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【小学校教諭の不適切指導】先生に責任?組織の問題?先生擁護の声も…

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「小学校教諭の不適切指導」。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。
 ※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。


(市川)5月23日、静岡市教育委員会は静岡市清水区の小学校に勤務する教諭が、授業中に席を離れた児童に対して、粘着テープを使って太ももを椅子に固定するという不適切な指導を行ったと発表しました。記者会見を開いた静岡市の教育委員会担当者は、体罰に該当する可能性が高いとの認識を示しました。

(山田)最初にニュースで聞いたときに、「粘着テープで固定」というこの言葉のインパクトが強くて驚きました。

(市川)僕はその当日デスクを担当していて、夜6時ごろに、午後8時から静岡市教育委員会が会見を開くという話が突然舞い込んできまして。何があったのかを聞くと、どうやら児童を粘着テープで固定したようだと。「これはすごい大きな話だな」と当初は思ったんです。

このニュースが出たときには全国的な話題になり、ネットニュースなどにも掲載されました。ニュースに対する感想や意見など色々なコメントが出ていたんですが、結構、教員を擁護する意見が多かったんです。

僕の第一印象では「酷いことをした事案だな」と思ったのですが、意外とネットの世論の中では教諭を擁護する意見があり、これは結構複雑な事案だと感じましたね。

「適切な指導」とは何なのか

(山田)このニュースに対して、5月29日の静岡新聞でまた続報が出ましたね。

(市川)28日、教諭や校長らが保護者説明会を学校で開き、その後、静岡市教育委員会が再び会見を開きました。今度は詳細な説明に加え、その教諭が日常的に「うるせー」などの荒い言葉を使ったり、泣いている児童に対して「ピーピー泣くんじゃない」という発言をしたりしていたという新たな事実も浮かび上がってきました。こうした発言も市教委は不適切であったと認めています。

(山田)この続報でさらに気になったところは、教諭が繰り返し席を立つ児童に対して「どうする、縛るか」と笑って話しかけて、児童は「うん」と答えた。そしてテープで固定した後、児童が立ち上がろうとすると、その姿を見て女性教諭は「逆効果じゃん」と話し、クラスの中に笑いが起こったーというところで。何かちょっとおかしな空気感があると。

(市川)この描写を聞いたときに、そこまで悪質性はなかったのかなと思ったんですよ。何度も離席してしまう児童に対して、先生は席に着くように日常的に注意はしていたと思います。それでも着席しなかったときに、一つの手として、何か冗談めかしてやった印象があったんですね。

テープの貼り方もぐるぐる巻きにして動けなくしたのではなく、太ももに貼って椅子にペタッと付けている。そのテープは児童が立とうとしたときに取れたらしいんです。それで先生が「逆効果」と冗談を言って笑いを誘った。

「笑い」というのは難しくて、それによって子供が傷つく可能性もあるので、これが良かった指導とは言えませんが。

(山田)児童が不適切な指導を受けたことを親に話さなかったことについて、本人の「親に心配をかけたくなかった」というコメントもあります。それは、先生にそういうことをされたことではなく、自分が席を立ってしまうことに対して、「あんたちゃんと学校で授業受けてるの」っていう心配をかけたくなかったんじゃないかというふうにも捉えられて。

(市川)そちらの意味の可能性もありますよね。これは本当に難しい事案で、ネットニュースに寄せられたコメントでは「じゃあ先生はどうすればよかったの」といった、この場合における適切な指導とは何だったのかという声が多いんですよ。

先日新入社員と話す機会があって、このニュースについてどう思うか聞いてみたんです。今20代前半ぐらいの社員が子供の頃も、言うことを聞かない児童が数名いるクラスっていうのは多々あったそうで。

先生がベテランか若手かに関係なく、一人話を聞かない子がいると(その雰囲気が)だんだんクラス全体に波及していったと。ある学校では、地域の女性がボランティアのような形で学校に来ていて、落ち着きがない子の見守り役をしていたそうです。すごくいい取り組みだと思いました。

今、教員が「足りない」「多忙化」と言われていますが、解決するには教員を増やし、たくさんの子供をたくさんの大人の目で見るしかないと思うんですよ。

1人の先生に対して責任をかぶせるのではなくて、「静岡市教育委員会はどうなの」「教育委員会に予算を出す静岡市はどうなの」「国全体の教育予算ってどうなの」というところまで考えないといけない問題だと思いますね。

マスコミとして反省も。「ニュースの本質を考え続けたい」


(山田)ここ数年こういった先生の体罰などのニュースがどんどん出てきています。その中で、今回の清水区の小学校の話は一つのターニングポイントになるんじゃないかなと。ちゃんと(ニュースの)裏もみんな読もうよ、と。

(市川)教育委員会はこういったことをきっかけに、何が問題だったのか、システムの問題なのか個人の問題なのかを含めていろいろ検証して、これから対策をしてもらいたいです。

一方僕らマスコミも、表面的な事実だけで「先生がこんなことやりました」と大きく取り上げてはいけないなと。僕が当時デスクをやっていて、社会面の準トップにする判断をしたのですが、今思うとちょっと大きすぎたかなという反省はあるんです。最初のインパクトにちょっと引きずられすぎたのかなっていう気もします。

(山田)やっぱりこの「粘着テープで椅子に固定」というワードが強かったんですよね。

(市川)同じような事象は、おそらく他にもあるだろうなと。昔、僕らの時代には指導の一環としていっぱいあったことが、今の基準で言うと、行き過ぎと思われるようなことになる。

そういったことが今だんだん可視化されるようになって問題になり、僕らもそれに飛びついてニュースにしてしまうことがありますが、「本質が何かっていうことを考えないといけないんだな」と勉強させられました。

(山田)本当にそう思います。「僕の頃は水なんか飲ましてもらえなかったよ」とか、自分の経験を話しても今は通用しないなって思ったりしています。今日の勉強はこれでおしまい!

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