
安全な「安全ピン」で世界のファッションに貢献 株式会社MATSUO/静岡
製品のほとんどを海外に輸出
望月:今回は、SBSのすぐ近く静岡市駿河区富士見台にある会社、株式会社 MATSUO(まつお)を紹介します。会社表記はアルファベットですが、それはここで作られる製品のほとんどが海外に輸出されているからなんです。この会社の製品、原口さんはわかりますか?
これだけではさすがにわからないと思うので、まずは写真をみてください。
原口:(写真を見ながら)ううん?!キラキラしてて宝石みたいですね。
原口:(写真を見ながら)安全ピンですか?
望月:正解です!この安全ピンが実は海外でバカ売れし続けているんです。その説明の前に、まずはMATSUOが海外で安全ピンをヒットさせるまでのヒストリーをお話します。
MATSUOは、会社ができて今年で59年。現在の社長、松尾憲次さんは2代目になります。安全ピンは創業当時から売っていましたが、素材がニッケルメッキで弱く、すぐに曲がってしまい簡単に外れてしまうので、世間では「安全じゃなくて、危険ピンだ!」なんて言われるような製品だったそうです。
それを本当に安全に使えるように、針をステンレス製で硬いものにして、頭のキャップ部分を金具からプラスチックにしたのが先代の社長。これで特許を取り、本当に安全なピン「ロックピン」を作りました。MATSUOでは、安全性にこだわって針の先を何度も研磨します。粗さを変えながら2~3工程荒磨きをし、細かい粉を付けて磨いて、研磨だけで全部で7回行います。
原口:7回も?!1回じゃできないんですね。
望月:丁寧に研磨しないと、針が刺さりにくかったり、生地の糸を引っ張ってしまったりするそうです。また針そのものが曲がりやすくなって、安全とは言えなくなってしまうそうです。
頭がプラスチックになったことで、今まで銀色だったものが赤色や黄色でカラフルになり、地味で安全ではなかったものが、カラフルで安全なものに変わったというわけです。そうしたことで、商社を通し一気に大量注文が入り、MATSUOの「ロックピン」を欲しいと、当時アメリカやキューバでよく売れたそうです。
オシャレさを兼ね揃え、進化し続ける安全ピン
望月:しかし現社長の松尾憲次さんの頃になると、円高でアメリカからの注文が減ってしまったそうです。しかしその頃、このカラフルで安全な「ロックピン」に目をつけた、思いも寄らない国のバイヤーから注文が入り、今のヒットに繋がったそうです。
ヒントは布を巻く国です。
原口:インドですか?
望月:正解です。インドの民族衣装、サリーに使われるようになりました。
サリーは、1枚の布をぐるぐる巻くのに安全ピンを10〜12本使うそうです。サリーの国に売ろうということでインド、パキスタンやネパール、ヒジャブの国のドバイ、ヨルダン、インドネシアと売り先を広げていきました。さらに、女性が使うものならファッション性を高めようということで、プラスチック部分をジュエリーのようにキラキラ光る形にしたものや、薔薇や貝殻、ハートのものを作っていったそうです。
今まで、ただ留めるためだけに使われていた安全ピンが、「アクセサリー感覚で使える」と口コミでどんどん広がって、世界10数カ国に輸出されるようになりました。MATSUOの「ロックピン」は、インドの女性の華やかな気持ちにも一役買っているんです。
いろいろな場面で大活躍
望月:MATSUOの「ロックピン」は、1本1本ヘッドの部分に「MADE IN JAPAN」と書いてあるのも特徴です。世界で販売されている安全ピンに、「MADE IN JAPAN」と書いてあれば、多くはMATSUOの製品なんだそうです。現在は、この安全という部分にもっと力を入れて「スーパーロックピン」という、もっと外れにくく安全な製品を作っているそうです。この製品を工業試験場で試験したところ、5キロの重りをぶら下げてもロックが外れなかったそうです。
安全性が評価され、おむつカバーを留めるのに使われていたり、海外にある夢の国のテーマパークのキャラクターぬいぐるみのタグを留めるのに使われていたり、子どもが使うものにも多く採用されています。
日本では防災グッズに安全ピンが常備されることが増えました。避難所の間仕切り用の布をつけるときに使ったり、水道代わりにペットボトルを使う時に針で穴を空けて節水しながら使ったりできるそうです。安全ピンを防災リュックに入れておくと便利ですよ。
原口:留めるだけでなく、用途がたくさんあるってすごいですね。
そんなMATSUOでは、内職先などを回るトラック運転手の求人を正社員で募集中です。今現在、従業員は12人。海外との取引が多いため、ネパールの方も2人働いていて、1人はなんと工場長です。先日、外国人従業員の今後の役員登用を宣言した会社として、静岡市グッド・パートナーズ表彰式で奨励賞も受賞しています。
気になるという方はぜひ株式会社MATSUOまでお問い合わせください。
<DATA>
■株式会社MATSUO
住所:静岡県静岡市駿河区富士見台1-15-5
TEL:054-282-0691
会社情報
今回、お話をうかがったのは……望月やすこさん
静岡県内を中心に個人の撮影や取材撮影をするフリーカメラマン。撮影歴は20年以上。「人を笑顔にする撮影」と「面白いネタ探し」を得意とする。著書「子連れのタダビバ」シリーズ(静岡新聞社)では執筆も担当。ラジオ・テレビの出演など様々なメディアで活躍。公式ホームページ「フォーシーズン 望月やすこ」、インスタグラムもチェック。
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