
【新静岡県知事に求める経済政策】選挙戦で掲げた「ベンチャー企業誘致」の実現に必要なことは?問われる鈴木康友新知事の手腕。「EV(電気自動車)化」の推進にも期待!

(山田)5月26日に投開票が行われた静岡県知事選挙で鈴木康友新知事が誕生したということで、今日は経済分野の取材経験が長い高松さんですから、鈴木新知事の経済政策を見ていきたいと思います。
(高松)鈴木さんは当選後のインタビューでも産業政策を真っ先に挙げていましたし、選挙戦の中でもこれまでの実績を基に「自分は静岡県の経済を発展させられる」とアピールしていました。そうした発言が変化しないかも含めて注目していきたいです。
鈴木さんは今回の選挙戦で「ベンチャー支援と企業誘致」という言葉を何度も口にしていました。
(山田)これは浜松市長時代にもやってきたことですよね。
(高松)そうですね。鈴木さんは浜松市長を4期務めましたが、その間に独自の政策を推進しました。東京の企業や金融機関を取材した際に、「確かに浜松市はベンチャー支援に関して目立ったことをしている」という声を聞いたことがあり、全国の政令指定都市の中でも成果を上げていると言えると思います。
ベンチャーは、例えば大学などの研究機関から起業したばかりだったりして、まだ実績がない状態の企業が多いです。アメリカのシリコンバレーには、そうしたベンチャーに対して資金面や技術研究などで支援する環境があります。エコシステムという言い方をするのですが、ベンチャー企業が成長しやすい環境を準備するということが一つの重要な要素になります。
鈴木さんは、ベンチャー企業が浜松市で仕事をしやすいように、支援拠点の整備や、資金を投資するベンチャーキャピタルを呼び込む施策を進めてきました。ベンチャー企業に「浜松市へ来てください」と長年言い続けてきたことが、じわじわ広がっていきました。
次世代の産業育成施策に注目!
静岡県も現在、ベンチャー支援を大きな施策の柱にしています。静岡市に支援拠点もできていますし、県内金融機関もベンチャー支援には力を入れています。静岡県としてスタートアップ企業を呼び込むという方向性は出ているので、鈴木さんが知事になってこれを加速させられるかどうかですね。静岡県には元々、伝統的なものづくり産業がたくさんありますが、今後は次世代の企業を育てたり誘致したりということが非常に必要です。鈴木さんは選挙戦で強く訴えていたのですぐに着手すると思いますが、県としてどのような施策を進めていくのか非常に注目されます。
(山田)僕も長く浜松市で番組をやっていたことがあるので、鈴木康友さんが市長だったときの取り組みを聞いたことがあります。
(高松)以前、浜松市のベンチャー企業の経営者を取材したことがありますが、市長や市職員とベンチャー経営者が意見交換をする機会をよく持っていましたね。
(山田)県知事になってもそういう場作りみたいなことを検討していくんでしょうかね。
(高松)次世代の産業を育てるのは、口で言うのは簡単ですが、実際にはとても難しいことだと思います。すごい技術を持っていてこれから成長したいというベンチャーがあったとして、研究機関との連携を含め、経営環境を考えると、どうしても大都市圏に行ってしまいがちなんです。
ただ、本来、若い経営者のライフスタイルも含めて、ベンチャーは地方都市との相性は良いはずと思います。これから事業を広げていきたいというベンチャー経営者に対して、鈴木さんがこれまで培ってきた人脈も含めてどのように静岡を発信していけるかというのは大きなポイントです。
(山田)僕は少し楽しみなところもありますね。今、浜松にはすごい考えを持ったベンチャー企業の方々が結構いますしね。そこが鈴木新知事の経済政策の注目点ということですね。
初の浜松出身知事だからこそ…
(高松)もう一つ期待したいことがあります。それは自動車のEV(電気自動車)化の分野です。(山田)どういうことか教えてください。
(高松)次世代自動車の分野は静岡県のものづくりの大きな要素になります。ここを本気でテコ入れした静岡県知事は今までいなかったのではないかと思います。鈴木さんは初の浜松市出身の知事として、中小企業や町工場を含めた自動車産業のまちの空気感を肌感覚で知っていると思います。そういった感覚をどのように見せてくれるのかという部分はすごく期待したいところです。
浜松市には「次世代自動車センター」という拠点があります。静岡県や浜松市が出資して運営する組織です。自動車メーカーの元技術者や幹部の方々がいて、成果を挙げてきています。
(山田)そうなんですね。
(高松)そこでこの数年、まさに中小企業を対象にEV化の技術支援をしています。今後、大学や企業の技術者ともっと繋がり、静岡が持っている自動車の技術を高めていくことを本気でやる、と知事が言えば、影響力は大きいと思います。
なぜ自動車産業のことを言うかというと、県内で働いている方がものすごく多いからなんです。その中には、海外競争の中で静岡県の自動車産業はどうなってしまうのかと不安に思っている方も多くいると思います。やはり、静岡県として自動車産業に力を入れていくという強いメッセージを出すということを鈴木さんにはやってほしいし、やらなければならないことだと思います。
(山田)なるほど。今回の選挙では地域が分断したとか、伊豆が置いていかれないかといった意見もありますが、経済の面で見るとどうですか。
(高松)当選後の報道各社の取材に、鈴木さんは「県東部の小さな自治体を大事にしなければいけないと思っている」と話しています。これは大事な発言だと思います。産業の規模としては自動車などの製造業に比べて大きくはないですが、伊豆には観光・サービス業があります。鈴木さんは選挙戦で「静岡県の鈴木康友になる」と宣言していました。浜松にも観光産業はあるので、その知見を踏まえ、伊豆の観光業に目を向けてほしいです。
産業的な意味でも東部は置いていかれるのではないかと危惧している人は大勢いると思います。それは(東部で鈴木さんが劣勢だった)選挙結果にも表れています。中部や東部を合わせ、静岡県全体で産業振興を図って底上げするということをしていかないと、県民の心は離れていってしまいます。ここは本当に問われる部分だと思います。
静岡県庁の経済部署をどう変える?最初の一手は?

(山田)なるほど。高松さん的にはこれからの静岡県の経済は楽しみですか?
(高松)そうですね。静岡県庁の中には経済産業部という部署があります。国の経済産業省、農林水産省、厚生労働省の労働部門の受け皿となる大きな部署ですが、鈴木さんが民間感覚を生かした産業の高度化を進めたいと考えるのであれば、この組織をどうするのかということも検討の余地があると思います。
例えば、全国の耳目を引くような画期的なミッションを与えた新しい部署を作り、そこで鈴木カラーの経済対策を進めるといったような組織改編を行って全国に発信するというのも一つの手かもしれません。とにかく早く鈴木さんの色を出してほしいですね。
(山田)就任後、どういうことをしていくのか、まずは注目したいですね。
(高松)どうしてもリニア中央新幹線や防災、医療福祉などの話になりがちですが、おそらく鈴木さんに期待されているのは、本人も口にしている「産業」「民間感覚」「ものづくり」といった分野ではないかと思います。川勝平太前知事が担った約15年間の県政運営の変えるべきところは変えて、投資的な部分を含めて経済政策を自分が推進するんだというメッセージを早く出すことが必要だと思います。
(山田)というわけで、今日は経済の側面で昨日当選した鈴木康友新知事の話をしていただきました。今日の勉強はこれでおしまい!
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