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【地方分権】改革への姿勢でリーダーの力量分かる?静岡県の川勝平太知事、石川嘉延元知事、鈴木康友前浜松市長の政治を振り返る

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは、国会が推進してから今年で30年が経過した「地方分権」。先生役は静岡新聞論説委員長の中島忠男が務めます。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(中島)国から地方へと権限、財源の移譲が進み、分権改革は進展したとされますが、静岡県民の実感はどうでしょうか。地方分権の熱は冷めてしまった印象です。

(山田)6月13日の静岡新聞「視座」の欄に中島さんが書かれた記事で、地方分権が取り上げられていました。

(中島)知事や市町村長にとって、地方が生き生きとした地域になるためにはどうしたらいいかを考えるのは非常に政治家としてやりがいがあり、その政治家の力量が如実に出ると思います。国や省庁の言うがままに自治体を経営することは比較的しっかりやってれば、スムーズにいきます。ところが各地域ならではの政治をやろうとすると、分権にしっかり向き合って、権限を最大限に活用してやっていかねばならず、力量が問われます。

(山田)地方分権って言われたのは1993年頃、もう30年前ですか。

(中島)石川嘉延元静岡県知事を入庁式で最初に取材した時、前途洋洋の職員を前に「皆さんが定年を迎えるころ、静岡県はないかもしれない」と述べられたんです。本当にびっくりしました。石川さんは非常に自治論に精通されていて、地方分権を熱心にやられていましたが、「そのぐらいのつもりで自治体経営をしっかりやらないと皆さん駄目ですよ」という鼓舞をしました。このことは鮮明に覚えています。

(山田)中島さんにとって石川さんってどんな知事だったんですか。

(中島)先ほどの言葉に象徴されるように、自治体のあるべき姿みたいなものを本当に一生懸命考えていた堅実な方でした。ある意味、今の川勝平太知事と政治の進め方については好対照と言えるかもしれないですね。

(山田)「視座」の中ではもう1人リーダーが出てきますね。鈴木康友前浜松市長です。

(中島)インタビューしたことがあるんですが、康友さんならではの自治体経営についての考え方を非常にしっかりと答えていただきました。区制の変更など、ベースとする経済界のバックアップをきちんと固めた上で取り組んだ成果は大きいと思います。大学の研究の集いなどに識者として招かれて、講演もされてました。非常に学ぶべき点が多かったという気がします。

(山田)さて川勝知事でございますけども。

(中島)川勝さんは経済史を研究されてきた、いわゆる学者さん。川勝さんならではの遷都論、首都機能移転だとか国土のあるべき姿みたいなものを、確固たる理念や研究成果として持っていらっしゃる。ただ、石川さんや康友さんとは少し方向性が違います。実利的な部分と、理念的な部分って言ったらいいんでしょうか。川勝さんは後者で、非常に構想も大きく、目指すべき姿も壮大です。

小渕恵三元首相が国のあるべき姿を論じるときに、「富国有徳」っていうことを語りました。そのネタ元は川勝さんなんです。小渕さんにとって川勝さんはブレーン。そういう意味ではその当時から国の政策決定の中枢にいて、一緒に考える立場にあった知事ですね。

(山田)その他のリーダーとの違いはどんなところに感じますか。

(中島)石川さんと川勝さんを比較すると、石川さんが新しい政策みたいなものを出したという​情報​を掴んだとき、担当課に行くと基本的にはそのシナリオの紙が全部できている。だから担当課に聞けば原稿を書けるんですね。

川勝さんの場合は、就任当初の話ですが、ある政策を打ち出したときに「すごいな、そんなことできるのかな」と思って担当課に行くと、担当課から逆取材を受けるんですよ。「知事はなんて言ったんですか。それってどういう方向性なんですか」って。それをリーダーと言っていいのか暴走と言っていいのか悩ましいですが、そのくらい政治家としてのやり方は違っています。

発想力が豊かで、学者としてのいろんなネットワークもあって、いろんな考えを出す。だから、県行政のトップとしては、部下はついて行くのが大変だったと思います。

(山田)他にも県政を取材してて、今だから言えることはありますか。

(中島)川勝さんに一度、携帯電話の履歴を見せてもらったことがあるんですけど、首相経験者にも結構な頻度で電話していました。だから早い段階で情報は入ってくるんだと思います。

普通の市町村長や知事は自民党の中枢とやり取りするとき、県議会議員や国会議員を介してアポを取ったりするんですけど、川勝さんは独自のルートがあります。そのため、普通なら「お願いします」っていう相手である県議会とよく喧嘩しますよね。携帯履歴から見る限りは、もう自民党の中枢とは、日常的にやり取りできる関係性はあるんですよね。

政策実現には部下の協力が必要


(山田)それって地方のリーダーとしてはすごいことじゃないんですか。

(中島)そうですね。ただ、理念と国とのパイプがあるだけでは自治体経営というのは立ち行かない。発想豊かな政策は、その人の右腕となる職員や議員さんらいろんな方の協力があってこそ実現するという論点もあるんです。だから、石川さんがそれだけ実情に精通されていてしっかりできていたのは、しっかりした部下がいたっていうのもあります。

川勝さんは7月で4期目も折り返しです。5期目に挑戦するかはわかりませんが、部下たちがどれだけ川勝さんを引き続き支えているのか。「分権」をキーワードにして見ると、政治家の立ち位置がわかるんじゃないかなという気がします。

(山田)今日はかなり裏話までしていただきました。中島さんは番組開始当初からご出演いただきましたが、担当していただくのは今回がラストとなりました。ありがとうございました。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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