【増加する特殊詐欺】手軽な電子マネーを使わせる手口も。まず、誰かに相談を!元刑事の防犯落語家がアドバイス!

静岡県内でも増加傾向にある「特殊詐欺」。今回は、静岡県警の元刑事で防犯落語家の「にか奴亭三助」さんに、最近起きている詐欺被害の特徴や対策について聞きました。聞き手は「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティーの鉄崎幹人、内野菜美。

鉄崎:三助さん、相変わらず、特殊詐欺の被害が減らないですね。

三助:静岡県内の特殊詐欺は去年に比べて増えているんですよ。中でも注目してもらいたいのが、「ロマンス詐欺」。昔で言う「結婚詐欺」です。

鉄崎:ある意味、世相を反映しているね。結婚するのが大変な時代というのもあるとは思うんですが。

「その気になってしまった」では遅い

内野:先日、札幌で一人暮らしをしている80代の女性が、宇宙飛行士を名乗る男から100万円をだまし取られる被害がありました。

SNSで知り合った男から「宇宙船が攻撃を受けて酸素が足りない。酸素を買うためのお金が必要だ」と持ちかけられ、女性は電子マネーを購入。恋愛感情も抱いていたため、信じてしまったといいます。

鉄崎:三助さん、このニュースはいかがですか?

三助:これを聞いて笑っちゃった人もいるかもしれないですね。

鉄崎:僕も最初笑っちゃった。「宇宙船が攻撃を受けるんだ」と思って。

内野:ありえないって思っちゃいましたよ。

三助:だけどこれ、笑えないんですよ、被害者は真剣だったはずなんです。

鉄崎:うーん。

三助:「明日は我が身」と思ってもらいたいですね。この方が何を信用したのかが問題だと思うんですね。

鉄崎:冷静に考えたら、宇宙船がどこから攻撃受けているのか、酸素買うためにそんなにお金必要なのかなど、おかしなことだらけなんだけど。この80代の女性は恋愛感情を抱いちゃった。

内野:そこだ。

三助:そうです。私の知り合いに、都内に住む60歳前後の独身女性で、ある程度の事業成功者がいます。その方のところに医療法人を名乗る人から「理事長として病院を一緒に経営しませんか」という話が来ました。

一瞬その気になっちゃったらしいんですが、娘さんに「お母さん、これおかしいわよ」と言われて、はたと気づいたっていう話を、私にしてくれましたね。

鉄崎:その方も、彼のためになんとかしてあげたいという気持ちが強かったと思います。冷静な人が周りに一人いるだけで「ちょっと待った」ってなるわけですね。

三助:誰かに相談することによって、目が覚めるっていうことですね。

内野:自分だけで完結してると怖いですね、本当に。

鉄崎:韓流スターなどから「付き合いましょう」とメールが来ると、本来ありえないけど、舞い上がっちゃう。

内野:韓国人のイケメンからメールが来たら嬉しいですよね。「ちょっと連絡しようかな」って思ってしまう。

鉄崎:ちょっとした感情で、大きく話が広がっちゃう。

三助:これ、男性にも言えますからね。

電子マネーを使わせる手口に注意

鉄崎:静岡県内でも大きな被害が出ました。

内野:先日、浜松市で60代の女性が警察官などを名乗る男らに騙され、約1億4000万円相当の暗号資産を失う事件がありました。

鉄崎:これ、額が大きかったですね。

内野:女性は「携帯電話の未払いがある」「契約詐欺に関与してる疑いがある」などと電話で言われ、7月から8月にかけて38回にわたり送金しました。被害総額は1億4000万円に上り、2025年度の静岡県内では最多の被害額です。

警察は「捜査で現金や暗号資産を求めることは絶対にない」と注意を呼びかけています。

鉄崎:さっきはちょっと浮かれてしまったパターン、こちらは逆に危機感を持たされて、「なんとかしなきゃ」っていうパターンでしたね。

三助:どちらも電子マネーを使っていますよね。現金じゃない。

鉄崎:あ、ほんとだ。

三助:今までのオレオレ詐欺など「お金を振り込んで」という場合はね、銀行が午後3時までです。銀行員が見ているので「それおかしいじゃないですか」なんて注意してくれますよね。

鉄崎:ATMで、もごもご電話しながら操作している人は気になるから、「おじいちゃん、大丈夫?」ってことになるね。

三助:周りの人も気が付きますよね。でも、電子マネーの場合、夜中に送金することもできるし、一人で誰にも相談しないでできてしまいます。

鉄崎:ただ、38回送金したうちの1回でも、誰かに相談できなかったのかなと思うんだよね。

内野:この回数も恐ろしいですね。

三助:例えば100万円貯めるには、月2万円貯金したとして、4年かかります。だから、1億4000万円なんて言ったら、大体600年ぐらいかかりますね。

内野:衝撃の数字ですね。

三助:これを持ってっちゃうんですからね。

実際にはもっと多くの被害が…?!

鉄崎:県警が発表している被害額は、あくまでも被害届が受理されて、警察が把握している件数と被害額ということですよね。

三助:実際には、被害はもっとあると思います。被害者が家族に言えないとかね。

お母さんが詐欺にひっかかった時に、息子さんたちに怒られることを恐れて、「もし犯人が捕まってお金が戻ってきても微々たるものかもしれない、それならば怒られちゃ嫌だから黙ってよう」と考えたり。

内野:心配もかけたくないですよね。

三助:それに、被害者から被害届を受理するときに、警察がまず調べるというか、鵜呑みにできないっていうのもあるんですよ。

内野:ええー!

三助:本当に被害に遭ったのか、その原資はどこにあるのかということを調べないといけない。こんな言い方は悪いかもしれないですが、悪い人が税金対策として、損金で計上して「売上はこれだけあるんだけれども、損金はこれだけあるので収める税金はありません」などと主張するとも限らないじゃないですか。

内野:そっち側も詐欺ですか。

三助:はい。自作自演の場合もあるんですよ。

内野:もう誰も信じらんなくなっちゃう。

自然災害に便乗した詐欺にも注意!

鉄崎:最後に、皆さんにメッセージをお願いします。

三助:牧之原では台風15号で被災され、ご苦労されている方もいらっしゃると思います。そんな時、自然災害に便乗して「保険金が使える」「修繕はうちを使えばいいですよ」などと言う悪い輩がいるんですよ。

鉄崎:火事場泥棒だ。

三助:気をつけてもらいたいです。大切なのは「一人で判断しない」っていうことだと思います。とにかく誰かに相談してください。そうすれば、目が覚めるということになりますので。

鉄崎:冷静になることですね。にか奴亭三助さん、今日もありがとうございました。

三助:ありがとうございました。

※2025年9月11日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。

今回お話をうかがったのは……にか奴亭三助さん
本名:渡邉晃人。静岡市清水区在住、66歳。静岡県警の職員時代は長年にわたり捜査2課・組織犯罪対策課の刑事として贈収賄、詐欺、選挙、暴力団事件などを担当。定年退職後、高校時代から続ける趣味の落語を生かし、なかなか減らない詐欺被害を減らすべく、落語を通じて県民に啓発・啓蒙・講演活動に尽力。また『行政書士AKITO21法務相談事務所』を立ち上げ、落語家行政書士、さらに日本刑事技術協会登録講師としても活動中。

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