【難波市政スタート】職員に厳しい市長と、優しい市長。市民にとってどちらが幸福ですか?

静岡トピックスを学ぶ勉強の時間「3時のドリル」。今回のテーマは「難波市政スタート」です。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。

市川専任部長「難波さんは『厳しい』らしい」


(市川)
4月25日、静岡市の難波喬司市長が市長就任後初めてとなる定例記者会見に臨みました。
市長は職員を対象に聞き取り調査を行った上で、それぞれの市政課題に対する自身の考え方を発表しました。

(山田)
難波市長は選挙期間中、マニフェストのようなことは言わなかったんですよね。

(市川)
選挙中は具体的な政策を出しておらず、一部から「どうなんだ」と批判を受けていました。今回、初の定例記者会見で独自色を出したということです。

(山田)
どんな考え方が見えてきたのでしょう。

(市川)
まず大前提として、地方自治体の政策は予算を軸に執行されることになっています。この予算が静岡市ではいつ決まったか。今年の2月に発表され、3月にかけて行う市議会で可決されて決定しました。2023年度はこの予算で、こういうふうにやっていくよと。

(山田)
前市長の田辺さんが中心になって決めた予算ということですね。

(市川)
その通りです。ただ田辺前市長と難波市長では考え方が違うわけですから、田辺さんが決めた予算通りに政策を執行していっても、難波市長が途中でひっくり返したくなることが起きる。大混乱になってしまいます。

だから難波市長は早めに職員とすり合わせをして、今回の会見で「自分の考え方はこうだ」ということを52件に渡って示したのです。

中身も結構細かく、内容も多岐に渡っています。静岡市のホームページに、マスコミに配布されたものと同じものが公表されていて、誰でも読むことができます。難波さんの考え方が一目瞭然でわかるので、静岡市民の方はぜひ読んでいただきたいです。

(山田)
難波さんはどういう方なのでしょう。

(市川)
私もかつて静岡市政を担当していたので、知り合いの職員に複数聞いてみました。難波さんは「厳しい」らしいです。こんなことを難波さんに言うと、「『厳しい』の定義を教えてください」と返されそうですが(笑)。

ここで私が思い出すのが田辺前市長です。田辺さんは公の場で職員をよく褒める市長で、マスコミ報道に対して苦言を呈したこともあります。

「公務員である市の職員は、小さなミスでも新聞に出て、市民に悪いイメージが定着してしまう。だけど、職員は頑張っているんだ」と。頑張っている職員に光を当てる記事を書いてほしいということですね。

(山田)
ミスや事件事故みたいなところばかりマスコミはつつくけれど、頑張っている職員がいるんだから、そこを取り上げてくれよと。

考えるべきは「市民の利益」


(市川)
私は田辺市政を5年間取材し、2019年には「考えるべきは市民の利益」というタイトルのコラムを書いたことがあります。職員思いの良い市長だなと思う一方、私がコラムに書いたのは「市民にとってそれってどうなの」ということでした。

当時、市では事務処理のミスが相次いでいました。公金や公権力を扱う行政機関のミスは、一つ間違うと市民に多大な不利益を与えることがある。だから、頑張る職員を褒めるのもいいけれど、市長が考えるべきことは「市民の利益」であって、語るべきは「ミス撲滅の決意」ではないかと。

(山田)
たしかに会社と行政は違いますからね。

(市川)
先日、退任した田辺さんと話をする機会がありました。その時に「今日は、あの職員の誕生日だな」という話をされました。

田辺さんはかつて、松下政経塾という政治家を養成する機関に入っていました。松下幸之助さんというパナソニック創業者の教えで、「職員の誕生日は全部覚えているんだ」と。

それほど職員に気を使う市長だったんですね。それはそれで、市役所という組織のまとまりはできたかもしれませんが、どうなんだろうか。職員に厳しい市長と、田辺さんのように職員に優しい市長。市民にとって、どっちが幸福なのかなと考えてしまいます。

田辺さんは最終的に選挙の審判を経ずにやめてしまったので、田辺市政の12年間というものがどんなものであったか、評価が定まっていないところはあります。ただ、職員に厳しい市長と優しい市長。市政にとってどちらがいいのか、という部分は今後注目して見ていきたいなと思っています。

(山田)
難波市長は「子育て教育環境の充実」にも力を入れていくとか。

(市川)
子育て教育環境というのは、どこの市町も掲げています。逆に、掲げていないと人口が減っていってしまう。静岡市は政令指定都市の中でも人口減少が突出して多いので、人口を維持することに対しては気をつかっていると思います。

難波さんは子育て環境の充実のほかに、働ける場所をつくるという部分にも力を入れると発言しています。できれば人口を増やしたいということですね。

(山田)
なるほど。住みやすい街は、子育て環境と仕事が重要なのかもしれませんね。今日の勉強はこれでおしまい!

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