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【静岡市清水区の新サッカースタジアム構想】資金はどこから?建設はまだ先?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「静岡市清水区の新スタジアム構想」。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(市川) 静岡市清水区のJR清水駅東口付近の再開発について、水面下の動きが続いています。サッカースタジアムの整備構想など、区民の期待も高い約20ヘクタールのこの再開発計画。ただ、資金調達の方法などは決まらず、完成への道のりは見えにくい状況にあります。

(山田)今回は静岡市清水区の新スタジアム構想ですね。最初に構想を出したときからどれくらい経ちますか。

(市川)構想自体は昔から言われています。清水エスパルスの本拠地は「IAIスタジアム日本平」ですが、老朽化や交通の便が悪いこと、あとスタンドの一部に屋根がないことによってJリーグの基準を満たしていないということを長年言われていました。サポーターを中心に新しいスタジアムへの期待感が高まっています。

行政レベルで言うと、4年前の市長選の時に田辺信宏前市長が清水の新スタジアムを検討することを公約に掲げるなど、市政課題にも上がっています。

一方で、静岡市には「ハコモノ」と言われる大型施設の建設計画がいくつかありまして。今年1月に完成した歴史博物館、老朽化と耐震性の低さから移転建て替えが検討されている市役所清水庁舎、東静岡駅前が候補地になっているアリーナ、清水港に計画されている水族館が代表的です。こうしたものがスタジアムよりも優先的な計画とされていて、スタジアム建設はまだまだ先という感じだったんですね。

これは裏話になりますが、2019年の市長選のとき、田辺氏は元々、公約にスタジアム構想を入れるつもりはなかったんです。しかし、対立候補が清水スタジアムを整備することを大々的に公約に掲げたため、「これでは票が取れない」ということで急遽、清水のスタジアムについて「検討」という言葉を使って公約に入れたんです。

(山田)言わざるを得なかったということですね。

(市川)2019年の市長選で田辺氏が勝ちましたが、そこからまた動きがなくて。2021年度から公約をようやく果たす動きが出てきて、22年度に検討委員会を立ち上げた。その検討委員会の中で、清水駅東口にある、石油元売り大手のENEOSの遊休地が候補地として最有力という結論が今年2月に出たんですね。

4月には市長選があり、3期12年務めた田辺市長から難波喬司市長に変わりました。行政には継続性があるとはいえ、大きな事業に関しては市長の意向がものを言います。難波市長は選挙戦中にスタジアムに関して言及しています。

(山田)どういうことを言ったんですか。

(市川)複合施設にする案を披露したんです。ただ、市がどの程度それに関与するかなどの具体的な言及はなかったんです。

市長就任後、民間の投資判断における不確実性をできるだけ小さくするために、ENEOS遊休地の活用上の課題や利用条件を整理するための調査を行うことや、市が率先して施設計画案を描かないことなどを職員に指示したと表明しました。

民間の投資を促すためには、市が施設計画も描いてしまうと、それに当てはまるものを作らないといけなくなり、民間が手を挙げづらくなってしまう。だとすれば、市は、土壌汚染や都市計画上の課題、津波対策の必要度などを調査し、公開することによって民間が手を挙げやすいような状況を作るべきではないかーという趣旨です。

(山田)自由に使ってくれていいですよということですね。

(市川)一方、田辺市政時代の計画ではIAIスタジアムの改修案の可能性を残しつつも、新スタジアムの最有力候補地とされた清水駅東口で、施設整備計画の策定や概算工事費の算定を行う予定でした。難波市政では「調査します」という話になったので、若干後退した印象はありますよね。

ただ、難波市長は市長選で清水の経済界の支援を受けてい​ました。そうすると、民間事業者との水面下のやり取りは、かなり進んでいるのかなという憶測もあります。

税金投入なら公共的な価値が必要


(市川)最大のネックは「資金は誰が出すか」です。最近、経済関係者が視察したという長崎市の長崎スタジアムシティは、通販事業を手がけるジャパネットホールディングスが全て負担するスタジアムで、総工費800億円と言われています。ホテルやオフィス、アリーナも併設する施設で、ジャパネットが全額出すと言ってるんです。

長崎は民設民営ですが、全国を見渡すと、例えばパナソニックスタジアムは78億円集まった寄付金を基に民間が整備して自治体に寄付したという形です。行政と民間がお金を出し合って造っているのが広島スタジアムパーク。公設公営といって完全に行政が造っているスタジアムにはサンガスタジアム京セラなどがあります。全国のスタジアムは、それぞれ形態が違うんですよね。

山田さんは、清水に新スタジアムが欲しいと思いますか。

(山田)清水サポーターの中でも意見が分かれると思いますが、個人的には日本平への行きにくさがあるなというのは感じています。

(市川)今年、IAIスタジアムで行われるエスパルスの試合は、カップ戦を含め24試合。年間ベースで月に2回程度の使用にとどまります。何百億円のスタジアムを行政のお金で造るとなると、それってどうなのっていう人が必ず出てくると思います。

静岡市がスタジアム検討の過程で実施したアンケートでは、スタジアムで観戦したという市民が47.3%で、観戦していない市民が多かったんです。「新サッカースタジアムに期待することは」という問いでは「日常使い」が83.1%、次が「快適な観戦環境」でした。「エスパルスの試合を良い環境で見たい」というよりも、「日常で使えるスタジアムが欲しい」というのが市民の一番の希望だったという結果でした。でもエスパルスのホームスタジアムといったら、大きなものを造ると思うので、そこを日常で使うのはちょっと不可能だと思うんですよ。

これはなかなか難しい問題で、行政が税金を投入するスタジアムとなると、他の公共施設を併設したり、地域の防災拠点にしたりするなど、儲けとは別の公共的な価値が必要になってくるんですね。エスパルスの観戦を一度もしたことない人でも納得するような案でなければ、税金を投入するのは難しいと思います。

(山田)アリーナならコンサートなど使い道がいろいろあるから話は違うんですけどね。

スタジアムを造ることの効果とは

(市川)スポーツにはすごく大きな力があると思っています。見ているだけで勇気を与えられるし、市民全体が運動への意識を持つことによって市民の健康意識の向上や、医療費、福祉費の削減という効果もあるかもしれない。さらには、シチズンシップという言葉がありますが、「サッカーのまち」という看板は、市民の誇りにもなっています。

実際僕の後輩の記者に、エスパルスがいたから県外から静岡新聞に就職したという人もいます。それだけまちの誇りになっているので、スタジアムを造ることによる効果は間違いないと思います。

静岡市民にとって本当にスタジアムが必要なのかは、これから巨額の税金を投入するのかしないのかっていうところが大きな争点になってくる。何百億というお金を使うなら他の福祉や教育にお金を使うべきだって議論もありますし、ここは、就任したての難波市長の真価が問われるのかなっていう案件だと思います。

(山田)エスパルスは今J1に上がるために頑張ってますから。エスパルスとともに静岡市を盛り上げたいという思いの人もいるだろうと思います。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

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