
【副知事の仕事】島耕作の“副知事就任”で佐賀県議会が紛糾⁉ 静岡県の副知事人事はどうなってるの?

(市川)3月18日の県議会2月定例会最終本会議で、元静岡県地域外交監の増井浩二氏を副知事に選任する人事案が同意されました。4月19日付で副知事に就任する増井氏は「県職員と退職後に大学で働いた経験を最大限に生かす」と決意を語りました。県議会で過半数を占める最大会派の自民改革会議と川勝平太知事の対立が深まる中での就任となります。
(山田)4月に静岡県で新しい副知事が就任するという話ですね。
(市川)静岡県でいえば、知事はいろいろな意味で目立っていますが、副知事の名前を知っている県民って、ほとんどいないのでは…。
(山田)静岡市長の難波さんが副知事だった時はギリギリ…。
(市川)そうですよね。副知事は県民にとって馴染みが薄いのですが、一方でとても重要なポジションです。会社でいえば副社長。県知事の補佐役です。
2006年に地方自治法が改正されて、補佐役というだけでなく、政策や企画を司ること、職員の事務を監督することなどが加えられ、権限が強化されました。
知事と同じ特別職なので一般の県職員とは異なる立場ですが、「事務方のトップ」という言い方が実態に近いのかなと思います。

(山田)選挙で選ばれるわけではないんですよね。
(市川)県の事業について最終決定権は知事にありますが、すべての事業を知事が細部まで把握するのは難しい。副知事が最終的に決定する事案も多々あるので、我々にとっても重要な取材先の一つになります。
(山田)僕はいろんなイベントでMCをやることがありますが、県知事が来られない時に副知事がご挨拶したり、テープカットしたりしていますよね。
島耕作の副知事就任、何が問題だった?
(市川)今回、どうして副知事をテーマにしようと思ったか。静岡県の新しい副知事の件もありますが、実は佐賀県から興味深いニュースが入ってきたからなんです。山田さん、「島耕作」って知ってますか。
(山田)はい。漫画の島耕作ですよね。
(市川)その漫画の主人公、島耕作が昨年11月に佐賀県の副知事に就任したらしいんですよ。漫画の島耕作は課長から始まり、社長、会長と出世していくサラリーマン物語。その島耕作が今度は副知事になって、行政マンとして手腕を発揮する。
これは実は佐賀県のシティプロモーションの一環なんです。佐賀県庁では「副知事 島耕作の執務室大公開展」を開催したりして、佐賀県のPRに島耕作を活用しています。面白いですよね。
ただ、興味深いニュースというのは、この島耕作の副知事就任のことではありません。この島耕作の副知事就任が佐賀県議会で問題視されたというニュースの方です。
佐賀県の自民党の県議が「議会の同意を得ていないじゃないか」と議会の常任委員会でやり玉にあげたんです。「就任のあいさつがない」「議会軽視だ」などの発言もあったと、地元のマスコミが報じていました。
(山田)えー!

(市川)このニュースを見た時、最初は冗談かなと思いました。なかなかセンスのある県議だなと。島耕作の副知事就任は昨年11月ですが、私がそれを知ったのはこの議会でのやりとりがニュースになってから。宣伝効果抜群のやり方だなと思いました。
ところが、現地の報道を見ていると、この県議はどうやら“マジ”らしいんですよね。本気で怒っていた。
(山田)ネタではなかった。
(市川)このコラボには4500万円の事業費がかかっているそうです。「議会の同意を得ていない」ということに加え、コラボ事業の議会説明が発表の直前だったことに対して県議は怒っていたらしいです。そう聞くと県議の言い分も分からなくはないですよね。
静岡県議会でもよくある、県民に発表する前に県議に事前に説明するのが筋だ、というやつです。税金4500万円を使うという予算に関しては議会の議決事項ですから。
最終的には、佐賀県の自民党県議はほこを収めたようですが、とても興味深いニュースでした。
静岡県で副知事を最も長く務めたのは…
静岡県の副知事は任期の4年で退任するのが通例になっていますが、静岡県で異例ともいえる2期8年務めた人がいます。ご存知ですか。昨年4月に静岡市長になった難波喬司さんです。難波さんは国土交通省の官僚から2014年に副知事に転身し、過去最長の8年務めました。
中央省庁の官僚が起用されるケースは全国的にも多いんです。県の仕事は国の政策をいち早くキャッチする必要があるので、官僚出身の人は「国とのパイプ役」として重宝されるのです。
ちなみに静岡県の人口は全国で10番目ですが、その下の11番目以降の自治体をみると、茨城県、広島県、京都府、宮城県、新潟県と、いずれも現在、官僚出身の副知事がいます。国とのつながりを求めているんでしょうね。
副知事って何人いるの?
(市川)静岡県の副知事について話を戻します。静岡県の副知事は現在2人。出野勉さんと森貴志さんです。今回は出野さんが4月18日に任期満了を迎え、県職員OBの増井さんが就任することになります。今回も県職員出身の方の2人制になる。(山田)静岡の副知事は基本的に2人体制なんですか?

(市川)静岡は1人の時もあったし、3人の時もありました。この副知事の体制を巡って、かつて川勝知事と県議会が大揉めしたことがありました。
2006年の地方自治法改正で静岡県は条例を改正し、副知事の定数を2から3に増やしました。ただ、あくまでもこれは条例上の定数で、静岡県は副知事2人制を維持していました。
そんな中、2009年に就任した川勝知事が2012年、静岡で初めて副知事を3人にしようと動いた。総合計画の推進と県政の諸課題に迅速に対応するには副知事体制の強化が必要、との理由でした。
ただ、当時から県議会で過半数を握っていた自民系会派が「3人にする大義名分が乏しい」として反対し大揉めとなりました。
結局その時は副知事3人制は実現しませんでしたが、その2年後の2014年、2期目に突入していた川勝知事が再び副知事を3人制にしたいと言い出した。
川勝知事は2期目の選挙では100万票以上を獲得して大勝していました。当時の県議会には「川勝知事とケンカするのは得策ではない」という判断があった。2014年に3人制を認め、その時に就任したのが現静岡市長の難波さんだったんですね。
川勝知事は当時「防災と経済に力を入れる」として、防災の専門家として国交省から難波さんを招き、経済の専門家として財務省から官僚を呼び、もう1人は県職員出身の方という県政史上初の3人制となりました
(山田)強いメンバーに見えますよね。
3人制の復活は…
(市川)その後、3人制はしばらく維持されましたが、2019年に終わりを告げます。(山田)理由は?
(市川)2019年7月に土屋優行副知事(当時)が退任する時に、知事と自民党の関係は最悪になっていた。自民は「土屋氏を再任するなら3人制を維持してもいいが、新しい人ならば3人制を認めない」と知事サイドに伝えたと当時の静岡新聞は報じています。
こうして再び2人制に戻りました。川勝知事の頭には今も「3人制」はあると思いますが、自民党との現状の関係では3人制を復活させるのは難しそうです。
官僚出身の人がいるなら…
(山田)市川さんは3人制の方がいいと思いますか。(市川)3人制の県はそれほど多くありませんが、官僚出身の方がいるならば3人制もアリかなと思います。
静岡は国との関係もあまり良くないとされていて、難波さんがやめて以降、官僚出身の方がいない状況が続いています。
3人のうちの1人が官僚出身、もしくは民間の方であれば多様性という意味でも良いのでは。
もちろん副知事の給料は私たちの税金で払うことになります。静岡新聞にはたびたび登場しますから、新聞記事を通じて副知事の動向をチェックしていただけたらと思います。
(山田)副知事は、県知事が来られないイベントで挨拶するだけではないということですね。今日の勉強はこれでおしまい!
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