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食品廃棄物の処理費用を削減できる!川口精機株式会社/静岡

カメラマンの望月やすこさんに、取材中に出合った身近にあるけど、「へ〜〜」な求人情報を紹介してもらう本企画。今回は、「川口精機株式会社」をご紹介いただきました。※価格はすべて税抜です
※9月2日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

望月:今回、「面白そうな会社みつけた!」と思ったきっかけが曲だったんです(笑)。会社のHPというと、だいたい社長の写真と概要が出ているじゃないですか。なのに、この会社は企業情報をクリックすると、代表取締役社長の写真があってそのすぐ下に「是非聞いてみてください」とApple Musicに誘導されるようになっているんです。

代表取締役社長は大澤宏典さん。代表挨拶の冒頭に 「20代は学生時代からのバンド活動を継続し、英語のオリジナル曲でアメリカのインディーズレーベルからCD発売、iTunesにも登録されている。」と書いてあり、その後に会社の話があります(笑)。

原口:冒頭で流した曲は、大澤社長のバンドの曲だったんですね!

望月:こんなことをHPに載せている社長がやっている会社なら、これはもう面白い会社に決まってる!と思って取材申し込みをしたら、ホントに面白いモノづくりをしてる会社だったんです。

今回の会社の名前は「川口精機株式会社」。「スクリュープレス脱水機」の製造販売をしている会社です。もちろん、音楽とはまったく全然なんにも関係ないです(笑)。

自社のノウハウを活かした「スクリュープレス脱水機」

スクリュープレス脱水機も何だかわからないですよね。これは、食品を粉砕して脱水する機械なんですが、普通の食品ではなく「食品廃棄物」を粉砕して脱水するんです!

わかりやすい例を挙げると、「ペットボトルのお茶」。飲料メーカーがペットボトルのお茶を製造するのに、お茶の葉を使いますよね。使い終わった「でがらし」の茶葉は、引き取ってもらうのに処理費用がかかるんです。処理費用は、基本的に重さで1キロいくらって払うそうなんですけど、よく考えたらお茶ガラは、そのほとんどが水分なんですよね。だから、水分を抜けば軽くなって処理費用が安くなる。だったら処理費用を安くするために水分を抜きましょう、お茶ガラを絞っちゃいましょう!という機械が「スクリュープレス脱水機」なんです。

原口:なるほど!賢い!

望月:何でこんな面白いモノを作り始めたかというと、1949年に創立された会社ですが、最初は大手メーカーのOEM・協力企業、いわゆる下請けメーカーだったんです。でも、下請けだと元請けメーカーの動向に左右されて、なかなか自社で企業努力がしづらいと。だったら、今ある機械のノウハウを使って自社でモノづくりができないかと考えて、先代と今の社長と専務で2008年に作ったのが「スクリュープレス脱水機」。

食品を粉砕して細かくしたものを、電動ドライバーみたいな形のスクリューで、雑巾を絞るようにぐいぐい絞っていく機械です。最初は、静岡市内のもやしメーカーさんが「廃棄物の量が多くて困ってる」と聞いて、「スクリュープレス脱水機」を使ってみてもらったら、これが大成功!

でも、もやしの食品廃棄物ってどこの部分?って思いますよね。

原口:捨てるところはなさそうですよね。

望月:もやしは「緑豆(りょくとう)」から芽が出て、その芽の部分が「もやし」として販売されます。だから、豆の皮が廃棄物として出るのでけっこうな量なんです。さらに、機械で管理するからこぼれる分もあったり、根を切って販売する「根切もやし」は根が全部廃棄物になるんです。そうすると、小規模のもやしメーカーでも、1日10トンのもやしを製造するから、だいたいその10%が廃棄物になるそうで、1日の廃棄物は1トン!

1日1トンだとしたら10日で10トン、30日で30トン出るんです。そんなにたくさんの廃棄物を置いておく場所を確保するのも大変だし、野菜だから半日か1日で臭うようになって近所からクレームがくるようになってしまうそうなんです。

しかも、処理費用は1キロ20円。1トン(1000kg)で2万円×30日=60万円、1年で720万円。要らないもののためにかかる金額ですからね。相当な損失になってしまうじゃないですか。

原口:もやしで1000kgの廃棄物が出るのにびっくりです。

水分を抜いたら格安飼料に

望月:だけど、これが水分を絞ると3分の1の重さになって、単純計算で費用も3分の1になるんです。しかも置き場にも困らなくなるし、なんといっても臭いにくくなります。

今までは衛生面で使い勝手が悪くただ捨てていた食品廃棄物が、水分を抜いて腐りにくくなったから、牛や豚用の格安飼料として供給できるようになったんです。さらに、絞ったあとの水分も地域限定だけど利用可能になっているんです。コスト削減になる上に再資源化もできて、14年前からSDGsな機械を製造しているのがすごい!

原口:捨てやすくしたり、費用を抑えるために水分を抜いたりしたはずなのに、新たに使える用途が見つかるのがすごいですよね。

望月:もやし以外で使っているのは「カット野菜」の工場。最近、スーパーや薬局で、袋入りのカット野菜をよく見かけるようになりましたよね。すごく便利だけど、家庭で皮を剥いたり刻んだりしなくていいということは、工場でそれだけ食品廃棄物が増えたということです。

そうすると、キャベツの一番外側の部分や芯、人参は頭の部分や皮、玉ねぎも皮が多くて、歩留まりが悪いものだと3割くらいは廃棄物になっちゃうそう。だから、その水分を抜くことで量が減らせたらその方がいいじゃないですか。

他にも意外なところで使っているんです。葵区の奥、オクシズでウイスキーを作ってる「ガイアフロー」。ウイスキーを作るのに麦芽を煮るんですが、その後の廃棄物が1日1.5トン出るそう。

原口:そんなに出るんですか!?

望月:「工場を作るときに、生産設備のことは考えていたけど、廃棄物置き場にこんなに場所をとるとは考えてなかったし、ましてやこんなにコストがかかるとは思ってもいなかった!」となって、川口精機に依頼があったそう。

原口:製造した先のことは考えますが、作って出た廃棄物のことは一番最後に考えますよね。

望月:私も家を建てたとき、キッチンのことは考えたけど、生ごみやビン・カン置き場のことは全然考えてなくて困ったのと同じですよ(笑)。このパターンは結構多くて、工場を作るときじゃなくて、工場のリニューアル時の依頼が多いそうです。

ちなみに機械の金額は、先ほどのもやしメーカーくらいの規模の機械で2000万円だそうです。通常の工場の機械は5~7年償却くらいの金額を考えているけど、スクリュープレス脱水機は3年償却を目安にしているので、だいぶ価格を抑えているそうですよ。

あとは、お弁当を作る工場なんかも食品廃棄物の脱水に使っています。「脱水実績」は、もやし、キャベツ、レタス、白菜、人参、大根、ごぼう、玉ねぎ、豆苗、トマト、とうもろこし、茶殻、オリーブ、みかん、パイナップル、りんご、ココナッツ。大根は約9割の水分を脱水できるそう!

「脱水する」から「液体を抽出する」用途も!?

そんなに脱水できるなら、逆に絞ったエキスも使えるよねとなって、今まで捨てるために液体を絞っていたけど、「液体を取る」用途で使うことも増えてきているそうです。現在は、大麦わかばを絞って青汁を作ったり、あとは植物から医療品原料や化粧品原料、サプリメント原料のエキス抽出をしたり。食品以外では、パルプの脱水や廃プラ、車の塗装会社で塗装の時に出る、塗料と油の分離に使うこともあるそうです。

面白いので、実際にやるところを見せてもらいました。見せてもらったのが、ミシンサイズの小型のものでしたが、なんと、この小型のスクリュープレス脱水機はレンタルもしているんです! レンタル費用は1日5000円~。買うためのお試しではなく、工事現場で一時的にパルプの脱水に使うなどの用途でも結構要望があるそう。個人的には、学校の授業とかで使って欲しいなと思いました。

そんな「川口精機 株式会社」では、求人を募集しています。仕事内容は、制御盤の回路設計・プログラム作成や営業までいろいろあるそうです。バンドマン社長の大澤さんによると「従業員32名の小さな機械メーカーなので、会社というよりは家族のような存在。しっかり挨拶できる、元気な人を募集しています」とのことです。

今は、韓国、タイ、マレーシア、シンガポールへの海外販売展開に注力しているので、タイ人やスリランカ人の海外メンバーも、正社員として受け入れているそうです。優秀な人材が居ると聞いて、現地まで行って面接して入社してもらった大学新卒のタイ人社員もいらっしゃるそうですよ。

原口:ぜひ、気になった方はお問い合わせください!

<DATA>
■川口精機株式会社
住所:静岡県静岡市清水区袖師町902
TEL:054-365-1993
会社情報
今回、お話をうかがったのは……望月やすこさん
静岡県内を中心に個人の撮影や取材撮影をするフリーカメラマン。撮影歴は25年。「人を笑顔にする撮影」と「面白いネタ探し」を得意とする。著書「子連れのタダビバ」シリーズ(静岡新聞社)では執筆も担当。ラジオ・テレビの出演など様々なメディアで活躍。公式ホームページ「フォーシーズン 望月やすこ」、インスタグラム( @mochikoyasuko

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