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カセットテープから踏切まで!? ニッチなカプセルトイを製造する、株式会社トイズキャビン

 地方都市では珍しい!カプセルトイ専門会社

カメラマンの望月やすこさんに、取材中に出合った身近にあるけど、「へ〜〜」な求人情報を紹介してもらう本企画。今回は、静岡市葵区沓谷にある「株式会社トイズキャビン」をご紹介いただきました。
※12月10日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
ミニチュアカセットテープ
望月:静岡市葵区沓谷にある「株式会社トイズキャビン」。みんなが大好きなカプセルトイの製造会社です。しかも、全部がオリジナル! 今回は、代表の山西秀晃さんにお話をうかがいました。

カプセルトイのメーカーって、基本的には東京の企業から出される商品がほとんどで地方都市にはめったにないんですが、それが静岡にあるんです! もちろん県内ではここ1社のみ。現在スタッフ5名の少数精鋭でやってます。

なんで静岡にあるのか?と疑問に思うかもしれませんが、まずはカプセルトイの歴史を簡単におさらいさせてください。

カプセルトイの歴史をおさらい!

望月:カプセルトイは今から50年くらい前、日本の高度経済成長期にアメリカからやってきました。当時は「駄玩具」「駄もの」といって、ニセタバコとか、スパイグッズや手錠、小さいトランプなどを売っていたんです。そういう時代が長く続いて、日本経済が安定成長期になり、70年代後半に大手玩具メーカーのバンダイが市場に参入してきました。

その頃放送されていたテレビアニメや特撮などのカプセルトイを販売していたんですが、当時はまだ雑玩扱いでした。ところが!1983年に放送が始まった「キン肉マン」を消しゴム化した、「キン肉マン消しゴム」いわゆるキン消しを販売したら、これが売れに売れて、今まで日陰にいたトイカプセルビジネスが一気に業界の表舞台に躍り出たんです。

テレビ、出版、玩具という「メディアミックス」のキャラクタービジネスが定番化して、その後、バブルの訪れとともに、「ドラゴンボール」や「聖闘士星矢」がヒット。そして、1987年にアニメイトが池袋に出店。今まで「子供のもの」だったアニメが「大人がハマるもの」になり、大人市場が発展しました。

時代は昭和から平成へ。「ユージン」という後にタカラトミーに買収される優れたメーカーが、「幽遊白書」や「スラムダンク」などのデフォルメされた精巧なフィギアを製造し、このあたりから男性のみだった市場に、「アニメ女子」が登場してくるわけです。

そして次に訪れるのが、カプセルトイ200円時代! 大人市場が開拓されたことによって、精巧なものを作れるようになって金額も上がり、バンダイが大人向けに「ウルトラマン」「仮面ライダー」の、超リアル造形「HGシリーズ」を200円で発売して、オタク男子を唸らせるわけです。ここで高額時代が到来しました。

次のターニングポイント、ここが大きい! 2012年、奇譚クラブが「コップのフチ子」を発売したんです。これの何がすごいかっていうと、今まで女性は「何が当たるかわからないもの」にお金を使わなかったのが、「コップのフチ子」なら買うようになったんです。最初から女性を意識した商品を作ったという幅がすごい。ここで、全世代、子どもも大人も女性も買うようになりました。

そして今から5年前、静岡の「トイズキャビン」が設立されました。市場がすでにいっぱいで、子ども向け、大人向け、女性向けも満たされているような状況……。じゃあ、トイズキャビンは何をすればいいのか?と山西社長は考えたんです。

2017年、トイズキャビン設立

望月:「静岡で会社をやるならここはホビーの街だから」と、 プラモなどからイメージした「ホビー系」と、誰も目をつけない「ニッチ系」を作ろう。そこでお金のかからない「ニッチ系」を探すわけです。マニア向けで、しかも他社が追随できない、今までなかったもの。

ちなみに、この頃の山西社長は、一念発起して勤めていた会社を辞めたのでほぼ無職状態です。奥さんと小さいお子さんもいるのにお金がない、子どもに「お父さんは仕事しなくていいの?」と言われたり、遊びに連れていった公園で、みんなが缶ジュースやペットボトルを飲んでいるなか、子どもに「喉乾いた」といわれても水道の水を飲ませたり……。「早く暗くなって欲しい」と夕方になるのを待っていた時代が続いて、このころ5キロ痩せたそうです。

そんな中、やっと「これならいけるかな……」と思えるニッチな商品を製作しました、それが「ミニチュアカセットテープ スイング」です!
ミニチュアカセットテープ
望月:すでに懐かしかったカセットテープをミニチュア版のキーホルダーにしたんです。こんなの売れるの?って思うんだけど、まあまあ売れました。それで少しずつ軌道に乗って、その後ニッチシリーズを展開していきます。

他のニッチシリーズも面白いんですよ。「戦国の茶器」、「日本の狛犬」、「戦国の槍」など。これらは大ヒットではありませんが、歴史女子や歴史好きのツボにハマったのか、これもけっこう売れたんです。さらに、身近なもののミニチュアシリーズも考え始めて、まずは「バス降車ボタン」!  

原口:これは売れそうだとわかります。他の商品は、形になったものを見ると売れそうだなと思いますが、構想段階で売れるとは思えないです(笑)。

望月:頭で想像するその力量がすごいですよね。ミニチュアシリーズには他にも「1/20ビル裏室外機コレクション」、「1/24プロパンガスコレクション」などもあります。

誰が買うんだ?と思うものもあるけれど、こういうのはジオラマ需要なわけです。山西社長がもうひとつ言っていた、プラモなどに組み合わせるホビー系商品なんですよ。

このシリーズもどんどん商品化されて、「1/64横断歩道橋」、「電車の座席コレクション」などがあります。ミニカーとか電車と組み合わせて遊べるサイズにできていて、そのアイデアがすごいですよね。このようなシリーズがたくさんあって、いまやオリジナルシリーズは100種類以上あるんですよ。今回は、現物をもってきたので音を聞いてほしい! 
踏切コレクション
望月:まずは「1/24踏切コレクション」のB型踏切旧警報灯です。けっこうリアルな音で、遮断機の竿も手動で下ろすことができます。電車が来るときの赤く光る矢印や故障中のマークも、おまけでついてくるシートを切って貼ることができるんです。

原口:カプセルトイにしては大きいですね。

望月:20以上の細かい組み立てパーツに分かれていてるんです。

原口:今は音がでるんですね。

望月:音が出るのはここにもうひとつ! ファミレスなどにある「卓上呼び出しボタンコレクション」です。今イチオシの商品で6種類展開。これは私も買いたくなります。
卓上呼び出しボタン
原口:そうですね。お子さんも、お店じゃなかなか押せないけど家では押し放題ですからね。

望月:バスの降車ボタンと同じで、いっぱい押してみたいですよね。

望月:こんな楽しい「トイズキャビン」だから、「ここで働きたい!」っていう人がたくさんいるんですけど、残念ながら今は求人の募集はありません。でも、実は内々の話ですけど、「事務所が手狭になったから引っ越す」という話が出ていて、引っ越して広くなったら求人募集したいそうですよ。

原口:今はないけど、今後あるかもしれないんですね。

望月:はい! ただし社長が言っていたのが、これは仕事だから、趣味だと思って来ると厳しい現実の壁に阻まれます。隙間を探すアイデア創出が本当に大変なんですって。「0から1を産み出す」この重圧に耐えられる人にお願いしたいそうです。

原口:その5人の人たちは好きな人が多いんですよね。

望月:みなさん若くて和気あいあいと楽しそうでした。

原口:今は募集がありませんが、興味のある人はホームページやSNSをチェックしてください!

DATA

■株式会社トイズキャビン

住所:静岡市葵区沓谷6-25-15
TEL:054-625-5707

会社情報
 
今回、お話をうかがったのは……望月やすこさん
静岡県内を中心に子どもの撮影や取材撮影をするフリーカメラマン。撮影歴は25年。著書「子連れのタダビバ」シリーズ(静岡新聞社)や、朝日新聞エムスタ「望月やすこの#撮りテク」連載などの執筆から、テレビ・ラジオの出演など様々なメディアで活躍。

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