食料品・燃料費の値上げが止まらない!政府の物価高騰対策はどうなっている?
牧野:政府が物価高騰対策を掲げていますが、これはどういうものなんでしょうか?
堀:現在政府が行っている物価対策には、主に2つのものがあります。1つが原油価格高騰に伴うガソリン補助金です。全国平均のガソリン価格が170円/L以上になった場合に、石油元売り各社に補助金を支給し、ガソリン価格の高騰を抑える施策です。現在40円/L前後を支給し、ガソリン価格を170円前半に抑えています。
牧野:本来だったら210円ぐらいになっていたということなんですね。
堀:それからもう1つが、地方創生臨時交付金の拡充。原油価格物価高騰対応分として新たに1兆円が追加されています。この地方創生臨時交付金というのは、各自治体の判断によって様々な事業に充てることができるもので、静岡県には109億円が交付され、各市町では低所得世帯などへの給付事業や、小中学校の給食費の増額を助成する費用、水道料金をはじめとする公共料金の負担軽減などに充てられるということです。
牧野:なるほど。今は参議院の選挙期間中なので、このあたりの物価高騰対策も大きな争点になってくるわけですよね。
堀:そうですね。公示前日の6月21日に与野党9党首の討論会がありました。冒頭、一番訴えたいことの質問に対して、9党首中7党首が「物価高騰から暮らしを守る」と答えています。立憲民主党は、輸入小麦の政府売渡価格の即時引き下げ、そして消費税率5%への引き下げ。国民民主党は、10万円のインフレ手当と消費税やガソリン税の軽減、共産党もやはり消費税5%への減税と、最低賃金1500円への引き上げ。
物価対策としてほぼ全ての野党が一致して打ち出しているのが、消費税率引き下げです。
対する連立与党の自民党公明党に消費税率引き下げの考えはなく、物価・賃金・生活総合対策本部を発足させて、物価対策に取り組んでいくものとしています。ただ各党とも財源についての具体的な説明はまだ示していないので、参議院選挙後半戦では財源を含めた
実現性のある具体的な青写真を示す必要があると思います。
牧野:なるほど。与党サイドの自民公明は、物価・賃金・生活総合対策本部を発足させてとのことですが、これまでに話し合いは行われているのでしょうか。
堀:政府は6月21日に岸田首相を本部長とするこの対策本部の初会合を開きました。会合では物価高騰対策として、電力会社が実施する家庭向けの節電ポイントサービスに参加することで1世帯当たり一律2000円相当を支給するポイント付与制度の新設が決まりました。
肥料が値上がりしている農家に対しても、値上がりしてる肥料の使用抑制を促すとともに、生産コストの上昇を政府が補う支援制度の創設が検討されています。
それから食料品値上げのポイントになっている小麦について。政府が民間に売り渡すときの価格は4月と10月に改定されるんですが、次回10月から価格上昇を抑える方向で行うということが決まっています。
牧野:なるほど、堀さんはどんな印象をお持ちになりましたか?
堀:まだまだ具体的なところは打ち出せておらず、参議院選挙前の駆け込みの発表のような気がしました。より具体的な対策というのが必要だと思います。
牧野:物価高騰対策も各党少しずつ違いますので、有権者はそのあたりもしっかり見ていく必要がありそうですね。
堀:はい、今、私達の生活に一番直結しているところですからね。
岸田首相が掲げる「新しい資本主義」について
牧野:少し話変わりまして、岸田首相がずっと掲げている「新しい資本主義」。これについて参院選では特に何も聞こえてこないようにも感じるんですが……。堀:そうですね、岸田氏の「新しい資本主義」というのは、今まで経済の富が働く人たちに適正公平に分配されておらず、富める者がますます富む経済になっていたのを、賃上げを通じて適切に分配し消費を活発にしよう、それによって経済を好転させ、令和版の所得倍増を目指すというものなんです。
岸田氏はさらに富裕層にとって有利であった金融税制について、有利すぎるので課税の強化を図り、そこで得られた税収を中間層の負担軽減に充てるとまで発言しています。それが財界をはじめ富裕層の反発を招き、参議院選挙では鳴りを潜める結果となっているんではないかと思いますね。
一方で5月のイギリス訪問では、日本の家計貯蓄1000兆円を投資へ導き市場を活性化させる資産所得倍増プランなど、金融業界へのリップサービスと取れる発言まで飛び出しています。日本人は株式投資などをあまりしないと言われていますが、これは金融知識が乏しいからではなく、身の回りに投資で上手くいったという人が少ないからという単純なことだと思います。アメリカの株価がここ30年で10倍になっていますが、日本は30年前の株価をまだ取り戻していないという構造的な原因があるということなんです。
岸田氏はご自分のことを「聞く力を持つリーダー」とおっしゃっているので、今こそ物価高で喘ぐ私達の声を聞くリーダーとなってほしいと思います。
牧野:この「新しい資本主義」の意味合いも、はじめは分配と言っていましたが、だんだん投資の方に動いてきてるような感じですかね。
堀:そうですね、そう言わされている感じですね。岸田首相が掲げた「新しい資本主義」で適正公平な分配というのは私たちが望んでいることなので、この物価高を乗り越えられるように実現してほしい。即、物価・賃金・生活総合対策本部で給料の引き上げが実現できるよう議論を進めてほしいと思います。
牧野:どうもありがとうございました。
今回お話をうかがったのは……堀浩司さん
経済学は私たちの暮らしが良くなるためにある学問。「みんながわかる経済のお話」を講演、テレビ・ラジオなどのメディア、大学で発信。学生時代にアルバイトをしていたラジオ局で音楽番組のパーソナリティを務めて以来、その出演歴は40年! 大学常任理事として大学経営にも、税理士として企業経営指導にも携わる。
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