
(市川)静岡市葵区の繁華街を対象にした「客引き行為等の禁止に関する条例」は、施行から2年半余りが経過し、飲食店への客引きの数が減っています。市の調査によると、条例施行前に対象地区を1時間ほど見回った際は、50〜60人が客引きをしていましたが、現在は数人程度。静岡市は条例の効果が出ているとみています。それでも、新型コロナウイルス5類移行後初めての夏休みを迎えて人出の増加が見込まれるため、関係機関は客引きへの警戒を続けています。
(山田)静岡市のいわゆる「おまち」で、客引きの条例の効果が出てるんじゃないかというニュースですね。僕、最近は結構、静岡の繁華街で夜にご飯食べたりするんですが、体感としてそんなに減ってるイメージないんですけども。
(市川)そうですか。僕の体感としてはだいぶ減ったなっていう感じですよ。ピークがこの条例を作ろうとしていた2020年頃、コロナの直前ぐらいですかね。その頃って、お揃いのジャンパーを着たり、お酒の銘柄の前掛けみたいなのを着けたりした若い人たちがスクランブル交差点やデパートの前に大勢いて。
(山田)ありましたね。
(市川)3、4人で歩いていると「お店探してますか」などと必ず声をかけられてましたね。今、そういう人はほとんどいなくなっていて。客引き行為というのが非合法ってことになったので、現在の客引きは私服なんですよ。
(山田)どこまでやって良くてどこからはダメみたいな線引きはあるんですか。
(市川)今回取り上げている静岡市の条例に関しては、客引き全てを禁じているんです。
(山田)「お客さん居酒屋お探しですか、うちどうですか〜」もダメなんですね。
「ただ声をかけるだけ」もダメ
(市川)元々客引きを取り締まるものとして一番初めにあったのは「風俗営業法」なんです。風営法は、風俗店への客引き行為を取り締まっています。風営法では、一発アウトで逮捕されることもあるので、静岡市でそうした客引きを最近はほとんど見ていないです。逮捕されて懲役刑、ないしは罰金刑みたいな結構厳しく取り締まる法律があります。もう一つ、客引きを取り締まるものとして「県迷惑行為等防止条例」があります。この県が作った条例も客引きを禁じていますが、条例の中に「衣服を捕まえたり進路を塞いだりつきまとうなどの執拗な客引き」っていう文言があるので、声をかけただけではセーフとされていたんです。
2020年にできた静岡市の条例は、ただ声をかけるだけでも客引きはダメだということで新しく作られました。これは商店街や飲食店の人たちの声を基に作られた条例なんです。
僕は当時、静岡市政を担当していたので、条例を作るときにずっと取材していました。商店街や飲食店を経営している人たちが、自分たちのお店の前で「入ろうかな」と見てる客を客引きに奪われてしまうということがあって困っていました。元々客引き行為はあまり良いとされていなかったので「静岡市で条例を作ってくださいよ」と声を上げた。それで市議会議員が動き出し、一緒になって市と話し合いを重ねて条例を作ることになりました。浜松市に続いて県内では二つ目の条例で、2021年から施行されています。
(山田)でも、そのときはコロナ禍ですから、そもそもそんなに客引きがなかったのでは。
(市川)ちょうど重なったんですよね。だから客引きの数が減っているのは条例の効果なのかコロナの影響なのかが見極められなくて。今、週末などはだいぶ街中に人が戻ってきていますよね。客引きは完全には撲滅していないので、これからどうなっていくのかっていうところがあります。
市の条例の適用は「イエローカード」止まり

(市川)ただ、静岡市の条例ができたと言っても、罰則があまり強くないんです。勧告をして、その後に、店舗名を市が公表するとか、違反を繰り返した場合は罰金5万円を科すというような内容になってるんですが、ちょっと緩い。また、2年半経っても一度もまだ勧告より上の罰則が適用されていないんです。勧告止まり、イエローカードだけしかない。今のところレッドカードは1枚も出ていないんです。
県迷惑防止条例や、風営法違反での客引きの摘発、逮捕といったニュースはちょこちょこ出ています。だから、そちらの効果もあるのではと思うんです。
(山田)当然、客引きはなくなった方がいいと思いますが、「うち、安いよー」とか、街でああいう声が聞こえてたりするのを何でもかんでも取り締まっちゃうのはどうなのかっていうのは、ちょっと話を聞いてて思ったんですけども。
(市川)強引な客引きっていうのが、ダメなんですよね。客引きが禁止される動きがある1番の理由は、それによって治安が悪くなるということです。あとは、普通に歩けなくなるということがあります。
新宿の歌舞伎町なんかを歩くと、ちょっと怖い人たちが近づいて話しかけてきて、嫌じゃないですか。そういう街じゃなくて、自分でお店を選べるようにしたい。店側にしてみたら、せっかく美味しいものを出しているのだから正当な勝負をしましょうよ、っていうのが客引きをなくそうとする理由であると思うんですよね。
客引きを「利用しない」意識も必要
(市川)静岡市が客引きの条例を作るときに「しない・させない・利用しない」と言っていて、市民に対しても利用しないことを呼びかけていました。客引きの人はまだゼロにはなっていないので、そういう人たちが話しかけて来てもそれを利用しないことも大切だと思います。(山田)われわれの意識も必要だということですね。今日の勉強はこれでおしまい!