猫からSFTSに感染することも!

松下:マダニが媒介するSFTSについては、静岡県では今年に入って過去最多だった2022年に並ぶ6人が感染、うち2人が既に亡くなっています。恐ろしい感染症ですね。
矢野:重症熱性血小板減少症候群はSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることによって感染します。主に、5月から8月に多く見られ、潜伏期間は7〜14日で平均9日です。最初の症状は発熱や倦怠感、頭痛、筋肉痛などで、血液検査をすると白血球や血小板の減少、肝酵素上昇が見られます。致死率は6〜21%で、発症から死亡までわずか8〜10日です。感染する人の80%が高齢者で、予防できるワクチンはないんです。抗ウイルス薬は承認されていますが、これはまだ実験室レベルです。
SFTSは、当初は西日本中心に感染が確認されていましたが、近年は北海道や関東にも拡大しています。マダニに刺される他に、家庭内や院内での人から人への感染もあります。さらに動物からの感染もあり、犬や猫がSFTSを発症することがあるので、病気の猫に接触することによっても感染します。実際、獣医などの動物をケアする医療従事者が10人以上感染しています。
松下:話を聞いていて、改めて恐ろしい病気だなと感じます。以前に比べて、マダニの存在がより身近になっているような感じがしますが、いかがですか。
矢野:最近は、本当に身近になってきていますね。理由として、温暖化で気候が高い状況が長期化していることと、マダニの活動期が長くなっていることが挙げられます。また、クマやイノシシ、シカなどの野生生物が増加していて、身近な場所にマダニが生息しています。ただ、北海道の感染に関しては、渡り鳥が中国や西日本からマダニを運んだ可能性が指摘されています。
山だけでなく公園や畑でも注意
松下:リスナーの方からは「公園清掃の時は有効成分配合の虫除けを使うようにしている」というメッセージも来ています。対策は、従来通りでいいんですか?矢野:これまで通り、マダニを防ぐためには山などに行くときに肌の露出のない服装をすることが重要ですが、これからは、公園へ行く時や畑仕事をする際、また犬猫に対しても注意が必要です。とにかく、病気の猫の体液との接触を避けることが大切ですね。
松下:もし自分の飼っている犬や猫が少し変だなって思ったら、すぐに病院に連れていってあげた方がいいですかね。
矢野:その通りですね。何か病気を持っているかもしれませんね。
コロナは新しい変異株の流行が…!
松下:新型コロナウイルスの感染者数もここに来て増えているんですよね。矢野:そうなんです。直近1週間の県全体の定点医療機関当たりの感染者数は6.27人で、前の週の1.19倍でした。注意報レベルで目安になる8人には届いていないんですが、感染者数が10週間連続で増えています。
松下:また新しい変異株がでてきていることもニュースで見ました。
矢野:そうですね。このオミクロン株の中の新しい変異株を「ニンバス」(正式名はNB181)と言います。これは、唾を飲み込んだときや食べ物を食べたときに強い痛みがあります。感染力が強いんですが重症化は少ないです。しかし、高齢者が感染すると、入院が必要になることがあります。
最近は、「炎天下で畑仕事をしていて倒れた高齢者が熱中症の疑いで病院に搬送され、実はそれはコロナだった」という事例もあります。さらに、最近、WHOが新しい変異株「ストラトス」(正式名はXFG)の流行を指摘しています。ニンバスの流行が終わっても、次のストラトスによる流行が予測されています。
軽症患者がウイルスを運んでしまう
松下:「アフターコロナ」と呼ばれるようになってからもう久しいですが、まだやっぱりコロナの脅威ってのはあるんですね。矢野:これから続いていくと思いますね。
松下:ここに来てまた感染者が増えている理由はあるんですか。
矢野:はい。若い人や基礎疾患がない人はほぼ軽症なので、ウイルスを出しながら職場や学校に行ったりしています。そのことによって、周囲の人々に感染させています。また、多少調子が悪くてもコロナの検査をしない人も多く、診断されずにウイルスを周辺に撒き散らしているんですね。さらに夏休みは、帰省などで人の移動も多いため、ウイルスにも容易に移動できる状況になっています。
過去に感染した人であっても、ウイルスに対する免疫が低下してきているので、ウイルスに暴露すれば感染します。また夏の疲労で、免疫力が下がっていることも関係していると思います。
松下:夏休み明けは環境がまた新しくなり、体調も崩しやすいと思いますが、ここで改めてしっかりコロナ対策していきたいですね。手洗いやうがいの徹底、必要に応じたマスクの着用などの対策が大事になってきますか。
矢野:その通りですね。そうしたことが大切だと思います。
松下:矢野先生、今日はありがとうございました。