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創業当時から意外すぎる業態転換!それでも世界トップシェアに!テイボー株式会社/浜松

ペン先だけでなくメイク道具まで!

カメラマンの望月やすこさんに、取材中に出合った身近にあるけど、「へ〜〜」な求人情報を紹介してもらう本企画。今回は、浜松市にある「テイボー株式会社」をご紹介いただきました。
※3月25日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

望月:
今回は「テイボー株式会社」の紹介です。人事総務部の大竹啓之さんにお話をうかがいました。カタカナで「テイボー」という会社名なんですが、もちろんこれだけじゃ何の会社か分かりませんよね? この会社、1896年(明治29年)創業なのですが、今の業種と創業当時のものがぜんぜん違う、60年前にガラッと業態転換をしているんです。

原口:創業が100年以上前で、60年前に業態転換? 60年前に建てたわけじゃないんですね。

望月:違います、それがいきなり変えちゃったんです! 創業当時の業種が今の会社名のヒントなんですが、「テイボー」って何の略かわかりますか? 100年くらい前にテイとつくといえば?

原口:うーん、帝国とかのテイ?

望月:そう、それ! 答えは「帝国製帽株式会社」。

原口:ボーは帽子!

望月:帽子を作る会社だったんです、しかも高級紳士帽! 「中折帽」という、フェルト製で真ん中がM字にヘコんでるソフト帽子です。よく、明治とかの映像で男性がかぶっている帽子で、フランスとかイタリア映画でダンディーな俳優がかぶっているような感じです。

1964年(昭和39年)の東京五輪で日本選手団が真っ赤なブレザーに真っ白な帽子をかぶって入場行進する映像を見たことはありますか? あの時にかぶっていた白い帽子が「中折帽」です。そして、なんとその白い帽子を作っていたのが、この帝国製帽株式会社、今のテイボー株式会社だったんです。

さらにさらにここの帽子、実はものすごい人も愛用していました!

ものすごい人というのは……、昭和天皇! 昭和天皇はテイボーの帽子を愛用していたので、浜松まで会社見学にいらしたこともあって、本社前にはそれを記念した石碑もあるんです。テイボーで製作していた、当時の中折帽の実物を見せてもらったんだけど、たしかにすごく素敵で、ザ・紳士って感じでした。こんなにすごい歴史を持っているのに、60年前にガラッと業態転換したんです。

大きな決断だったと思います。この先もっと大躍進を遂げていてもおかしくないのにと思って聞いてみたら、大竹さんもはっきり言わなかったけど、どうも紳士帽子の需要が時代背景によって落ちたみたいで……。それで業態転換したんじゃないかという感じです。その業態転換した事業が今の事業なんですが、中折帽の原材料であるフェルトを使って始めた新事業は、なんと「ペン先」!

確かによく考えるとマーカーの先はフェルトでできていますよね。思い切って帽子の原材料のフェルトでペン先を作りだしたのが、まさかの大成功!それから60年。今では、世界45ヶ国、350社以上の文具メーカーにペン先を提供していて、生産本数は年間50億本。売上は100億円。フェルトペン・マーキングペンなどマーカーのペン先製造で、日本だけじゃなくて、世界のトップシェア企業になったんです。

原口:何かひとつを極めた企業は、業態転換してもトップに躍り出るんですね!

MIM開発センター

望月:今では、工場は浜松市中区の本社工場と都田にある都田技術センター、同じ都田に2020年4月に完成したMIM開発センター、中国にも工場があります。普段、私たちは文具メーカーの名前までは気づいたとしても、ペン先をどこの会社で作ってるかなんて考えもしないじゃないですか。

原口:ペン先にメーカーのロゴが入っているわけじゃないですもんね。

都田技術センター

望月:私たちの知らないところで、日本だけじゃなく世界中でよく知られた会社なんです。じゃあ、何がすごいかというと、フェルトペン先の技術、「多孔質体による毛細管力 コントロール技術」がすごいんです! 簡単にいってしまうと、学校で習った「毛細管現象」ですよ。ジュースの入ったペットボトルにティッシュの先っちょを入れてしばらくしたらティッシュがビチャビチャになる、あれ。万年筆も同じ仕組みでインクを上げてます。

フェルトペンも同じ技術でインクをペン先に運んでいますが、フエルトペンといっても水性ペン、油性ペン、ホワイトボード用ペン、蛍光ペン、なんならキラキラのラメ入りなんかもあるじゃないですか。だから種類によって粘度の違うものを上手にペン先に運ぶ技術が必要なわけです。それに加えてインクのはきだし性能の調整。使い初めのインクのはきだしを多くしたいのか、筆記距離を優先したいのか、インクの粘度や表面張力の設計なども必要です。

さらにキャップを閉め忘れてもなるべく揮発しないような技術、ペンを上向きに立てて放置しても重力でインクが下にさがるのを防ぐ方法。そういったことを繊維のからみ方や隙間の大きさの組合わせで、インクの出方を変えています。そうやって用途やインクに合わせて、約3000種類のペン先を作っているんです。

安いペンを買うと、すぐにインクが出なくなっちゃって「やっぱり安いペンはインクが少ない」と思っていたけど、それだけじゃなくて、やっぱりペン先が優れているかどうかで、どれだけ長く書けるかが変わるんです。

原口:たまに、インクはあるのにペン先からぜんぜん出ないことがありますが、そこなんですね!

望月:そう、出口の問題でした!これはまた、吸い上げの仕組みの構造を変えると、ペン先だけじゃなくて他のものにも応用できてしまうんです。現在では、「トイレの芳香剤」(液剤を吸い上げるタイプのもの)や「妊娠検査薬」のフェルトの部分も毛細管現象を使った技術で製造しています。

ほかには「化粧ペン」も! 眉ペンとかまつ毛ペンを、液が出やすいとかペン先が柔らかいなど使いやすさにこだわって作っていて、化粧品・コスメ類のペン先分野でも大活躍! コスメブラシなどの「ブラシ事業」にも進出しています。マニキュアの筆やマスカラも製造して、なんとアイライナーのナイロンチップでは、世界シェアNo.1!

あとはペンタイプの白髪染めの先、歯間ブラシ(歯間ブラシのトゲトゲ)、プリンタインクの吸収体、心臓カテーテル、スマホやタブレットのタッチペンの先もなんか。

海外の国々を見ても、識字率は全体的に上がっているのでペンの需要はこれからもまだまだあるんです。なのに、また60年経ちそうだからと、さらに業態転換しようと考えているんです。恐ろしい(笑)!

原口:デジタル化が進んでもぺンの需要ってなかなかなくならないですよね。

望月:この先の需要だって十分だと思うのに、まだこれからのことを考えている! 今は「MIM」という金属粉を使った金属加工の技術分野に進出しているんですって。私たちが知らないことをどんどんやろうとしているんですよ。

原口:フェルト生地の応用と最初は聞いていましたが、どちらかというと今まで培ってきた技術を活かしているんですね。

望月:あとはアイデア力もあるんでしょうしね。60年さんざんやってきて、次の60年に入っているのに、さらに次の60年を考えているなんてなかなかないですよ。

原口:形を時代に合わせて変えながら、どうすれば60年先を生きていけるか、常に考えているんですね。

望月:こういう会社がコロナ時代を生き抜いていけるんだなと。

原口:僕なんか今を生きるので精一杯ですからね(笑)。

望月:私も来年のことで手一杯ですよ(笑)。そんな「テイボー株式会社」では、現在求人を募集中。技術開発職や金属部品の製造業務など、詳しくは「テイボー株式会社」のHPを見てください。

<DATA>
テイボー株式会社
住所:静岡県浜松市中区向宿1-2-1
TEL:053-461-3191
今回、お話をうかがったのは……望月やすこさん
静岡県内を中心に個人の撮影や取材撮影をするフリーカメラマン。撮影歴は25年。「人を笑顔にする撮影」と「面白いネタ探し」を得意とする。著書「子連れのタダビバ」シリーズ(静岡新聞社)では執筆も担当。ラジオ・テレビの出演など様々なメディアで活躍。

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