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上司部下の間だけじゃない!改めて気をつけたい職場のパワハラについて

企業が「組織として」パワハラに取り組むには?

4月から中小企業でも法改正により、職場におけるパワーハラスメント対策が義務化されました。今回は、改めて気をつけたいパワハラ対策について、一般社団法人日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※4月18日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:大野さんは、企業内カウンセラーとして長年の現場経験を生かした人間関係改善スキルをお持ちで、コミュニケーション、ハラスメント、メンタルヘルスに関する研修や講演を、大手企業などで年間150件以上行っていらっしゃいます。改めて、ハラスメントとはどのようなものなんでしょうか?

大野:シンプルに言うと、「大人のいじめ」と言えると思います。相手が嫌がることをしないというのが前提ですが、嫌なことは人によっても違うので、想定できないこともすごく多いんです。基本的には多様性を認めず、人格を否定するような言動が当たると思います。

牧野:大野さんが代表理事をされている日本メンタルアップ支援機構には、これまでにハラスメントを受けているといった方からの相談はありましたか?

大野:企業内のカウンセリングを請け負っているのですが、パワハラについては常にある相談のひとつです。上司からが最も多いんですが、取引先、関係先、同僚、職場仲間から受けているケースも最近では多くみられます。

牧野:取引先との間でもパワハラがあるんですね。

大野:やはり、利害関係があったりすると、そこで派生してくることがあるんだと思います。

牧野:大企業では2年前から義務化されていた職場のパワハラ対策ですが、この4月から中小企業でも義務化されるようになりました。各企業は、具体的にどういうことに取り組むことになったのでしょうか?

大野:基本的には、「ハラスメント禁止」をわかりやすく説明することが大事だと思います。やはり、組織としての方針があると思うので、わかりやすいルールで明確にして設定し、周知していくことが大切です。ただそれだけではなく、具体的な指導の在り方、かかわり方についての教育も必要。ハラスメントはコミュニケーションのかけ違いにより起きることが多いので、コミュニケーションスキルの向上訓練なども取り組んでいくべき課題だと考えています。

牧野:同時に進めていかないといけないことがいろいろありそうですよね。今まさに研修の時期という会社も多いと思いますが、指導をする際に気をつけるべきことはどんな点でしょうか?

大野:「このくらい言わなくてもわかるだろう」という意識で関わると、相手に伝わらない部分が出てきてしまうので、明確に言葉で伝えることが大事だと思います。あとは、スモールステップで指導してくことも大切です。

例えば、電話のかけ方に関しては、時代背景や環境によって普段電話慣れしていない、経験値が浅い人に「これくらいのことも、できなくてどうするの?」という感じで言ってはいけません。自分にとっては簡単なことでも、未経験の人には難しいことかもしれないので、手厚く指導していくことが必要かなと思います。

牧野:確かに最近の20代前半は、固定電話に慣れていない人が多いですよね。

大野:大学生などの学生を中心に話を聞くと、親しい友人とでさえ音声ツールや電話を使うことがほとんどないようです。メッセージでのやり取りが基本という人にとって、リアルコミュニケーションとして音声ツールを仕事で使うとなるとハードルがかなり上がってしまうんですよね。

牧野:細かいことでも明確にしっかり言葉で伝えてあげることが大事なんですね。ただ、ひとつひとつ細かいことまで全部言っていると小言をいっているようで、それもパワハラになりそうです(笑)。

大野:時間的な問題もあって、現場ですべてを伝えるのは難しいと思います。ですので、要点を押さえることと、一方的な押しつけにならないように、相手の意向や気持ちを聞く場面を設けることが大事なんじゃないかと思います。

牧野:最近、傾聴という言葉を耳にしますが、上司もしっかり部下の言葉に耳を傾けることが大事なんですね。

大野:大事ですね。ただ、指示や指導は「これやりたくないんだね、じゃあやらなくていいよ」とはいかないので、切り分けていくことも大事ですね。指示命令系統は明確に伝えることや指導することが大切です。そして相談されたときは、おっしゃっていたように傾聴でしっかり受け止める。その両面が必要ですね。

牧野:なるほど! 全部聞いてしまうと指示ができなくなってしまいますもんね。

大野:組織は指示命令系統で動いているので、あまりに気を遣ってしまうと業務が立ち行かなくなる可能性があります。

パワハラを受けないためには

牧野:一方で、自分が職場でパワハラを受けないために大事な点はありますか?

大野:やはり報連相です。社会人のルールとして基本的なことだと思いますが、相手が何を考えているのか、どういう状態なのかが分からないと、人は気持ちにゆとりがなくなってしまうので、お互いに今の状況を分かり合うために報連相を徹底する。それから疑問に感じたら、言葉に出して確認することも大事だと思います。

牧野:パワハラを受けないためのポイントにしても、指導する際のポイントでも、コミュニケーションがベースにあるんですね! 最後にみなさんにひとことお願いします。

大野:ハラスメントをしてはいけないと気負い過ぎると、何も言えなくなってしまいます。コミュニケーション不足がハラスメントの原因にもなりますので、わかり合える関わり方を身に付けていただきたい。自著『よけいなひと言を好かれるセリフに変えるの言いかえ図鑑』(サンマーク出版)を読んでいただければと思います!
今回お話をうかがったのは……大野萌子さん
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ(R)資格認定機関)代表理事、公認心理師。防衛省初のハラスメント教育担当。企業内カウンセラーとしての現場経験を生かした、再現性の高いコミュニケーション・ストレスマネジメント・ハラスメントの分野の研修を得意とする。著書、メディア出演多数。

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