野菜の高騰だけじゃない!気になる秋の食品値上げラッシュ

この秋、相次ぐ食品の値上げ

あまり聞きたくない話題かもしれませんが、ズバリ今回の話題は秋からの食品などの値上げについて。経済ジャーナリストの堀浩司さんに解説していただきます。
※9月23日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
相次ぐ値上げ……
牧野アナ:まずは食品の価格が高いですね。白菜が1/4カットで200円近くするのではないでしょうか。

堀さん:野菜価格が高騰していますよね。静岡新聞でも、先週の静岡市内のスーパーでは長雨の影響などで、レタスが前年同期比1.7倍の1玉298円、ミニトマトは1.4倍の1パック298円と高値がついていました。これらの生鮮食品は今後、気候変動で価格が下がることもありますが、長期的な値上げが予想されるものが多くあります。

長期的な値上げが予想されるもの

堀さん:まず、食用油は今年に入ってなんと4回目の値上げが2021年11月に予定されています。家庭用食用油は、昨年に比べ5割近く値上がりした商品もあるんです。食用油の値上げでマヨネーズは7月から10%程度、マーガリンも10月から最大13%の値上げ。食用油を使った家庭用冷凍食品も、11月から4~8%の値上げを予定しています。

それから国際的な小麦や大豆の価格も高騰。家庭用小麦やパスタ、和洋菓子、豆腐も値上げ、さらに家庭用レギュラーコーヒーも20%程度値上げになります。

牧野アナ:私は納豆が好きなのですが、大豆の価格が上がるということは納豆の価格にも影響がありますか?

堀さん:当然影響があります。食料品以外では、燃料価格に応じて毎月見直しが行われている電気料金があります。中部電力の場合、標準的家庭の11月分を7,026円と試算していますが、1月分と比較すると970円の値上げです。

それから値上げが何度も繰り返されているタバコですが、タバコ税の増税にともない10月から1箱30~40円の値上げ。1カ月に10箱吸う人だと、年間5,000円近くの負担増になります。

価格上昇の原因は?

堀さん:食料品の値上げについては、パーム油、大豆、小麦、コーヒー豆などの原料価格の高騰が主な要因です。原料価格高騰の要因は主に2つあって、ひとつは異常気象と呼ばれる天候不順による生産量の減少。コーヒー豆ではブラジルの雨不足と霜、小麦や大豆はアメリカやカナダの異常高温と乾燥、菜種はカナダの夏場による高温で、いずれも生産量が減っているため高騰しています。

ふたつめの原料価格高騰の要因は、新興国の経済発展による食料品需要が拡大していることがあげられます。さらにトウモロコシやパーム油などが、食用よりバイオ燃料としての需要が拡大して食料事情に影響を与えています。

牧野アナ:燃料需要になるから、食用のトウモロコシなどの値段が上がってしまう……。

堀さん:新型コロナの影響で海上輸送が停滞したことや、船舶燃料の原油価格高騰で輸送コストがこれまで以上にかかっている、といったことも原料価格の高騰につながっていますね。

牧野アナ:原因が多すぎて、1つ解決しただけでどうにかなる話ではないことがよくわかりました。

家庭の経済に与える影響は?

堀さん:家計への影響額としては、1カ月1,200~1,300円の負担増といわれています。やはり新型コロナの収束時期が見えず、消費者の節約志向が強まるばかりのときに、価格の値上げでさらに財布のひもが固くなりかねないという懸念があります。

企業側としては、販売価格を変えずに内容量を減らすことで、消費者が変化に気づかず消費マインドを維持できる可能性のある「実質値上げ」(値上げが見えないことから「ステルス値上げ」とも呼ばれる)で乗り切りたいという思惑があったんです。

牧野アナ:同じ商品を買ったつもりが、分量が減っているわけですね。

堀さん:ただ2018年消費庁の調査では、消費者は内容量の減少に気づきこれを不誠実ととらえて「実質値上げ」の商品を買わない傾向がみられる調査結果がありました。今回、販売価格そのものを上げる「ダイレクト値上げ」が実施される経緯がこのあたりにあります。

消費者の節約志向ですが、昨年は巣ごもり消費の恩恵で、スーパーやディスカウントストアの業績は各社とも好調でした。しかし、2020年2月以降、消費者の経産省商業動態統計では前年割れが目立っています。

価格上昇の流れはまだまだ続きそう?

堀さん:でも一方で、流通大手のイオンではプライベートブランド「トップバリュ」のおよそ3000品目について、物流の効率化によって秋以降も値上げしないと発表しています。それから「無印良品」を展開する良品計画は、生産工場の効率化などのコスト削減で、9月から約200点、最大2,000円の値下げ実施しています。

ですが流通業界の努力にも限界があります。世界的異常気象、新興国経済発展による需要拡大は、これからも今以上に拡大していく可能性があります。やはり、原料価格の高騰はさらに続くと考えられます。

牧野アナ:経済ジャーナリストの堀さんとして、解決策はありますか?

堀さん:大袈裟と思われるかもしれませんが、やはり根本的な解決は、海外諸国に比べて低い日本の食料自給率、あるいはエネルギー自給率の改善に尽きると思います。

牧野アナ:なるほど。それと同時に企業も給料を上げてもらいたいですね! 今後、給料が上がる見通しはないですか?

堀さん:アメリカの場合はコロナ禍でも賃金が上がっているんです。そのおかげで経済も回復してきているので、日本も貯めこむだけでなく企業が還元してほしいと思います。

牧野アナ:内部留保を切り崩してでもという感じですかね。

堀さん:はい、今はそれが必要だと思います。

牧野アナ:わかりました。 今回もありがとうございました。
今回お話をうかがったのは……堀浩司さん
経済学は私たちの暮らしが良くなるためにある学問、私たちみんながわかる経済のお話を講演、ラジオ、テレビ、大学教員、執筆で。アルバイトをしていたラジオ局で学生時代に音楽番組のパーソナリティを務めて以来、その出演歴は40年! 大学常任理事として大学経営にも、税理士として企業経営指導にも携わる。
 

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