市川)今回の記事では、静岡市特有の人口減少の要因として、3つの要素を挙げています。それが「高い未婚率」「地価の上昇」「投資の遅れ」です。この中で、高い未婚率について着目してみたいと思います。50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を示す「50歳時未婚率」というのがあるんですが、静岡市の調査では、同市の女性の50歳時未婚率は2000年の5.5%から2020年には17.2%まで上昇しています。静岡市は全国平均よりも未婚率が高いんです。
(山田)そうなんですか。
(市川)数字上は静岡市特有の現象とも言えると思います。15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した「合計特殊出生率」という数字があるんですが、2013年~2021年の静岡市の平均は1.44で、県平均の1.54、同じ政令市の浜松市の1.59と比べて低いんです。つまり子供を生んでいる数が他都市よりも少ないということになります。静岡市の人口減少の要因として、女性の未婚率が高く、出生率が低いことがデータからいえるという話です。
未婚率を減らす、つまり、結婚する人を増やすための施策としては、「賃金の引き上げや雇用の安定化」「働き方の柔軟化」「子育てへの不安をなくすこと」などが考えられますが、最近では、行政が直接、婚活を支援する取り組みも目立っています。
静岡市は2014年から「しずおかエンジェルプロジェクト」という結婚支援事業を展開していて、婚活イベントを開催しています。静岡市のホームページに過去の実績が掲載されていますが、「プラモデル婚活」や「トーキョー女子との婚活ツアー」など、なかなか個性的な取り組みが並んでいます。
(山田)僕も以前、農業男子と街中女子の婚活パーティーの司会をやりましたよ。
(市川)過去の婚活事業の一覧には「カップル組数」も掲載していて、結構成功率が高いんです。静岡県も「ふじのくに出会いサポートセンター・しずおかマリッジ」という結婚支援拠点を県内市町と合同で開設していて、開設2年で35組のカップルが結婚したそうです。行政が支援していると安心感があるようで、意外と好評なんです。
(山田)確かに。
行政の婚活支援は思想の押し付け?
(市川)ただ、行政がいわゆる婚活に取り組むことの是非については議論があります。結婚とか、恋愛って、極めて私的な領域ですよね。そこに、行政が踏み込むことはどうなんだという意見があるんです。
結婚するのが当たり前だ、などと個人が発言するのは自由ですけど、公の機関が言うことは違和感があるということなんです。結婚することが幸せだというのはなんとなく社会的な合意があるとは思うのですが、結婚しない幸せだって認めるべきではないかというのも社会の多様性のあり方です。公的機関が婚活に手を出すのは民業圧迫だという考え方もあります。
(山田)そこに税金を使うことに対して反対の声があるということですか?
(市川)税金を使うこともそうですが、やはり思想の面が大きいですね。結婚することが正しい、当たり前だという思想の押し付けになるのではないかという考え方なんです。ただ、そこに手を打たないと子どもの減少に歯止めがかからないので、行政としては痛し痒しではあると思うんですが…。
(山田)行政も押し付けているつもりはないと思うんだけどなぁ…。
(市川)ところで、静岡市の人口は70万人というイメージがないですか?
(山田)あります。
(市川)今の静岡市は旧静岡市と旧清水市が合併して2003年に誕生しました。その後、旧蒲原町、旧由比町を編入しています。この旧2市と旧2町を足した数字で見ると、人口のピークは1990年の73万人でした。そこから減少が続き、今は67万人ほどです。
僕が静岡市政を取材していた頃は、静岡市は2025年時点で人口70万人を維持するということを公的な目標に掲げていました。後にその旗は降ろすんですが、それぐらい70万人というのは大事にしていた数字でした。それが今回2050年に54万人になるという推計が出て、なかなか衝撃的でした。
(山田)先ほど「地価の上昇」とありましたが、静岡市は土地や家賃なども高くないですか?
(市川)僕も静岡市で引っ越しを繰り返して来ていますが、家賃の高さにはいつも驚きます。東京、大阪、名古屋などの都市圏の物件情報をたまに見ますが、静岡市に比べて安いところもあります。中心街近くの物件だと駐車場を別に借りなければならず、その負担も大きいです。
(山田)「投資の遅れ」とも言われてるんですよね。
(市川)この辺りは「まちづくり」の話になります。先ほど、70万人維持の旗を降ろしたという話をしましたが、それは田辺信宏前市長の時代のことです。推計をみるとなかなか難しいということで、定住人口にはこだわらず、仕事に来ていたりする「交流人口や関係人口」を含めて県中部地区全体で人口を維持していけばいいと軌道修正していました。
一方、昨年4月に就任した難波喬司市長は、あくまで定住人口にこだわる、と明言しています。これはなかなか難しい話ですが、公言したからには、ぜひ、結果をだしてほしいと思います。
(山田)静岡市の今後の人口減少対策に注目ですね。今日の勉強はこれでおしまい!
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