【川勝知事の給与減額条例案可決】「コシヒカリ発言」問題にようやく終止符? 知事の発言巡り新たな火種も!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「川勝知事の給与減額条例案可決」。先生役は静岡新聞論説委員長橋本和之です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年10月17日放送)
 
 (橋本)2021年10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で発したいわゆる「コシヒカリ発言」を巡り、川勝平太知事が自らのペナルティとして給与返上を表明したまま実行されていなかった問題で、県議会は13日の9月定例会最終本会議で、知事給与減額条例案を付帯決議を付けて可決しました。

(山田)以前、月曜日のこのコーナーを担当している静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川さんが、コシヒカリ発言で給与が返上されていない問題について解説をしてくれました。そこからまた動きがあったということですね。

(橋本)一応決着したということで、今日取り上げさせていただこうかなと思います。

経緯をおさらいしますと、コシヒカリ発言というのは、2021年10月に参院補欠選挙が行われた際に、川勝知事が浜松での応援演説で発した発言です。この補選は、浜松市を地盤とする元県議の無所属新人候補と、前御殿場市長の自民党新人候補の接戦となって、川勝知事は元県議の方の応援に入ったんです。元県議を持ち上げて、対抗馬の前御殿場市長をちょっと貶めるというような意味で、「浜松には静岡県の食材のうち3分の2以上があるが、御殿場にはコシヒカリしかない」などと発言をしていたということです。

(山田)今でいうと、ディスるようなことを言ったわけですね。

(橋本)知事は不適切な発言だと批判を受け、その言葉を撤回して謝罪するという状況に追い込まれました。さらに同年11月、県議会で自民党会派などから知事に対する辞職勧告決議案が提出され、それが可決されるという事態に発展します。

これは法的拘束力がない勧告ですので、知事は辞職しませんでしたが、反省の意思を示した上でボーナスと12月の給料合わせて約446万円を返上する意向を示しました。ただ、給与とボーナスを返上するためには、条例案を出してそれを通さないといけなかったんです。

その条例を出そうと、水面下で議会と調整をしましたが、議会としては給料減額ではなく辞職を求めていたので、結局議案を出してもおそらく通らないだろうということになり、知事はそこで諦めるわけです。

新聞でも、事実上議案の提出が困難になったということは何度も報じていますが、知事自ら県民に説明したり、あるいは、通らなくてもとにかく議案を出し、それが否決されたりというような手続きを踏まなかったんです。結局尻すぼみで、いつの間にか沈静化してしまうという状況になり、その後はずっと放置されたような形になってました。

今年7月に知事の所得公開があり、給与やボーナスを満額もらっていて2022年も結局返上していないことが、改めて注目されました。そこでまた「返上すると言ったのに、こっそり全額もらっているじゃないか」という批判が沸き上がったということです。

知事の責任は当然、一方で議会側にも釈然としない

(山田)僕らは、知事が返上しますよと言ってても議会が受け付けないというようなやり取りが水面下であったことを知らなかったから、このニュースが出たときに「いや知事もらってるやん」というふうになりましたけどね。そういう流れがあったということですね。

(橋本)知事は今年7月にそれを指摘されたときに、自分の仕事をきちんとやることが償いだということで、給与を返上することはもう考えてませんというような発言もしているんですけど、おそらくネットやいろんな形で批判が高まったことで、放っておけない状況になったと。

(山田)いわゆる炎上してましたよね。

(橋本)改めて、給与を返上するための、給与減額条例案を議会に提出し、審議してもらう形になったということです。それが先日議会に認められ、11月の給料の一部と12月の給料、ボーナスを合わせて当初予定した446万円分を返上することになりました。

(山田)議会はこれでいいよということだったんですか。

(橋本)はい。ただこの審議の過程でも、知事の説明の仕方を巡って批判がありました。「議会に働きかけたけれども条例が通らないので出すのは諦めました」というような説明をしたときには​、​「それは知事が自分の責任を転嫁してるんじゃないか」という声があったりして、やり取りの中で相当激しい批判を受けました。

(山田)そういう経緯があったんですね。

(橋本)そういう議論の末、何とか今回認められたということです。なので、知事も途中から「私が議会に議案を出しても通らないというふうに思い込んだので、自分の責任でなかなか出しませんでした」という説明に変えるなどして、議会への配慮を見せたんです。

さらに、知事はこれまでもいろいろ舌禍がありましたから、議会側はちゃんと猛省してこういうことは2度とないようにしてくださいという付帯決議を付けて議案を通した。そういう流れになっています。

(山田)どうなんですか、この2021年からの流れを見て。

(橋本)そもそも、先ほどの知事のコシヒカリ発言は、どうしようもない発言じゃないですか。選挙応援で場を盛り上げるとかウケを狙うとか、そういうことだったと思うんですが、知事としてふさわしくない言葉を発した。これについて知事に責任があるのは間違いないと思います。

あともう1つは、議案が出せなくなったときに「議案は出せませんでした」というような説明をしなかった、あるいはその議案を出して否決されるというような手続きを踏んでいなかった。そうしたことへの責任も知事にはあると思います。

ただ一方で、議会の方もいろいろ批判をしましたけど、知事が議案を出せなくなった状況というのは議会も承知していたわけです。それから1年何カ月もの間ずっと放置した状態で、その間、なぜ議案を出さないのかは追及していないですよね。だから議会側も、ここに来て批判をまた始めたっていうのは、ある意味ネットで炎上した状況に便乗したという側面もあるんじゃないかなと思います。

(山田)重箱の隅をつつくような、そんなやり取りに付き合ってるような感じもしますね。

(橋本)それで議会が紛糾し、審議に時間を長く取られたりしているので、両者に対して、何をやってるのか、ほかにもっと審議すべきことがあるんじゃないかという批判があるのも事実だと思います。

(山田)川勝知事には、リニアが大きな問題としてもありますよね。

(橋本)リニア問題で、全国的には静岡県知事がJRに無理難題を言って、リニアの工事を止めているというような誤解に基づいた批判もあります。それが、ネットで炎上する1つの要因にもなっていました。そこに乗っかって、また政局に持ち込んだというところも、何か釈然としないなという思いがあります。

攻防はまだ続く可能性も…


(山田)川勝知事の任期はあとどのぐらいなんでしょう。

(橋本)2025年の6月頃に知事選があると思いますが、4期目の任期を半分折り返しています。

自民党は、知事が当選したときから14年間、ずっと対立を続けてきている立場です。次の選挙を見据えて、知事に非があれば、そこは徹底的に追求し、川勝知事の5選を実現させないようにしたいという意図はあるんじゃないかなと思います。

(山田)知事本人がどういうふうにするかは、わかりませんね。

(橋本)本人が5期目に出馬するかどうかも1つの焦点になりますね。いずれにしても先日、知事の別の発言を巡って、新たな火種ができたりしているので、またちょっと攻防があるんじゃないかなというところです。

知事が選挙前に、「(次の知事選には)もう出ません」となればそれで終わるかもしれませんが、こうした攻防が選挙まで続く可能性はあるなと思います。

(山田)まだまだ知事と県議会を見ていかなきゃいけないというわけですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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