内臓脂肪とおなかまわりの脂肪を減少。体脂肪が2〜3割減った報告も
大正製薬は4月8日に日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」を発売すると発表しました。医師の診断のもと処方される薬ではなく、ドラッグストアで購入できる点にも注目が集まっています。薬剤師で医療ジャーナリストの吉澤エリーさんにSBSアナウンサー影島亜美が話を聞きました。
吉澤:リパーゼという酵素を抑制して脂肪の吸収を抑え、便と一緒に排泄する作用があります。これによって内臓脂肪とおなかまわりの脂肪を減らせる薬です。
臨床試験では1年間の服用でおなかまわりが約5センチ、内臓脂肪が20〜30%減ったという報告もあります。
吸収を抑制した油は便と一緒に排泄
影島:内臓脂肪20%減少とはすごいですね。海外にも同じような薬があるんですか?吉澤:一般名は「オルリスタット」、海外では「ゼニカル」といった名前で使われています。以前から個人輸入や海外から持ち込む形で使っている人はいました。
服用2日目から便と一緒に体に吸収されない脂肪分(油)が出て、3日目にはおならと一緒に油が漏れ出てしまうという話も聞きます。1日10回トイレに行った人もいるようです。
影島:漏れ出る油はコントロールできるものですか?
吉澤:かなり難しいですね。おならをすると知らない間に油も出てきます。寝ている間におならと便を含んだ油が出て、ベッドが黄色くなってしまうこともあります。職場や外出先でスカートやジーンズが汚れてトラウマになった人もいるようです。
影島:最初は休日に使いたいですね。
基礎疾患がないメタボ予備軍向け
影島:この薬は誰でも服用可能ですか?吉澤:メタボ予備軍の人が肥満解消のために使う薬で、飲みながら生活習慣や食事を変え、運動するのが基本です。糖尿病や高血圧、脂質代謝異常(高脂血症)などの基礎疾患がなく、痛風ではない人という条件があります。
摂取すると1日に100〜200カロリー程度、ご飯茶碗1杯分ぐらい減らすことができます。私の周りに薬を個人輸入して、みるみる痩せた人もいますが、服用をやめたらリバウンドします。
影島:そうなんですね。
吉澤:「アライ」はどの薬局でも買えるわけではありません。研修を受けて販売資格を取った薬剤師がいる薬局で購入できます。
健康な人で3カ月以上、生活習慣の改善に取り組んでいることも条件で、購入後は体重の記録が必要です。6カ月過ぎても効果が得られない場合は「中止して医師に相談してください」となるので、購入にはハードルが高い面がありますね。
まずは休日に試してから
影島:服用すると油が出てくる点がすごく気になりました。オムツで防ぐことはできますか?吉澤:防げますが、かなりの不快感があると思います。脂肪分の多い食事を減らしたとか、日常生活が難しくなるため薬をやめたという話を聞きます。
影島:安易に手を出すと大変なことになりかねないですね。
吉澤:おならをしなくても、知らない間に脂肪便が出てくる場合もあります。オムツや尿漏れパッドを当てればシミは防げると思いますが、臭いが気になるので、まずは休日に試してみるのがいいんじゃないかと思います。
影島:テレワーク期間や休日に始めるのがおすすめですね。ありがとうございました。
※2024年3月19日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
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免責事項
今回お話をうかがったのは……吉澤エリーさん
薬剤師、医療ジャーナリスト。1969年12月25日福島県生まれ、1992年東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)卒業。医療記事を中心に多数メディアに執筆。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」ニュース(Business Journal)