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【スタジアムと収容数】ライセンスのためには規模拡大。でも客席スカスカじゃ盛り上がらない!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「スタジアムの規模」です。先生役は静岡新聞運動部専任部長の寺田拓馬が務めます。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(寺田)サッカーJ2リーグの藤枝MYFCが、来季のJ1ライセンス取得に向けた申請手続きを行ったことが、関係者への取材で分かりました。チームはまだJ1ライセンスがない状態ですが、昇格プレーオフ出場権の6位以内を目標に掲げています。

(山田)寺田さんがずっと追いかけている藤枝MYFCの話題ですね。

(寺田)本拠地である藤枝総合運動公園サッカー場はバックスタンドを改修中で、元々芝生席だったところを屋根付きの観客席にしています。完成すると1万人の収容数になるんですね。ただJ1ライセンスの基準は1万5000人なので、残りはどうするんだということになってきます。

(山田)ライセンスは、スタジアムの規模だったり、ユースチームがなきゃいけないとか、いろいろ基準があるんですよね。

(寺田)ライセンスって何かって話なんですが、Jリーグとプロ野球は組織の仕組みが違うんですよ。Jリーグは決まった条件(ライセンス)を満たせば、あとは実力次第で、入れ替え戦を勝ち上がっていくとJ1まで行くことができるんです。「開放型の統治」と言われています。藤枝もゼロからチームを作って15年目。県リーグからJFL、J3、J2と今上がってチャレンジしている途中です。

一方、プロ野球は、日本プロ野球機構という組織があり、会員は12球団と決まっています。意思決定するのはオーナー会議で、「閉鎖的な統治」です。成り立ちが違うので、どっちがいい悪いではないんですけども、プロ野球には戦力を均衡に保つためにドラフト会議がありますよね。自由競争のJリーグにドラフトはありません。

(山田)プロ野球はアメリカ寄り、サッカーはヨーロッパ寄りとも聞いたことがあります。

(寺田)藤枝は、今はJ1基準を満たしてないんですが、例外規定を利用してJ1ライセンスを取ろうとしています。「将来的にスタジアムを改修するもしくは新しく造る計画を持ってますよ」ということで、「今はいいにして」っていう話なんですね。

例外規定は他のクラブも使っていますが、J3鹿児島ユナイテッド FCがちょっと問題になっています。新しいスタジアムを造ると言ってJ2ライセンスを取得しましたが、県や市と調整がうまくいってなくて、整備計画が棚上げになっちゃってるんですよ。Jリーグの方から「J2ライセンスを取り消しますよ」っていう通達を受けています。ライセンスを取得した後、計画を実現できるかどうかも肝心です。

満員だからこそ得られる高揚感


(寺田)スタジアムの規模と満足度についても考えたいと思います。国内には、2002年日韓ワールドカップに合わせて、静岡エコパスタジアムなどいくつもスタジアムができたんですよ。ワールドカップ仕様のスタジアムはすごく大きいんですね。ただ、5万人程度の収容数で来場者が1万人だとすごいスカスカ感が出ちゃうんですよね。ラグビーワールドカップのときは満員になって盛り上がったんですが、スカスカだと、見てる方も選手もちょっと高揚感が薄いかなっていう気がします。

(山田)「あの規模のスタジアムはいるのか」って話ですよね。

(寺田)一方で、藤枝のスタジアムは、バックスタンドは改修中で、メインスタンドとゴール裏だけだと5000〜6000人ぐらいしか観客が入らないんですよ。先日、磐田との試合をホームでやったんですけども、5600人ぐらいの超満員で、現地は高揚感があってお祭りみたいでした。選手の方も「すごく幸せな時間だった」と言っていました。

(山田)人で埋まっていると見栄えも違いますよね。

(寺田)藤枝のスタジアムは、2002年のワールドカップのキャンプ誘致で造ったんです。来場者が5000人を超えたのは、その2002年の本番前にセネガルが当時のJ1柏レイソルと親善試合をやったとき以来21年ぶりでした。

磐田戦にはJリーグの野々村芳和チェアマン(清水東高出身)も来場してまして、「いい作品だった」っておっしゃってるんですね。柔軟に対応する姿勢を示しているんです。ビッグクラブとこれから成長していくクラブでは、サポーターの数も違うので、スタジアム規模について柔軟に考えてもいいんじゃないかなとは思います。

(山田)確かにそうですね。

(寺田)スタジアムの建設場所はどこが最適かというお話もしたいと思います。一昔前のスタジアムは郊外に造られたケースがあるんですよね。市街地に広い土地がないということもありますが、渋滞や騒音、照明などの問題で、ある種迷惑施設という考え方で造ったと。ただ私は、交通の便っていうだけじゃなくて、スタジアムは山奥ではなく街中にあったらいいなと思います。

(山田)その理由は。

(寺田)Jリーグはチームに都市の名前がついていますね。Jリーグは野球より後発なので、設立時にどうやったら野球に対抗できるか考えたと思うんです。それで、当初から「Jリーグ100年構想」っていうのを打ち出したんですね。これは単にサッカーを普及しようというだけではなく、まちづくりも考えています。「あなたの街に緑の芝生で覆われた広場やスポーツ施設をつくる」「あなたのやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくる」「スポーツを通じて世代を超えたふれあいの輪を広げる」。こんなことを構想でうたっているんです。

スポーツは社会基盤の一つ

(寺田)スタジアムについては経済的な費用対効果の面を考えなきゃいけないと思うんですけども、スポーツって勝ち負けだけじゃないんですよ。一部の人の娯楽のためではなく、健康づくりであったり、フェアプレーの精神だったり、生活の中にスポーツがあることの重要性ってあると思うんです。スポーツというのは社会基盤の一つじゃないかと思います。スポーツを中心にしたまちづくりをするためにはスタジアムってどこに造ったらいいかっていうことですね。


(山田)ライセンスの話から、堀り下げていくと自分たちのまちのスポーツ施設のあり方や場所ってところまで、いろいろ考えていくべきですね。藤枝MYFCの応援も、皆さんぜひよろしくお願いいたします。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

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