全国高校野球選手権静岡大会は12、13日、2回戦が行われた。身長184センチ、最速145キロの大型左腕、内藤優央(まお)投手(浜松北部中出)を擁する静清は、今春の選抜出場の常葉大菊川に2―7で敗れた。
春に左の広背筋を痛め、万全の準備ができなかった内藤投手に本来の姿はなく、五回途中6安打6失点でマウンドを降りた。「けがは言い訳にしかならない。(背番号)1番をもらったからには抑えないといけなかった」と自分を責めた。
「詰めが甘かった」
春の県予選上位校決定戦(4月5日)で静岡と対戦した際、草薙球場で最速145キロをマーク。ストライク先行の圧巻の投球を見せ、「リリースの感覚、力の出し方が分かってきた」と手応えをつかんだ。ところがこの時に広背筋を痛めてしまった。
最初は痛みの原因が分からず、治療に時間を要した。「リハビリ中はボールを軽めに投げながら、指先の感覚を鈍らせないようにやってきた」。投球が可能になったのは大会約1カ月前。約2週間前の練習試合でようやく実戦復帰し、今大会1回戦で1イニングのみの〝試運転〟を経て、2回戦の大一番を迎えた。
「不安はなかった」と言うが、いざマウンドに立つと「気持ちばかり走ってしまって、セーブできなかった。キャッチャーの要求するところに投げられていれば良かったけれど、自分の詰めが甘かった」
長田仁志監督は「いつもの半分くらい(の出来)。相手は足があるから、四死球で走者を出すと苦労することは分かっていた。145キロを出した時に(出力に)体がついていかなかったんだよね。練習ではいいボールを投げていたんだけど、試合勘が戻らなかった。(菊川相手なので)力が入るのは仕方がない」と話した。
大橋捕手「大胆にいけなかった」
大橋一輝捕手(磐田豊田南中出)は、内藤投手が本調子であっても菊川を「勢い」で打ち取るのは難しい相手だと思っていた。
「ベストな状態でない中で打者を抑えるために、いろいろ考えてやってきた。本調子ならもう少しアバウト(な要求)でも良かったかもしれない」
この日の内藤投手は制球がままならず、大橋捕手も厳しい要求を躊躇した。
「(死球を)当てたら流れが(相手に)いってしまうので、大胆にいけなかった。相手が外を狙っていたので、違う球(内角球)を見せられれば良かったけれど。シングルヒットで送球間に進塁されて〝二塁打〟になり、ヒット1本で2点入ってしまう要因になった。それも想定して練習をしてきたけれど、目の前のアウトを取ろうと集中してしまい、思うようにいかなかった」
救援した佐野恭太郎投手(南伊豆東中出)が内角をうまく使って残り4回を1失点に抑えただけに、五回までの展開を悔やんだ。
「うちのエースは優央」
太田俊太朗主将(磐田福田中出)は「うちのエースは(内藤)優央しかいない。信じて守っていた。どんな形でも優央がマウンドに立っているというのは絶対でした」と納得している。
3年生22人のうち18人が県内出身者。中学時代からなじみの西部地区出身選手も多く、結束力がこのチームの強みだった。
「3年間、一人も辞めることなく続けてきた。ベンチに入れなかった選手も一緒に練習してくれて、今日の応援もめちゃくちゃ力になった。彼らの頑張りがあってこそ、自分たちがプレーできている」と太田主将は目に涙を浮かべながらも笑顔で振り返った。
そんな仲間の思いを背負ってマウンドに立った内藤投手。「将来、なりたい投手像は」と問われると「チームを勝たせる投手に」と迷わず答えた。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)