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古紙回収のプロ!古紙回収から運送、製紙までグループ企業内で行う循環型企業!株式会社兼子/静岡市

古紙回収→運送→製紙!グループ企業内で「循環型リサイクル」

カメラマンの望月やすこさんに、取材中に出合った身近にあるけど、「へ〜〜」な求人情報を紹介してもらう本企画。今回は、静岡市清水区興津にある「株式会社兼子」をご紹介いただきました。
※5月6日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

望月:先日、子どもの昔の教科書やノート、テストなんかを、全部処分しようと思って古紙回収ボックスに持っていったんですけど、ふと、「個人情報的に大丈夫なんだろうか? 誰かに見られたりしないか?」と心配になったんです。なので、今回は、どんな風に古紙が回収されていくのかを知りたくて、古紙のリサイクル会社「株式会社兼子」を取材し、常務取締役・田中善光さん、総務部・池田征史さんにお話を伺いました。

株式会社兼子のおもしろい沿革

望月:株式会社兼子は、静岡市清水区の興津にある1948年創業、70年以上の歴史のある会社です。興津川上流の両河内出身という創業者の兼子薫三さんが、製紙会社で作られた紙を行商で売り歩いたのがはじまり。

倒産する製紙会社を買うことになり、そこで使用する原料である「古紙」を集める会社を1960年に始めました。古紙を集めはじめたところ、印刷や出版業などの景気も良く、回収できる古紙原料が製紙会社で使用する量より多くなったため、チラシやコピー用紙、雑誌、トイレットペーパー、ダンボールになる「再生紙の原料」を売る会社をはじめたんです。

そこで今度は、規模も大きくなったので埼玉に工場を作るのですが、ここからの躍進がすごい! 湘南工場を作り、横浜・金沢・長野・浜松・船橋とどんどん新しい工場を増やしていったんです。そうなると、拠点があちこちにあるから古紙原料を運ぶのに自社のトラックが必要になり、たくさん持つようになった。すると、自社のもの以外の運送も頼まれるようになって運送業も始めたんです。

運送会社では「新聞輸送」もやっていたんですが、当時の新聞には休刊日がなかったから、トラックが毎日必要に。そうすると困るのが車検! 何台もあるトラックを車検に出すのも大変だから、自動車整備会社も始めようと。

始めてみたら、世の中には「365日ずっと動いていて休めない車」が他にもいっぱいあって! 他社からの自動車整備の依頼も受けるようになったんです。この時点で、相当仕事が広がっているじゃないですか。古紙回収と古紙原料卸、製紙に運送。回収して運送して紙を作る。兼子は、今どき流行りの「循環型リサイクル」がグループ内で全部できるようになったんです。

今や、兼子の拠点は全国24カ所。系列会社は、ECO兼子、駿興製紙、コスモ紙業、みくりや紙業、末広商店、丸三自動車整備、山昭運輸、NPO法人資源リサイクルネットワーク、上海にある上海友興紙業! 行商から始まった兼子が、今や、日本中に拠点がある「兼子ホールディングス」に発展。従業員はグループ合計で800人! まさか、静岡市の興津にこんな大きな会社の本社があるとは思っていなかったのでびっくりしました。

原口:何かを狙ってというのではなく、自分たちにとって必要なことで仕事を広げていった結果、循環型リサイクルになったというのが面白いですね。

古紙回収されたものはどうなる?


望月:「兼子」の説明だけでだいぶかかっちゃいましたが、肝心の古紙回収されたものがどんな手順でリサイクルされていくのかも確認しました。結論から言うと「情報を守りたければ守りたいほど処分コストも高くなる!」。兼子が行う古紙回収は、家庭から出るものだけじゃなく、会社から出る古紙も回収しています。会社からの古紙には、会社の重要書類や機密書類なんかもあり、そういうものは現金輸送車と同じ、鍵のかかる専用車で運ぶんだそう。それを、預かったダンボールのまま未開封状態で、大型の溶解ミキサーの中にドボン!と入れる。なので誰にも見られようがないんです。

その様子を実際に見せてもらったんですけど、巨大なミキサーの中に紙を入れると、ほんの数秒で溶けてしまう。溶解した書類には、溶解証明書も発行されます。

兼子では、金券類とかアイドルの販促グッズ、誰もが知ってる超有名試験のテスト問題用紙の廃棄も請け負っているんです。こういうものも、作る過程で試し刷りや予備などが出ますが、印刷会社から外に出せないので、溶解や廃棄もその会社の中でやるんです。具体的には、業務委託を受けて、印刷会社の中に兼子の社員を派遣して廃棄業務を行う。紙も種類によって質は異なりますが、これらをいい感じにブレンドして、トイレットペーパー用とかダンボール用とか、それぞれの用途にあった売り先に古紙原料として販売します。

ここで原口さんに問題! こういう価値や情報を含んだ紙の中で、一番厳重に扱われる紙は何だと思います?

原口:何かの伝票や発注書ですか?

望月:正解は、設計図! 電気製品やパソコン関連の設計図って、多くの特許も含んでいて、すごく情報が多いので、機密書類の中でも別格の扱いで、鉄の箱に入ってくるそう。そういうものは、当然、廃棄にもコストがかかります。それと比べ、家庭から出る古紙がどれくらい重要な情報かといわれたら、正直「それなり」ですよ(笑)。

家庭から出る古紙がどうなるかも見せてもらいました。回収所のコンテナから、パッカー車と呼ばれるゴミ回収車みたいな車にかき込まれて回収されて、兼子に到着すると、そのまま圧縮梱包されて、大型冷蔵庫くらいのかたまりになります。ひとかたまりで800キロ。情報というより、大きなコンクリートのかたまりのようで、これなら見られる心配はないと思いました。

それでも心配な人は、事前連絡が必要で有料になりますが、持ち込みもできます。

紙が溶解されるシーンにも、希望すれば立ち合いで見ることができます(要事前連絡)。なので、個人病院の人がカルテを捨てにきたりもするそうです。

古紙回収に出してはダメなもの

望月:それから、これはぜひ知っておいて欲しいんですが、「古紙回収に出してしまいがちだけど、出してはダメなもの」がいくつかあります。まず、ひとつは不織布マスク。これは紙じゃなくて布なんです。それと、紙であってもお線香の箱や、洗剤の箱など匂いが残っているものは古紙として出さないでとのことです。そのほか、うっかり捨ててしまいがちなのが、新しい靴の先に丸めて入ってる紙!

原口:ダメなんですか? 普通の紙ですよね?

望月:ちょっとつるっとした紙が入ってたりしていませんか? あれは、例えば、中国などのTシャツなどを大量生産している会社が、アイロンプリントした残り紙の台紙を、二次利用で靴の中やバックの中に緩衝材として入れたりしているんです。だから、そのつるっとした緩衝材には、アイロンプリントに使われるインクが残っているんだそう。そのインクが製品にした際に浮き上がってしまい、シミを作り製品をダメにしてしまうそうなんです。それでせっかく作った再生紙のロールが全部パーになるんですって!

原口:成分が悪さをしてしまうんですね。

望月:逆に書類を留めている「ホッチキス」は大丈夫! 古紙のかくはん過程で、自動分別されるそうです。

そんな株式会社兼子では、古紙回収や運送のドライバーを募集中。兼子は「日本一マナーの良い古紙屋」を目指していて、それも会社が大きくなった要因だというくらいにみんなマナーがいい。そんな人に安心して来てもらいたいとのこと。会社もめちゃくちゃオシャレでした!

原口:これだけ大きい会社が興津にあるのはものすごく興味をそそられます。ありがとうございました!

<DATA>
■株式会社 兼子
住所:清水区興津中町990
TEL:054-369-1178
会社情報
今回、お話をうかがったのは……望月やすこさん
静岡県内を中心に個人の撮影や取材撮影をするフリーカメラマン。撮影歴は25年。「人を笑顔にする撮影」と「面白いネタ探し」を得意とする。著書「子連れのタダビバ」シリーズ(静岡新聞社)では執筆も担当。ラジオ・テレビの出演など様々なメディアで活躍。

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