
いま、警察官をかたる特殊詐欺が急増しています。巧妙化が進む詐欺。被害に遭いそうになった女性の証言から最新の手口が見えてきました。
「逮捕状」と記された1枚の書類。罪名は「特殊詐欺関与の疑い」で「福岡県警本部」の名前が記されています。丁寧に福岡地方裁判所の印鑑まで押されているように見えますが…実はこれ、特殊詐欺グループが作成した真っ赤な偽物です。
<詐欺電話を受けた女性>
「本当に迫真の演技だった。本物と思えるほど感情が超こもっていた」
静岡市内に住む40代の女性は、5月16日、詐欺の被害に遭いそうになりました。最初、女性の携帯電話に契約している携帯電話会社を名乗る男から「あなたのメールアドレスから大量の迷惑メールが送られている」と連絡がありました。
電話の向こうの男は「福岡県警に転送する」と告げ、女性の電話には実際に福岡県警本部の電話番号が表示されたそうです。
ビデオ通話でつながったのは、警察官を名乗る男と検察官を名乗る男でした。警察官を騙る男は、女性が詐欺事件の容疑者として逮捕されると告げたのです。
<詐欺電話を受けた女性>
「1週間くらいしたらあなたの家に家宅捜索が入って、捜査員が行って捕まりますよと」
<社会部 寺坂元貴記者>
「女性が騙されそうになった大きな要因が、警察という組織に対する信頼感です」
やりとりの際に犯人からショートメールで矢継ぎ早に送られてきたのが、逮捕状や供述調書などの写真でした。普段見ることのない書類は、妙な説得力を帯びていたのです。
<詐欺電話を受けた女性>
「絶対的な存在じゃないですか、警察や検察は」
女性は警察官を名乗る男から逮捕されないよう「優先調査」を受けるため536万円を支払うよう言われましたが、振り込む寸前で「何かおかしい」と気づき、警察に通報したことで事なきを得ました。ちなみに「優先調査」という手続きは存在しません。
<詐欺電話を受けた女性>
「いま思えば、本当にばかばかしいと思うけど、その時は『逮捕されたら人生が狂う』、そこから判断能力が欠けちゃったなと」
静岡県内ではいま警察官をかたる特殊詐欺が相次いでいて、3月と4月で103件発生し、被害額は約10億円に上っています。(静岡県警調べ・暫定値)
<清水警察署 杉山雅崇生活安全課長>
「お金の請求があればすべて詐欺だと思っていただければ結構」
警察への信用を逆手にとった悪質な詐欺。詐欺に遭わないためには、最新の手口を理解することが重要です。