プロ野球選手を毒牙に…"警察官"が本名呼んで孤立を図る 特殊詐欺への対抗手段は「電話に出ない」!?【警察に聞いてみた】

突然、知らない番号からの電話。通話の最初に"警察官"が自分のフルネームを呼んできた…いま、こんな特殊詐欺の手口が急増しています。

かつては高齢者がターゲットにされていた特殊詐欺ですが、被害者の若年化が進んでいます。その魔の手はプロ野球選手にまで及んでいました。

「逮捕された男があなたのカードを...」"兵庫県警"からの電話

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「兵庫県警を名乗る女性から電話が来て、高橋駿さんの携帯電話でお間違いないですか?と」

2025年9月初旬、静岡市に本拠地を置くプロ野球チーム・くふうハヤテベンチャーズ静岡の主将・高橋駿選手の携帯電話に国際電話であることを示すプラスで始まる番号の着信がありました。

甲子園がある兵庫県には度々訪れていた高橋選手は、名乗っていないのに突然フルネームを呼ばれたこともあり、【兵庫県警からの電話】であることを信じてしまいました。

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「川口資金洗浄事件という事件があったんだけど、主犯の男が逮捕されて家宅捜索をしたところ300枚ほどのキャッシュカードが見つかって、その中の一枚に高橋駿さん名義のキャッシュカードが押収されましたと」

僕の味方になるよう寄り添う感じで話を... 巧妙な"心理操作"

ニセ警察官は主犯の男が高橋選手から30万円でキャッシュカードを買ったと供述しているため、いますぐ兵庫県警に来て事情聴取を受けて欲しいと要求してきました。

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「本当に僕が凄い不安な感じで対応していたので、僕の味方になるよう寄り添う感じで話をしてきた。あなたは詐欺に関与してないかもしれないけど、こういう罪に疑われているから落ち着いて聞いてね、と」

不安に付け込み、優しいフリで信用させようとしたのか…ニセ警察官が揺さぶりをかけてきたことが伺えます。

試合の直前だったため、高橋選手は出頭を断りました。電話の向こうのニセ警察官はそれならばLINEのビデオ通話で事情聴取を受けろと指示。すぐに個人情報の確認を始めたそうです。

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「キャッシュカード、運転免許証、クレジットカードを画面越しに見せろと言われ、全部見せてしまって」

漠然とした不安から言われるがままになってしまった高橋選手。このあとニセ警察官からはLINEで起床・外出・帰宅・就寝の際には連絡を入れるようにとの指示があり、”事情聴取”は終了しました。

詐欺と気づいたきっかけは"ある事件"の名前

詐欺と気づいたきっかけは、最初に出てきた「川口資金洗浄事件」という事件の名前でした。

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「ずっと不安なまま、何かおかしいなと思って川口資金洗浄事件をネットで検索したら【これは詐欺です】と注意喚起しているサイトがあって、気付いた」

今回、高橋選手に金銭的な被害は出ていないということでしたが、果たして自分が同じ境遇に陥ったら冷静に判断できるかは心許ないところ。

詐欺被害に遭わないためにはどうすればいいのか?静岡県警の生活安全企画課の杉山慎一・特殊詐欺分析補佐に聞きました。

なぜフルネームと電話番号を?「+」から始まる電話と本人確認

杉山慎一・特殊詐欺分析補佐

<静岡県警 杉山慎一・特殊詐欺分析補佐>
「一番は不要な電話を受けないことです」

…身も蓋もない意見に聞こえますが、結局はこれが一番だそうです。

いまは詐欺電話の7割超が国際電話。プラスで始まる番号の場合、海外との取引などがない人は原則、電話に出ない姿勢を貫くのが詐欺を防ぐ秘訣です。

<静岡県警 杉山慎一・特殊詐欺分析補佐>
「例えば口座の開設や商品の購入などで皆さんは個人情報を提供しています。この情報は企業・団体に蓄積されていて、サイバー攻撃などを受けた場合、自分の個人情報が外に漏れていない保証はないと思っていただきたい」

確かに氏名、住所、電話番号はセットであらゆる申し込みの際に提供しています。情報が多少古くても携帯電話の番号は変えない人が多いため、最初から犯行グループが携帯電話の番号と名前をセットで知っていても不思議ではないのです。

<静岡県警 杉山慎一・特殊詐欺分析補佐>
「運転免許証などを提示させたのは本人確認の可能性が高く、起床時や帰宅時に連絡を強要するのは、こうした連絡があるうちは、相手はだまされたままなんだということを確認しているものとみられます」

警察官をかたる詐欺は近年急増していますが、捜査などの執行力が不安をあおり、警察への信頼・信用が安心感をもたらすという2つの相反する感情を揺さぶるのが狙いだとの見方もあります。

<静岡県警 杉山慎一・特殊詐欺分析補佐>
「かつては高齢者を狙っていた特殊詐欺ですが、現在は若年層の被害が増えています。警察官をかたる詐欺は半数以上がスマホへの電話で、被害者の4割ほどが50代以下ということが分かっています」

「恥ずかしいけど、それ以上に知ってほしい」引退決めた主将の願い

詐欺被害防止イベントに参加する高橋選手

今回、詐欺被害に遭った高橋選手も20代。地元・静岡市出身で初代キャプテンとしてチームを引っ張る存在でしたが、今季限りでの引退を決めている高橋選手は応援してくれた地元のファンが同じ目にあってほしくないと今回、取材に応じてくれました。

<くふうハヤテ 高橋駿選手>
「詐欺に引っかかるのは自分自身も恥ずかしい思いもあるけど、それ以上に静岡市民の皆さんにこういう詐欺があると知っていただいて、少しでも減ったらいいなと思って」

高橋選手は警察と連携し、国際電話を使った詐欺被害防止キャンペーンにも参加しました。警察は特殊詐欺に引っかからないためには【情報の共有】も大切だと力説します。

特殊詐欺に引っかからないためには

清水警察署 杉山雅崇・生活安全課長

<清水警察署 杉山雅崇・生活安全課長>
「例えば友達の間でも、こんな変な電話がかかって来たよとか、俺もかかってきたという情報を共有していただいて、詐欺の手口を知ってもらい防衛してもらうのも被害防止になる」

特殊詐欺は他人ごとという意識を取り払い、おかしいと思ったときに誰かに相談できる環境をつくる。特殊詐欺の体験をみんなで話し合えるようにすることが、あなたの身を助けます。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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