
(高松)今日取り上げるトピックスは未来のクルマです。先日、自動車の最新技術や移動の未来をアピールする展示会、ジャパンモビリティショーが東京で開催されました。過去最多の475社・団体が参加し、静岡県内の企業も存在感を示しました。今日は電気自動車の未来や空飛ぶクルマの実現可能性について考えます。
(水野)お願いします。
(高松)前身の「東京モーターショー」を含め、長く歴史のあるイベントです。2年に1回開催していますがコロナ禍で1回休んだため、今回4年ぶりに開かれました。名前も「ジャパンモビリティショー(モビリティは「乗り物」の意味)」と改め、車だけじゃないよ、「未来の乗り物」を考えていくんだよっていうイベントに衣替えしました。
(水野)名前もモビリティショーに変わり、展示内容も変わったんですね。
(高松)今回の目玉はやはり「空飛ぶクルマ」でした。陸を走る車だけじゃなくて、もう車の空間は空に広がっていくよということでですね、スズキやスバルのコンセプトモデルや、ホンダのジェットとか、エアモビリティって言うんですけど、空を飛ぶことを前提にしたモデルの実機や模型がたくさん登場し、非常に注目を集めていました。
(水野)高松さんは実際モビリティショーに行って、いろいろ見てきたと。
(高松)そうですね。100万人以上が来場したイベントなんですけども、外国人も多く来ていました。各社のブースにオーロラビジョンというか、ものすごい大きなビジョンがあって、映像や音楽に合わせて車のコンセプトを大画面で紹介するなど、非常に近未来的な雰囲気の会場でした。
空飛ぶクルマがもたらす未来とは
(水野)静岡新聞の記事が手元にありまして(10月29日付)、「モビリティショー、一般公開」ということで空飛ぶクルマの写真が載っています。結構大きな円盤型みたいなのが写真に写っていますが、こんな車が空を飛んじゃうんですかね?(高松)大きさ、形は各社がそれぞれ検討しています。浜松市に本社があるスズキは、スカイドライブというベンチャー企業と協力して2024年に空飛ぶ車の製造開始を目指していて、今回、模型も展示されていました。
現在、国内メーカーが作った空飛ぶ車を2025年の大阪・関西万博で飛ばそうという話が進んでいて、実験ベースではもう既に飛行実験は成功しています。現実的にもうすぐ目の前に、車が空を飛ぶ未来が近づいてきているという状態です。
(水野)空っていろんな高さがあると思うんですけど、空飛ぶ車ってどのくらいの高さを飛んでいくイメージですか。
(高松)空飛ぶ車は、基本的には電動で、垂直離着陸で、自動操縦というのが定義になっていますが、当然、法律の整備と製造に関わる安全認証が非常に重要になります。どこなら飛んでいいのかとか、当然、ドローンよりもっと安全性や飛行領域の制限がある話になってくるので、ここはいま詰めているところですね。
(水野)スズキさんの空飛ぶ車は何人乗りのイメージなんですか。
(高松)現時点の発表では、乗客2人で3人乗りのようです。各社、いろんなバリエーションがあって、既に国内メーカーもたくさん参入していますし、世界的にもベンチャーが今たくさん出てきていて、激烈な開発競争が始まってますね。
(水野)空飛ぶ車のどこに魅力があるのでしょうか。
(高松)世界市場が2050年には100兆円を超えていくというような試算もあります。空の移動が、今までの航空機中心から、数人で乗ったものが宙に浮いて移動できるというこれまでと異なる新しい形になっていくという話になるので、もちろん安全性や法規制が大前提になりますが、世界的にやはり可能性があるという見られ方をしています。
(水野)空を車が飛ぶなんて、何か子供の頃に絵に描いたようなお話ですけれども、それがもうすぐ近くに迫ってきているんですね。ほかにはどんなトレンドがありましたか?
EV分野の開発も続々

(高松)東京モーターショーは2013年以降のこの10年ぐらい、基本的には電気自動車(EV)が展示の中心となり、世界的に自動車メーカー以外も含め、各社が良いEVを出そうと躍起になっています。実際中国にしてもヨーロッパにしても、EVがどんどん開発されています。
今回のジャパンモビリティショーも、一つの主役は空飛ぶ車ですけども、もう一つの主役は当然、EVでした。どこの国内メーカーもコンセプトモデルも含めてEVを多数出展していました。EVの世界競争で今、日本がちょっと遅れを取っていると言われていますが、高効率で価格やデザインも優れた、世界で戦えるEVを作ろうということで、日本中の各メーカーが今、本当に開発を頑張っているという状況です。
(水野)県内企業もEV分野でも頑張っていると。
(高松)そうですね。スズキは今回、海外で戦っていく世界戦略車のSUVや、軽自動車カテゴリーでのEV試作車を出展していました。ついに軽自動車の世界にまでEVが入ってくるという新しい次元に入っていきますね。
(水野)他には実際に取材に行かれてどんなことを感じられましたか。
(高松)東京モーターショーがなぜジャパンモビリティショーに改称したのかっていう点ですが、これは主催の日本自動車工業会も言ってるんですが、今の自動車っていうのはどうしてもちょっと中高年の世界のものという面がありまして。若い人は車はシェアするとか、乗り物に対する所有欲も少ないという課題があり、これから若い方や女性に乗ってもらうとか、高齢者にもっと優しい乗り物にしていくとか、どのように新しい提案をしていくべきかという問題意識、危機感が業界内に強くあります。
日本の自動車産業は約550万人の就業者がいると言われていて、これは10人に1人が自動車産業で働いていることになるんですけど、静岡県でも多くの方が関わっています。ですので、車の産業がしぼんでいくことは日本としては大問題でありまして、新しいものづくりを通して自動車産業が活性化していくことが、静岡県も含めて非常に重要な課題になっています。
今回、ショーの会場に自動車産業の方たちも多く足を運んでいましたが、やはりその裾野をどうやって広げるのかがポイントだと思います。ものづくりや自動車、新しい車に対して多くの一般の方が関心を持っていくよう、どのように渦やうねりを作っていけるのかということを、今回の会場で強く感じました。
(水野)車や私達を取り巻く乗り物の環境がどんどん進歩して変わっていくということなんですね。今日の勉強はこれでおしまい!