アウトドアシーズン 山や森にいるマダニ媒介の感染症に注意

肌を露出しない、明るい服を着る、帰ったらすぐシャワー

マダニが媒介するとみられるオズウイルス感染者の死亡が、世界で初めて確認されました。山登りやキャンプなどを楽しむ方も増える時期だと思います。今回は、マダニによる感染症について、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生に、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2023年7月4日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

矢野:国立感染症研究所の報告によると、オズウイルスに感染したのは海外渡航歴のない70代女性です。昨年の夏に熱や倦怠感、食欲低下があって病院を受診し、血液検査で腎臓や肝臓の状況が非常に悪かったそうです。入院時に患者さんの右足の付け根に、ダニが吸血した跡が見つかったため、マダニ媒介感染症が疑われました。

当初はSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などのマダニ媒介感染症かと思われましたが、否定されました。この患者さんは心臓に炎症が起こる「心筋炎」を併発し、重症な不整脈で死亡しました。患者さんの血液や尿からオズウイルスの断片が見つかり、追加検査でオズウイルス感染症と診断されました。

牧野:ほかにもオズウイルスに感染した例はありますか?

矢野:野生動物の調査では、ニホンザルやニホンイノシシ、ニホンジカがオズウイルスに感染していることがわかっています。人間でも、山口県では狩猟者の血液の検査で2人から、オズウイルスに対する抗体反応があったという報告がありました。感染に気づかないか、感染しても症状が軽い場合もあるようです。

マダニは野生動物にくっついている

牧野:マダニはどのように人間を刺すのか教えてください。

矢野:マダニは、シカやイノシシといった野生動物の身体に付いています。野生動物が山の中の草むらに行ったときに、体についているマダニが草の先端に付きます。そこでマダニは人間や動物が通るのをじっと待っています。マダニの前足にはセンサーがあって、温度や二酸化炭素を感知できるので、それによって動物が近づくのがわかります。人間や動物が近くを通ると、マダニは急に元気になって乗り移り、人間や動物を刺します。

牧野:長いズボンを履いていれば防ぐことができますか?

矢野:そうですね。とにかく皮膚を露出しないことが大切です。また、明るい色の服を着ていくと、マダニがついているのがよくわかります。もしマダニを見つけた場合は、急に離そうとするとマダニの口の部分が残って化膿したり、血液が逆流したりします。医療機関で処置してもらってください。

マダニは人間を刺すと、数時間かけて口の周りをセメントで固めて、その後に病原体を注入するので、その間にマダニを取ればよいです。山奥でマダニに咬まれてしまった場合は、自分で取ったほうがよいと思います。先の細いピンセットでマダニの口の部分をはさんで、ゆっくりゆっくり引き離してください。

牧野:山登りにはピンセットを持っていったほうがよいですね。

矢野:山から帰ってきたら、すぐにシャワーを浴びてほしいです。身体についているマダニを見つけることができます。子どもがシャワーを浴びるところを見て、そこでマダニに気付いたら病院を受診しましょう。マダニを取ってもらうので、皮膚科が多いですね。マダニに刺されてから2〜3週間経過をみるのですが、状況が悪くなっていったら内科に受診するとよいと思います。

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免責事項
今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数

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