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【静岡市のアリーナ構想】30年前から計画も実現せず。失政の歴史も!?難波市長の手腕が試される!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「静岡市のアリーナ構想」。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年9月4日放送)
 
(市川)静岡市がJR東静岡駅北口の土地で進めたいアリーナ構想について、難波喬司市長は、2023年度中に事業化を判断する方針を明らかにしました。現在のアリーナ構想は、田辺信宏前市長時代から施設規模や整備手法を巡って検討が続いていて、4月に就任した難波市長が、事業化の期限に言及するのは初めてです。

(山田)静岡市のアリーナ構想、難波市長が動きましたね。

(市川)このアリーナ構想ってものすごく歴史が古くて、1990年代からあったんですね。ただ30年間紆余曲折があって、ずっと進んでいない。静岡市にとっては、なかなか進んでいない事業の筆頭格とも言えるのがアリーナ整備です。

(山田)びっくりなのは、30年前からずっと言ってるんですか。

(市川)今考えられている場所は東静岡駅の北側の土地で、現在スケートボードやインラインスケートを楽しめる東静岡アート&スポーツ/ヒロバがあるところです。大体2.5ヘクタールぐらい、東京ドームの半分ぐらいの広さの土地です。元々、旧国鉄の貨物駅があったところを1993年から94年にかけて静岡市が取得し、そのときは多目的アリーナの整備ゾーンと位置づけていました。

ここはずっと政治の舞台となっている土地でもあります。2003年に旧静岡市と旧清水市が合併しましたが、合併議論の過程で、東静岡の市有地に新しい市役所庁舎をつくることを決めていたんですよ。対等合併で、静岡と清水の真ん中あたりに市役所を作り、両方の住民に使いやすいようにするという約束で。条例も作られ、正式決定していた話でした。
しかし、市役所本庁舎の移転計画は2009年に消滅するんですね。

(山田)なんででしょう。

(市川)​そのときに、県の草薙総合運動場体育館が老朽化していたので、移転しようという話が県の中で出ていまして。草薙の体育館を東静岡の市有地に作ったらどうなんだっていう議論が沸騰したんですね。

静岡市にとっては、長年の悲願である東静岡にアリーナができるし、県営の体育館なら県からもお金を出してもらえて、「これはいい話だ」っていうことになった。そのときに取ったパブリックコメント、つまり市民アンケートでは、市民の93%が新庁舎不要と回答し、多目的アリーナを作ってほしいと回答していました。そのため市としても2009年に本庁舎の移転計画をやめることを正式に議会で可決して、アリーナ誘致に突き進むんですね。

(山田)そんな歴史があったんですね。

(市川)ただ、県営草薙体育館の東静岡への誘致を進めたんですが、結局、実現しなかったんです。2009年に石川嘉延知事から川勝平太知事に変わったことも影響したと言われていますが、川勝知事が判断したのは、「静岡学園高校の場所に体育館を移転させる」という決定だったんです。それでできたのが「このはなアリーナ」です。その結果、東静岡に誘致しようとしていた計画が宙に浮いてしまいました。

しかも当時、川勝知事は、東静岡とこのはなアリーナの建設地が近いので「同じところにアリーナは2つもいらない」と言って、東静岡に市がアリーナを造ることに反対の声を上げていたんですよ。当時、サッカースタジアムをそこに造るべきだというようなことを言っていたんですね。

市としては、県知事からそんなことを言われて、いやいや僕たちが決めることだと衝突していた。静岡市長は2011年に田辺市長に変わっていたので、その頃から田辺市長と川勝知事がやり合いをしていたっていうことです。

「失政」だった、市民文化会館のアリーナ構想

(市川)その後、東静岡でアリーナを造るのは県も反対していてなかなか難しいってことで、静岡市民文化会館のところにアリーナを造ろうって話になったんです。2015年の議会で市の幹部が検討しているという話をして、2017年1月に静岡新聞でも1面の大きな記事で、静岡市が市民文化会館のところに複合アリーナを計画していることを報じています。

ただこの市民文化会館のアリーナ構想も、頓挫しちゃうんですよ。ちょっと間抜けな話で、当時から失政と言っていました。なぜ駄目になったかというと、その検討を進めていく上で​、​アリーナを造るには市民文化会館の土地は狭すぎるっていうことに気づいたんですよ。

市は調査費まで計上していましたが、通常、調査費を計上するときは広さもしっかり調べて、ここにアリーナができるっていうのがわかった上でやるものなんですよ。広さという1番基本的なところをすっ飛ばして、そこに作るものを検討するというのは、行政のやり方としてはちょっと考えられない事態でしたね。

(山田)そうですよね。

(市川)2017年に完成した東静岡アート&スポーツ/ヒロバは、暫定施設なんですね。そのときは、アリーナは市民文化会館に造ろうと思っていたので、東静岡の土地がずっと塩漬けになったままではもったいないということで、スケートボードやインラインスケートをやれる場所にして暫定的に使っておくことになった。当時、東京オリンピックでスケートボードが正式競技になるっていう話もあったので、この広場ができました。

これ、裏話なんですけど、市民文化会館にアリーナを造ろうって言っているときに、東静岡に市立大学を造る構想も実は浮上したんですよ。「静岡市立大学を検討する」って僕も新聞の1面に書きました。そのときの最有力候補地が、東静岡の市有地だったんです。

(山田)それ結構裏話ですけど、リアルに進みそうだったんですね。

(市川)けど、これも駄目。いろんな反対がありまして、実現に至らず最終的にまたアリーナに戻ってきたというのが今の現状です。

2018年に、バスケットボールBリーグのベルテックス静岡が創設されたこともあって、東静岡にアリーナができればベルテックスの本拠地にもなるっていう話が出てきました。それもあって、今は完全に東静岡にアリーナをという方向性になっています。

事業手法を年度内に決められるか?


(山田)先週の静岡新聞にもあったように、市長が動き出して、いろいろ視察にも回っています。

(市川)以前、3時のドリルでスタジアムについて解説したときに、いろんな造り方があるって話をしたと思いますが、アリーナも全く同じです。民設民営か、民間の知恵を借りて公が造るのか、公設民営か、といろんな事業手法があります。今はいろんなところを視察して、事業手法を本年度内に決めましょうというのが今回のニュースの肝ですね。

アリーナって、スポーツの大会はもちろんですがコンサートも開けることがすごく重要です。今は、ビックネームのアーティストがやれるコンサート会場というと県内では袋井市のエコパアリーナで大体1万人規模なんですが、そのぐらいの規模のところは静岡市内にはないんです。市民文化会館の規模だとビッグネームはなかなか来てくれないですよね。静岡市に8000席規模のアリーナを造ろうという構想が実現すれば、静岡市の試算では年間123億円の経済効果があるということも市議会で明らかにしています。

(山田)ただどうなっていくかは、まだ本当にわからない。

(市川)民間が手を挙げなければ、行政だけでアリーナを造るというのは考えにくいので、本当に採算性があるのかをいろいろ考えて造ることになると思います。それから、周辺の渋滞問題や騒音問題を本当にクリアできるのかがこれからの課題になっていくと予想されます。静岡市にとって30年間ずっとアリーナって言い続けてできなかったものが、今回、難波市長が就任したばかりで実現することができるのか。難波市長の手腕が試されている問題なのかなと思います。

(山田)そんな歴史があるってことも知りませんでした。この後を見守っていきたいなと思います。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

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