今年、インフルエンザは流行する?予防接種は打つべき?感染症の専門医が解説
可能性は捨てきれない!? 今年のインフルエンザの流行
インフルエンザのワクチン接種の時期がやってきました。昨年はインフルエンザがほとんど流行しなかったので、ワクチン接種をするかどうか、迷っている人も多いのではないでしょうか。一方で、今年はインフルエンザと新型コロナウイルス(以下、コロナ)の同時流行があり得るという声も聞いたりするんです。詳しいお話を、静岡がんセンター・感染症内科部長の倉井華子先生に教えていただきました。
牧野:昨年は、インフルエンザがほぼ流行しなかったように思いますが、実際はどうだったんでしょうか?
倉井:2020年は、全国的に見ても過去に例がないくらい、インフルエンザの流行が見られませんでした。これは日本国内に限らず、世界各国でも同じような状況が認められていました。
牧野:「コロナに対する感染対策がしっかりされ、インフルエンザにも有効だった」といえるのでしょうか?
倉井:そうですね、インフルエンザもコロナも感染する経路はほとんど同じなので、マスクやソーシャルディスタンスの効果があったのだと思います。
今冬、インフルエンザの流行の可能性は?
牧野:それなのに今年はインフルエンザの流行が警戒されているそうですが、それはなぜでしょう?倉井:例年、インフルエンザの流行状況は、日本と季節が真逆の南半球の流行状況から予測をたてています。今年は南半球でもインフルエンザの流行が見られなかったので、今年も流行しないのではないかという意見もあるのですが、ちょっと気になるのが、通年でインフルエンザがポツポツとでる、インドやバングラデシュなどの亜熱帯地域の状況です。この地域では、今年インフルエンザの流行がいくつかの国で認められているんです。
牧野:それはコロナの対策も、しっかりしている国なんですか?
倉井:コロナウイルスワクチン接種が進んでいる国もあります。日本との交流が多い国もありますので、一度日本に流入すれば、もしかすると国内でも流行するかもしれません。
今年のワクチン接種で気をつけることは?
牧野:流行の可能性は捨てきれないですね。となると、インフルエンザワクチンを打っておいた方がいい気もします。ワクチンを打つ際に気をつけるべきことを教えてください。倉井:インフルエンザワクチンは、コロナのワクチンに比べると副作用の多いものではないです。ただ今年は特に接種間隔について気をつけていただきたいです。基本的に国内では、コロナワクチン接種の前後2週間は他のワクチンを打つことができません。ですので、ワクチン接種の予約をするときは、間隔が2週間空いているか確認したうえで双方のワクチン接種の予約を取っていただくといいと思います。
牧野:コロナワクチンの1回目と2回目のあいだに打つのはやめた方がいい、ということですね。
倉井:コロナワクチンの種類にもよります。例えばファイザーの場合ですと3週間ごとの予約になりますので、途中でインフルエンザのワクチンを打ってしまうと、コロナワクチンが受けられないことがでてくるかもしれません。ですので、予めコロナワクチン接種元にお問い合わせください。
ワクチン接種の時期は?
倉井:インフルエンザが流行してくるのが、例年早くて12月、1月くらいです。それまでに接種していただければと思います。牧野:1回打ったあとの効き目がどれくらいあるのか気になるのですが……、今打っておけば、12、1月の時期にも効果を発揮できますか?
倉井:今打っていただいても効果の差はないと思います。
牧野:2年に一度打つ人もいたりしますが、昨年インフルエンザワクチンを打った場合、今年も効果はあるものなのでしょうか?
倉井:インフルエンザのワクチンは打ってから半年くらい経つと、抗体の低下が認められます。もうひとつの特徴として、コロナ以上に変異ウイルスが出やすいため、毎年少しずつ型を変えてワクチンは製造されています。そういった点から、毎年受けることをおすすめしています。
牧野:インフルエンザワクチンを打つことで、感染を抑える効果は実際に認められているんですよね。
倉井:はい、インフルエンザワクチンの効果は60~70%といわれています(コロナワクチンの効果は90%)。毎年接種してもインフルエンザにかかってしまう人もいますが、それでも感染リスクを減らすことと、なによりも打った人の重症化予防の効果が高いことは示されています。
あともうひとつ、ワクチンの効果がどうしても低い人がいます。例えば年齢が高い人や抗がん剤治療を受けている人などがそうです。そういった人たちの身を守るために、家族や周囲の人が接種しておくことも有効かと思います。
ワクチン接種直後の対応と、日ごろの予防対策
倉井:よく、ワクチン接種後にお風呂に入っていいか、お酒を飲んでいいか、運動していいのかという質問を受けます。インフルエンザワクチンを打ったあとの行動制限はありません。ただ、ワクチンを打ったあとは、打った場所が腫れやすかったり、痛みがでたりします。体の血行がよくなったり運動したりすると症状が強くでることがありますので、その点だけご注意ください。ワクチン接種で腫れやすい人や熱が出たことがある人は、その日の運動や入浴は軽く済ませるといいと思います。
また、日ごろの対策としては、コロナの対策と似通ったところがありますが、まずはマスクを着用すること、手洗いをすることが大事だと思います。そして、インフルエンザは特に子どもに流行しやすいのが特徴なので、子どもの体調が悪そうなときは、学校などを休ませるようなことを続けていただきたいなと思います。
牧野:基本的にはコロナ対策の延長線上と思っていいですね。
倉井:そうですね、ただ発症する年齢が少し異なります。コロナは年齢の高い人が発症しやすいですが、インフルエンザは子どもが主な感染対象です。その対象がちょっと違うことをご理解ください。
牧野:最後にメッセージをお願いします。
倉井:コロナが少し落ち着いて一安心されているところだと思いますが、感染症はコロナだけではありません。インフルエンザ以外にも麻疹や水疱瘡など多くの感染症について知っていただき、予防できるワクチンがあるなら、それを積極的に受けていただくことが、本人と身の周りの人を守る行動につながると思います。
牧野:わかりやすく教えていただきありがとうございました。
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免責事項
今回お話をうかがったのは……倉井華子先生
1977年生まれ、岐阜県出身。2010年より静岡がんセンター感染症内科に赴任。院内の仕事に加え、新型コロナウイルス感染症や耐性菌対策など静岡県内の感染症対策にも従事。
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