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コロナ禍の影響で「特殊詐欺」が増加!? その実態と対策

特殊詐欺被害、コロナ禍が影響!?

昨年1年間の振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害が1万4000件余り、被害額は278億円余りに上っていて、件数が4年ぶりに増加しています。この被害、都市部だけでなく地方にも広がっていて、静岡県でも実際に被害が出ています。みなさん注意してください! 今回は、具体的に注意すべきことについて、詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※3月2日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:多田さんは詐欺・悪質商法に精通し、その知識を基に執筆や連載など幅広く活動されています。最近、特殊詐欺の被害が増えているようなんですが、理由は何かありますか?

多田:いろいろありますが、大きくはふたつ考えられています。ひとつは、コロナ禍で家にいる時間が非常に長くなり、自宅に詐欺の電話がかかってきて、その電話を取る機会が増えてしまった。もうひとつは、人に会わないので、誰かに相談する機会や環境が少なくなったのも大きいと思います。

牧野:仕掛けてくるグループの背後には、暴力団などがいるのでしょうか?

多田:ものすごくたくさんのグループがあるので全てではないですが、当然暴力団が絡んだようなグループはいます。暴力団が特に絡むケースとしては、例えば詐欺の場合、お金を家に受け取りに行く受け子がいます。その受け子を束ねる役として暴力団が絡むケースが非常に多いと思います。

特殊詐欺の手口

牧野:特殊詐欺の手口はどういうものが多いんですか?

多田:特に昨年は、還付金詐欺が非常に多かったです。まず役所から「(保険料等の)お金を戻します」と電話がかかってくる。手続きはあるけれど、コロナ禍なので役所に来られたら困る、などどいってATMに呼び出し、お金を振り込ませるといった手口です。

実際、なんでこれが多かったかというと、新型コロナワクチン接種が始まったことも無関係ではないと思っています。ワクチンの高齢者接種が始まったとき「接種予約はどうしたらいいの?」と思った方も多いはず。そうすると、みなさんの意識が役所に向いて、実際に問い合わせをした人もいるでしょう。役所が身近になった状態で、「役所からの電話」ということに疑いを持たず、つい話を聞いてしまったのではないでしょうか。

牧野:マイナンバーのときもそうでしたが、国民全体に関係する「ちょっとわかりにくいもの」は要注意ですね。

多田:そうですね。そういうところに付け込んできますね。

牧野:その他にはどういうケースがありますか?

多田:このところ多いのが、高齢者も含め、パソコンやスマホを持つ機会が非常に多くなったので、そこに詐欺集団が罠をしかけます。パソコン上に「ウイルスに感染した」という画面が出て、警告音が鳴ったりする。そのタイミングで「ウイルスに感染したときはここにご連絡を」と電話番号が表示される。しかも大手企業の名前が書いてあるので、つい電話してしまい、「ウイルス対策のセキュリティ代として、コンビニで電子マネーを買ってください」といわれるような詐欺です。

牧野:私もけたたましい音が鳴ったことがあります。音に焦らされて判断を誤ることはあるだろうなと思いました。

多田:特に使い慣れていない人がこのような状況になると慌ててしまうと思います。

牧野:地域性でみて、例えば静岡県で今注意したほうがいいことはありますか?

多田:全国的にも多いのですが、デパートの店員などを騙って「あなたのクレジットカードを使った人がいます」と電話をかけてくるケース。対応として、どこどこに連絡するように指示され電話をすると「カードを再発行しないといけない」といわれます。そこへさらに、警察になりすました人物からも電話がかかることもあり、信じ込んでしまいます。そして家にキャッシュカードを取りにくる手口が多いんです。また封筒を渡して「ここにカードを入れて、ご自身で保管しておいてください」といいながら、目を離したすきに、別な封筒にすり替えてカードを騙し取る巧妙な手口もあります。なので、キャッシュカードを取られたこと自体に気づいていないんですね。

本物と詐欺を見分けるポイント

牧野:本物と詐欺を見分けるポイントはありますか?

多田:キャッシュカードを取り替えるとか、誰かが取りに来ることはまずありません! そんな電話があってもすぐ切ってください。相手は切らせないようにしてくるので、とにかく電話を切って相談すること!

このあいだ捕まった男が、ベルトのところに26枚のカードを持っていたんです。それだけ多くの人がまだ気づかずにカードを渡してしまっているということなんです。なので、早く気付くためにも、見守る側も親御さんがそのようなことをしていないかどうか気にかけてあげる必要があります。

牧野:やはり、被害者は高齢者が多いのでしょうか?

多田:やはり高齢者が多いです。最近は、タンス預金だけでなく、金の延べ棒まで持っていかれるケースもでてきています。

詐欺の対策は?

牧野:対策としては、「周囲も気を遣ってあげる」「電話を長引かせないで切る」とありましたが、他にどんなことがありますか?

多田:防犯のチームプレーを考えて欲しいんです。「詐欺に遭っている人を見抜く目線」がすごく重要です。ひとつの事例として、ある人がアパートの2階から、紙袋をもつ高齢の女性が見えた。そこに若い男性がいて携帯を渡している。あれ?おかしいなと思って声をかけた。すると若い男性は逃げ出した。男性は110番して、1階にいた別の人が若い男性を追いかけました。この女性の袋には1200万円入っていたんです。

牧野:ギリギリ防げたんですね。

多田:そうなんです。ですので「若い男」「携帯電話」「紙袋」こうした詐欺の手口を知っておく。見守りの防犯のチームプレイで防ぐことも大切ですね。

若い世代で気をつけること

牧野:若い世代はどんなことに気を付けたらいいですか?

多田:やはりネットを通じた詐欺ですね。例えば、ニセサイトで安いと思って商品を注文したらクレジットカード情報を取られたとか。あとは、50代、60代も気をつけてほしいのが、未納料金があるというショートメッセージによる詐欺です。大手の電話会社の名前が書いてあるので、つい電話をしてしまい、50、60代の人で実際に1億円を超えて、100回以上ATMから振り込んだケースもあるので、この辺も注意ですね。

牧野:わかりました。特にこの春新しい一歩を踏み出す人は、トラップがありますのでみなさん気をつけて下さい。
今回お話をうかがったのは……多田文明さん
悪質業者などへの潜入数は100ヶ所以上に及ぶ。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動している。2017年には消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員も務めた。近著「サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術(イースト・プレス)」

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